73話 崩壊する第1堀。
家族が風邪っぽい。僕は特に何もない……モンスター飲んでるからかな٩( 'ω' )و
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お詫びに次の階層まで案内すると言われる。道もよく分からないし、こんな治安の悪い場所にいつまでも居たくないからお願いした。
馬車は通行の邪魔だし、コレクトでしまった。馬を収納する訳にも行かないので、アマンとゾンとラストラに乗って貰う。
「シノブさん。アイツら焼きましょうか?」
「いやいや。そんな物騒な事しないで。」
「すいません。こんな道しかなくて。」
「あ、そんな事は。案内してくれているだけ有難いですので。」
先頭を兵士さんとセローとエスト。馬に乗った3人を挟むように、僕とレブルともう一人の兵士さんという感じで歩いている。
「へいへい。冒険者が兵士に守って貰って恥ずかしくねーのか?」
「見ろよ。女が戦うよなパーティだぞ?そんな事言っちゃ可哀想だろう。」
「違いねぇ!ガハハ……ごふ!?」
「おいどうした?腹でも痛いのか?」
大笑いしていた男が、お腹を抑えて蹲る。レブルは僕が見ているから……。
「セロー?」
「わわ!ごめんなさい!」
「全くもう。エストも止めなきゃ。」
「私がやりなさいと言ったのよ。これくらい良い薬だわ。」
冷静に物事が見えるかと、セローとセットにしたけどダメなようだ。まぁ僕も少しはイラっとしたから、強くは怒るつもりはない。
「シノブさん……私そろそろ。」
「なるべく荒っぽくしたくないんだけどな。」
「建物一つ潰した本人のセリフには聞こえないな。」
「ふはっ!し、失礼しました。」
「いえ。アマンが変な事言うから。」
「俺は事実を言ったまでだ。」
ここまで案内して貰う前に、旧ギルドである建物を崩壊させてしまった。少し重力強めただけで崩れるんだし、老朽化していたに違いない。
そしてそれを目の当たりにした兵士の方々も、建物が傷んでいたんですね!って話を合わせてくれた。
「見ろよ。あの黒いやつ。ヘンテコな格好して、マントまでなびかせて勇者気取りか?はっはっは。」
―シュン……。
僕の横にいたレブルが姿を消す。正確には凄い速さで動いたんだけど。
「な、なんだ女。」
「……死にたいようね。」
「え?今横にいらしたのに。あんなところに?」
僕は止めるべく、剣を抜く寸前のレブルの手を握る。
「え!?2人ともいない?あれ?」
「レブル。」
「シノブさん……コイツだけダメ?」
「可愛く言ってもダメだから。剣を抜いたらこの人死んじゃうよ。」
慌てる兵士さんに、何が起こっているか分からない男。
「俺を無視して、いつまで手を握ってる!」
「シノブさん……。」
「レブル……。」
「聞いてねぇ!?舐めんな!!」
「「煩い。」」
『このパターンは読んでます。パワーコントロール・ジャストワン!』
―バキィ!
「ぐへぇ!?」
―ズダァァン!!
「「あ。」」
「何やってるのよシノブさん。」
「師匠ナイスパンチです!」
軽く突いたつもりだったんだけど、レブルとの合わせ技で吹き飛ぶ男。これじゃ人のこと言えないな。エストもセローもバッチリ見ちゃってる。唯一の救いはアイさんが力をセーブしてくれた事だな。
「あぁ。また被害者が……まぁいいか。」
「あわわ!人が集まりだしましたよ!私はどうすれば!?」
「慌てるな。俺らには何も出来ない。」
「先輩諦めないで!?」
案内役で着いて来てくれた兵士さんは、諦めた様子ともう一人は慌てて剣を抜く。
「兵士が剣を抜いたぞ!野郎ども戦だ!」
「「「うおぉぉ!!!」」」
これ見逃しに焚きつけといて、戦う理由が欲しかっただけか。
「皆んなも準備だよ。向こうはやる気満々だけど、程々に頼むよ。僕は5人を護るから。」
「任せておいて!馬鹿どもの相手に、シノブさんは勿体ないわ。」
「出番ですね!師匠の悪口言った子にはお仕置きです。」
「なんか戦うメンツに私がいる気がするけど。まぁ今回は良いわ。」
レブル、セロー、エストが武器を取る。僕は中央に5人をまとめて守備の位置。
「私達まで護って頂けるとは、有難うございます。」
「先輩!?我々もこの場は戦わねばですよ!」
「俺は剣を抜いてないし。」
「そんなぁ!?」
「まぁ見てなよ。それに戦いの場に出れば、確実に足手まといだぞ?」
妙に落ち着いた兵士はそう言うと、僕らの馬を撫で始める。剣を引っ込める訳にいかないのか、僕らを睨む相手に剣を構える。足ガクガクしてるけど、この人大丈夫だろうか?
