第16話 異世界からの人間
少年が圭一の方に近づいてきた。
どう考えても人間にしか見えない。
圭一から一メートルくらいのところで少年は立ち止まった。
「君は一体何者だ?」
恐る恐る圭一は少年に尋ねた。
少年は無表情。もしかしたら日本語が分からないのかも知れない。とはいえ少年は人間に見える以上に日本人にも見える。
互いに見つめ合ったまま時間だけが過ぎていく。少年は何を考えているのだろうか。全く分からない。
薄い雲からの太陽の光が少年の顔を淡く照らす。それを合図かのように圭一は再度言葉をかけようとした。
その時、頭の中が何かもやもやするような感じになった。頭痛ではない。脳だけが宙に浮いているような今まで経験したことのない感覚だ。
「何だ、何だ?」そう言いながら松田は自分の頭を叩いている。圭一だけではないようだ。ここにいるみんなが同じような感覚に囚われているようだ。
『ボクはあなたたちと同じ人間です』
頭の中にそういう声が響いた。幻聴ではない。みんなにも聞こえているようだ。
この声の主は目の前の少年。それを確かめるために圭一は尋ねた。
「君だよね」
『そう、頭の中の声はボクです』
不思議な感じだ。圭一は口を動かしながら話している一方、少年は口を閉じたまま話している。直接脳に声が聞こえてくるのだ。これがテレパシーというものか。
「人間ってどういうこと?」
『あなたたちの世界にやってきた生物は全部地球にいるものです。ボクがさっきやっつけた生物も地球にいる生命体です。要は住む世界が違うだけですべて地球で起きている出来事です。ボクもあなたたちとは別の世界に生きる人間です』
「――多世界解釈?」
『そうですね。あなたたちの世界では、隕石によって恐竜が絶滅して、猿が進化し、人間になったと思います。ボクのいる世界もほぼ同じです。ただ、あなたたちの世界より早く隕石が落ちたせいで恐竜の絶滅が三分早まりました。たった三分ですが、その後の人間への進化へは大きな影響を及ぼします。文明のレベルで言うと、あなたたちとボクの世界の差は五百年以上の差はあるでしょう』
たった三分恐竜の絶滅が早まっただけで文明の差が五百年も異なるのか。
今から五百年前の文明と今の文明を比べると分かりやすい。つまり少年のいる世界は我々の文明とは全く異なるものになっていると言うことだ。
「君も爆発に巻き込まれてこの世界に?」
『いえ違います。自分の意志で来ました』
自分で来た? 一体どうやってきたんだ? それに何のために来たんだ?
我々を助けに来てくれたのならありがたいがそんなうまい話はないだろう。
救世主か死神か? 少年に対する疑問が頭に浮かぶ。その瞬間脳の中で囁いた。
『少なくても死神ではないですよ』




