第100話:危機
大木の下にある空洞。その中に俺とルシュは座って休む。
ルシュは顔を下に向け、息を整えている。
俺は自分とルシュの服に付いた葉や埃を払い落とす。
……とにかく今はルシュの体力が回復するのを待つしかないな。
短く呼吸を繰り返すルシュを見ていると、これまで彼女と行動していた時の事を思い出す。
そこでようやく気付いた。
疲れやすいんだ。
ルシュは非常に高い身体能力を持つが、非常に疲れやすい。
要するにスタミナが無いという事だ。
彼女が子供だからある程度体力が無いのは当然だと思う事もあったが、特に武器を振るう等の戦闘を行った時の疲労がかなり大きい様だ。
きっとルシュ自身にも自覚が無いんだろう。
これからはルシュに負担が掛かり過ぎないようにしないと。
「それにはまず、ここから出なきゃいけないな……」
思わず口をついて出る。
……数分程度は経過しただろうか。ルシュの吐息が静かになってきた。肩を大きく動かす事も無く、落ち着いてきたようだ。
「水、飲むか?」
俺の言葉にルシュが頷く。
俺は荷物袋から水筒を取り出し、ルシュに渡す。
ルシュが水を飲んでいる間、俺は外を見つめていた。
森の中に所々差し込む光。
魔獣が徘徊する危険な場所だとはとても思えない穏やかな景色だ。
本当に街に戻る事が出来るだろうか。
不意に不安が押し寄せてくる。
ルシュの調子が戻れば何とかなるはずだ……そう自分に言い聞かせる。
「ありがとう、ヨウヘイ」
ルシュが水筒を俺に渡す。
俺は水筒を荷物袋の中に入れる。
ルシュの様子を見ると、息切れは収まっているようだ。とは言え、疲労している事には違いない。
「もう少し休もうか」
俺の言葉にルシュは頷く。ルシュ程ではないにせよ、俺自身も疲労している。
もっと動ける様になっておかないと。そう思った瞬間、外を見ると視界の向こうから何かがこちらに近付いてくるのが見える。
「あれは……?」
それはゆっくりと次第にこちらに向かって来ている。葉と茎と花の塊とも言うべき姿をした物体。
「ガーエイ……!」
更にその後方にも同じ姿をした怪物の姿がある。
「二匹……!?」
気付かれているかもしれないが、距離はまだある。
さっき倒した一匹に引き寄せられてきたのか。俺はルシュに振り向く。
「ガーエイが二匹来てる、逃げよう!」
ルシュは俺の顔を見て、
「大丈夫だよ、私なら、倒せるから……」
と言うものの、本調子になっている様には見えない。それに一匹ならまだしも、二匹は……。
「いや、ダメだ」
消耗の大きいルシュをこれ以上戦わせるわけにはいかない。
「でも……」
ルシュの表情に戸惑いが見られる。
戦えると言っているのに引き止めている。
それでも俺は首を振る。
「頼む、ルシュ、ここは逃げよう」
俺の言葉にルシュは少し俯いてから頷いた。
「行こう」
俺はルシュに手を差し出す。
ルシュがその手を取って立ち上がった。ガーエイ達が迫る中、俺とルシュは空洞から外へ飛び出した。