「遅い!そんな剣の振り方じゃ、魔物にすら当たらないわよ!」
「なんだ!剣が斬れた!」
「速いなんてレベルじゃない!見えな、ぐは!」
レブルは敵陣に突っ込んで、剣を持つ人間を軒並み斬っている。斬っているのは武器で、相手はそれだけで戦意を失くしつつある。
「それ。あ、それもダメです。」
「ファイヤー……ぶはぁ!」
「何してんの!あんなところに固まってる奴らなんて、恰好の的じゃない!」
「ならお前がやれよ!あの魔導師、魔力を集めると狙い撃ってきやがる。」
セローもレブルと似た感じで、敵意を向けてくる魔導師を中心に攻撃している。魔力の探知も教えたし、もともとコントロールも良いから、狙い撃ちは得意なのかもしれない。
「っは、やぁ!」
「ぐぅ。」
「また落ちたぞ!これで何人抜きだ?」
「よし、次は俺が行く!」
エストのところには、何かルールでも作ったのかって言うくらい列が出来ている。どうしてそうなったかは分からない。きっと彼女自身の戦い方がそうさせたのだろう。
そして僕はと言うと……。
―パシュ!
―パシャン!
「うわ!?え?何も来ない?」
「これは何がどうなっているんですか?」
「これは僕を中心に水の結界を作ってます。」
「へぇ。これが水ですか。外が良く見えますけど?」
「大量の水を使えば何も見えなくなりますが、今は極少数の水を巡回させてますから。」
頭を抱えてしゃがむ兵士さんと、興味津々に魔法を観察する兵士さん。こんなチグハグな2人を見ているのは、正直面白い。
「あ、触らない方が良いですよ。」
「おっと。もしかして指切れたりします?」
「そこまで強い水圧では無いですけど。」
「そうですか。実験してみたかったんですが、残念です。」
この兵士さんは魔導師なのかな?魔法に対して学ぶ姿勢が違う。魔力は……あまり感じないけど。練習すれば、ある程度使いこなせそうな気もする。
「シノブさんの魔法で実験なんて止めなさい。」
「だな。触ってみて指が切れるで済むとは思えん。」
「エストもゾンも……そんな酷い事にならないって。」
2人が水の結界をみて体を震わせる。何を想像したんだか。
「指が切れたくらいなら、私が治しますよ?」
「いや、ラストラ。そんな実験に協力しなくていいから。」
「アマン、実験は成功への秘訣なの。それに痛みなくして、学ぶなんて思えないわ!」
「お、おう。そうか。」
「その考えはよく分かります!俺もいけると思ったら、多少の痛みは覚悟してますから。」
妙なところで理解し合うラストラと兵士さん。だけど決して触ろうとはしないところを見ると、危険は侵さないタイプなのかもしれない……って僕の魔法はそんな危険じゃないけどね!
「まぁちょうど被験者が来るので、まずは成り行きを見守りましょう。」
「そうっすね。」
2人で水の前で仁王立ち。それを見た男が、勢いをつけて走り込んでくる。
―バシャァァ…………ドゴォン!
