プロローグ
騒つく教室。集まる視線…
その視線は何かと言うと、私に集まっているものなのだけど。
あぁ、間違えたわ。私と彼女ね。
「ぷ、プリシラ様…お話が…」
おどおどしく、まるでウサギがトラのご機嫌を伺うように、訊ねる。
「何でしょう?」
正直、苛立っていた。私と彼女では身分が違うし、このように話すことは本来許されない。
しかし、彼女は知らなかった…知らな過ぎた。
平民生まれでパン屋の手伝いをしていた娘になんか、礼儀が分かるはずない。
それも、分かっていたのに…何故、プリシラはあの様にしてしまったのーーーー?
* * *
「プリシラ、起きて。」
「ん…、お母様…?」
「全く…。こんなんでは王妃になどなれませんよ。」
「あともう少しだけ…」
「あ・ね・う・え!!」
「はあ?!」
「何が『お母様…?』ですか!僕ですよ!プラシド!」
私のベッドの上にいたのは、整った顔立ちをした弟だった。
プラシドは、私の双子の弟。
中々のイケメンよ。
「アンタ、淑女のベッドに入り込むなんて、紳士としてどうかしてるわ。」
「姉上こそ、淑女とは思えないですねぇ?」
「お姉様、お兄様、食事の支度をしたら如何?お母様がお待ちですわ」
ドアの間から、可愛らしい少女の顔が覗いた。
「「レイラ…!!」」
何?と言わんばかりに顔を傾ける少女はまるでお人形の様。
金に光った髪が顔に垂れてきている。
私たちの妹、レイラだ。
「ほらほら、支度しなさい、プラシド。」
「言われなくてもやりますよ!」
若干怒りながら、ドアをぶっきらぼうに閉めて出ていった。
いつまでも子供なんだから…。(同い年。)
「ネオ、入って良いわ。待たせたわね。」
「とんでもございません、お嬢様。」
ネオは私の専属の侍女なのだ。
無表情だけど美人で、子爵令嬢らしい。
「…1番涼しいドレスを持ってきなさい。髪は軽く結い上げて、装飾はシンプルに。」
「畏まりました。」
「そういえば、頼んだドレスはいつ来るの?」
「明日には届くはずです。」
淡々と質問に答える侍女。
できる女って感じなのよね。
「今日は特に予定はないわね?」
「はい、ですが…、明日はお見合いパーティーがあります。」
「は?そんなの聞いてないんだけど…」
「旦那様に秘密にしておくよう言われましたので。」
「〜〜っ!貴女、私とお父様どちらの方が上なのよ?」
「旦那様です。」
この侍女はぁぁ〜〜〜っっ!!
「…貴女、空気は読めた方が良いわ。」
「分かりました、気を引き締めます。」
「いや、別にそこまでしなくても良いけど…」
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