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カノンちゃんはタイヘンです。  作者: 陽海
〈chapter:02〉カノンちゃんの登校です。
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【?? - 02】 ×××は憂鬱です。


 本日は二話連続更新なので、読み飛ばしにご注意ください。

 なぜ。

 なぜこうなる。


 ふつうは靴を隠されたら、翌日は少なからず態度に影響が出るはずだ。心の弱い子ならそもそも、登校してこない可能性すらありあえる。一見して明るそうに振舞っている子ほど、じつは心が折れやすいことを、私は経験として知っている。だからこそ『あいつ』の靴を隠してやった。もうこれ以上、私の教室で、大きな顔をさせないために。


「ねぇ、知ってる~、×××? 昨日学校に、チョーカッコイイ男の人が来たんだって!」「あ、知っている知ってるあのウルトライケメンでしょ? ヤバいよね? つーか濡れるよね? ウチ、ソッコーで写メゲットしたし!」「あ、ズルいし! アタイにもチョーダイよ! マジでマジでお願いマジで!」「じゃあ交換ね! アンタがもう違う写メゲットしているの知ってるし!」「うぅっ!?」「……そうそう、×××。知っている? そのイケメンって、いつもうるさいあの子の叔父さんだって――」


 そのあとのことはよく覚えていない。いつも私の近くにいる、私よりもブサイクな子たちが何か言っていたけど、いつものようにあの子たちが望む『理想の私』を演じてあげながら聞き流した。


 だってあの子たち、もう私を見ていないもの。


 態度こそ親しげで近くに侍っているものの、その視線は、注意は、興味は、今朝からずっと私ではなく教室の後方ばかりに注がれている。会話の内容だって、昨日までのような毒は含まれていない。それどころか憧れの感情すら見て取れる。ちょっとイケメンが関わったぐらいで、どれだけ腰が軽いのだこのビッチどもは。さすが下半身で物事を考えているだけのことはある。どうせ膜だって、ちょっと悪ぶっているだけのよく見ると大してカッコよくもない中学のセンパイあたりにノリでつまみ食いされたのだろう。もしくは援交オヤジに安値で買い叩かれたか。なんにせよ、賢く生きている私とは見ている視点が違うのだ。むしろ早々に見切ることができてラッキーだと思おう。


 ……わかっている。


 これが私の強がりだってことぐらい、

 私がいちばんよくわかっている。


 なぜ、私じゃないのだ。この私が、こうしてみんなの望む『理想の私』を演じてあげているのに、なぜ私があなたたちの会話の中心にいないのだ。


 わかっている。『あいつ』のせいだ。ぜんぶ『あいつら』のせいだ。高校に進学してからというもの、いつもクラスの話題の中心にいるのは『あいつら』だから。『あいつら』のせいで私は、チヤホヤしてもらえない。中学までのように私の一挙一動で、クラスの視線を独り占めすることができない。


 ムカつく。理不尽だ。ありあえない。


 私のほうが可愛いのに。

 私のほうが頑張っているのに。

 私のほうが絶対に性格だっていいのに。


 もっと私を見てよ。

 もっと私に注目してよ。

 もっと私に興味を持ってよ。


 ムカつく。ムカつくムカつくムカつくムカつくあぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ……


 ……ふぅ。落ち着け私。どうせあんなぶりっ子どもの化けの皮なんて、私が手を下さなくてもすぐに剥がれ落ちるんだ。それまでせいぜい、いい気にさせておけばいい。


 それにこの週末は、久しぶりに中学の下僕たちと合う予定だ。せいぜいそこで、チヤホヤしてもらうとしよう。


 お読みいただき、ありがとうございました。


 次回の更新は7/30(月)の予定です。

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