第9話 貯蓄魔力
こんばんは!!
見つけて下さりありがとうございます!
―どうぞ、お楽しみください。
喉元を見ていた視線を木の陰に移すと、複数の人影が揺れ、木陰に身を隠した。
木の幹から懲りずにまばらな白い光がパチパチと降り注ぐ。
「破壊魔法 起動」
アイルの首にあてていた俺の指先から、
バイオレット色の稲妻が音を置き去りにし走り出した。砂利が砂埃を酷く立て、切り拓かれた道を稲妻が突き進む。
「ぶッ…部下達!に、にげろ!」
アイルが口を開くよりも早く、人影に入り込む。バチっと、火花が四方八方に散り炎色の火の粉がバイオレット色の稲妻と混じり合い、美しく息を呑む程に華やかに飛び散ると手にしていた全員のカメラが地面に叩きつけられた。カメラが静かに煙を上げると同時に影から男達が顔を覗かせた。酷く動揺し、紙のように白くなった顔で俺とアイルを交互に見やった。
静寂が辺りを満たす|《ルビを入力…》。それを壊すように、口を開いた。
「即再生魔法」
指先から淡い黄緑色の透き通る、シャボン玉を思う再生魔法が紡がれると地面に落ちたカメラに触れた。シャボン玉がカメラを包み込むと煙が止まり、木陰まで足を進めると地面に転がったままのカメラを拾い上げ土を払い、男達に手渡した。
「俺のデータだけ抜いといたから、問題なく使える…」
顔を引きつらせていたのは、アイルの部下…すなわち俺の事を新聞に納めようとした、新聞記者達だった。
アイルの方へ戻ると、ピアスが金銀と揺れる耳元に顔を近づけた。
困惑の色を浮かべるアイルに耳打つ。
「俺は、魔力を使ってこなかったんだ。
だから…二十四年分の『貯蓄魔力』があるんだよ」
ゾワリゾワリと彼の肌に鳥が立つ。
「ちょ、貯蓄魔力…」
聞いたことのない言葉に、困惑しているのが見て取れた。
そう、俺は二十四年間まともに魔法を使ってこなかったのだ、そのしてその分の…
『貯蓄魔力』がると言うとわけだ。
怯えて縮こまったアイルを見つめると、ハクハクと浅い呼吸を繰り返しているのに気が付いた。
それはそうだろ…特化型魔力をゆうゆうと超えるほどの魔力量だ。
彼からすれば目の前に魔王がいる事と然程変わらないはずだ。
「即再生魔法」
基礎回復魔法だ。
人の傷を治す魔法で、擦り傷か打撲位しか癒やせないそれが限界だった。が、今まで魔力を使わなかった時間を無駄に過ごしてきた訳ではない。俺なりに魔力を練り続けて新たに魔法を生み出したのだ、そしてそれはこの先も変わらず俺は試行錯誤を繰り返すだろう。
黄緑色の蛍の光のようなシャボン玉がフワリと輝き浮かびだす。
右手で魔力の軌道を指示する。
彼の顔に貼られた絆創膏めがけて魔法を飛ばす。
「ゔわっ…!」
お化けでも見た顔で勢い良く尻もちをついた。
スッと俺の魔法が白い肌に触れると、チョコレートが溶けるように染み込んだ。
「す、すみませんでしたぁぁぁぁ!!」
突如そう叫ぶと、お手本のような土下座を繰り出した。
手汗に砂利を巻き込みながら、頭を下げる。
「いや、普通に回復魔法だから…、ほら、絆創膏」
トントンと自身の頬を触って見せる。
えっ、と小さくこぼすと自身の顔を触る。
意を決したらしく、ピリっと絆創膏を剥がす。
「うわ!すげごい!傷が無くなってる!?」
傷跡もなく、綺麗さっぱり傷など素知らぬ顔で雪のような白い肌に戻っている。
「す、すごい傷がない…」
何度も頬を撫でる。
全て絆創膏をはがすと、よろよろと立ち上がり帽子を取って、頭を下げた。
「すみませんでした。ありがとうございます先輩!」
「急に潔くなるやん…後、肝臓が悪いみたいだな、回復させといたけど酒は程々に〜」
妙に切り替わりが怪しい…。だんだんと思考がまとまらなくなってきた。暑さに耐えかねて、
「新聞に書くなよ」
と、手早く釘を刺した。一瞬動きが止まったが直ぐに穏やかな笑みを浮かべた。
「はい、ありがとうございました!
お酒も程々にします!この道の先は、サニーメーンへの方向ですね?村のお偉いさんにお話通しておきますね!」
「え、おっ…おう、ありがと」
「ほら、部下達も!」
木陰から五人程の男達が困惑した様子で出てくると口々に謝りを述べた。
一礼すると部下達を引き連れ去っていった。
…う〜ん、なんかこう、締まらんな。
彼が向かった方角を見ると、おおきく手を振った人影が近づいて来た。
「ラテ先輩〜!」
「…また来た」
満面の笑みで息を切らし再びアイルが走ってきた。何事かと彼を見ると、キラキラと汗を輝かせながら口にした。
「僕、やっぱり先輩を諦められません!」
「…あのなぁ」
またかよ、と相槌を打つと先の言葉を遮られた。真剣でいつものような楽しそうな爽やかな顔で、
「背後には注意してくださいね!」
バチリとウィンクを決めると
解けたスニーカーの紐を気にも止めずに、
失礼します!と一礼し風のように去っていった。
…嵐みたいなやつだったな。
背後ね…、まさかな
首まで込み上げていた思いを飲み込んで足を進めた。
アイル〜!
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アイルはまた登場してほしいですね。
それでは、また次回お会いしましょう!