結果を言うと、空高く吹っ飛んでいきました。
「成る程。下から上へと水が流れているから、その勢いに乗った訳ですね。」
「そうなると、逆は地面に吸い寄せられる感じでしょうか?」
「それは気になりますね。今度はこっちに立って待ちましょう。」
「そうしましょう。」
しばらく2人は反対側で仁王立ちをしていたが、あの男が吹っ飛んだのを見た後に、この結界に近ずく人はいなくなった。
「誰も来ませんね。」
「思った以上に使えない被験者達です。」
「あんなの見て突っ込んで来るのは、馬鹿だけよ。諦めて……」
エストが2人に話していると、その馬鹿が仁王立ちの2人の前に立つ。さっきの男とは違って、筋肉隆々の大男。大男は何か言っているが、外の音までは聞こえない。
「ふむ。何か言っているか聞こえないですね。」
「流石に音まで通るようにするのは、出来なくもないけど大変だからね。」
「出来るんですね……。」
前にバブルって魔法で、レブルを守った事があった。あの時はまだラストラは居なかったからな。
その大男は少し距離をとると、何やら魔法で筋肉を膨らませた。スピードを棄てた完全な脳筋スタイルと言えよう。僕は結界を張っているだけだから、こっちから攻撃ないと踏んでの強化だろう。
「レブル、セロー。変な筋肉の男は放っておいて。」
『分かったわ。』
『分かりました〜』
なのでいくら隙だらけでも、2人には攻撃させないように言った。エストは言わなくても、こっちには来れないだろう。
準備が整った大男が、結界に向けて走って来る。さてどうなるか。
―パシャ、ズドォォォン!
「やはり下にいくか。」
「地面に腕が埋まっていますね。この結界は地面を砕く男の攻撃も効かないと。」
2人はしゃがんでその大男をマジマジと観察する。
「砕いたのはこの人にとっては、不本意だったかもしれませんね。彼、泡吹いて気絶しています。」
「水の勢いに流されただけのようね。もしかして……見えていないけど、地下にも結界があるのかしら?」
「あるよ。大きな球体を想像して貰えばいいかな。地上だけだと上下は出来なくて、左右の流れになると上が守れなくなるし。」
「さすがシノブさん、実に効率よく考えられているわ。」
そしてその大男を最後に、僕達はしばらく何事もなく戦闘の行く末を見守る。
♦︎
―バシャ。
結界を解除する。すると3人が戻ってくる。
「お疲れ様3人とも。」
「少しスッキリしたわ。」
「あんだけ暴れて少しなの?」
「あら、全員生かしているわよ?本当は焼いておきたいところよ。」
「ソウデスネー」
遠い目をするエストとレブル。2人とも怪我もなく元気そうだ。
「セローもお疲れ様。」
「むふー」
近くにいたセローの頭を撫でる。魔法を見ていたが、加減もコントロールも、僕なんかより上手だった。
「だいぶ魔法も上達したね。加減やコントロールなんかは、もう僕より上だね。」
「ありがとうございます師匠!でも師匠のように百発百中とはいかないです。」
「僕の場合はアイさんがいるから。」
「それでは師匠とアイに追いつけるよう、頑張るです!」
「そうだね。頑張って。」
『ふふ。可愛い子ですね。頑張って下さい。』
「むふ〜なんだか2人に撫でられている感じがします。」
そんな感覚だとセローは言う。手は僕だけだけど、アイさんもここに居たら一緒に撫でていたであろう。気持ちが大事って事だよね。
「「じー……。」」
レブルとエストがその光景を眺めてくる。1人だけ褒めるのは贔屓か。
「おいでレブル。」
「はふ。なんか催促したみたいで、恥ずかしいわね。」
目を細めて気持ちよさそうにするレブル。反対の手はそのままセロー撫でる。エストは手が足りない……
「ゾン。エストにお願い。」
「ん?構わんが。この流れだとシノブがするもんじゃないのか?」
「いいから、いいから。僕は手が埋まってるしね。」
「ちょっと!?別に私は、撫でて欲しいとは言ってないわよ。」
「まぁそう言うな。護ってくれてありがとな。」
「まぁ悪くは、ないわね。」
微笑ましい。そんな感情を、この場にいた人達が感じたであろう。
「あのー皆さん。行きませんか?」
「馬鹿者、空気を読め!そんなんだからお前はモテないのだ。」
「先輩、今それ関係ありますか?」
「大いにある!私は空気の読めない男は好きじゃないわ。」
「先輩。言葉が戻ってますよ。」
「む。私……俺とした事が。この空気にやられたのかもしれん。」
「僕はいつもの先輩でいいと思いますが。」
「兵士は舐められてはいけないのだ。だから俺は俺なんだ。」
2人だけで話している内容だったが、聞こえてきてしまった。まぁ深く関わる事はないし、そってしておこう。
戦う女性は僕は否定したりしない。
そして崩壊した第1堀を抜け、2人とは別れた。ここからが第2堀。今度はまともでありますように!
兵士①「言っちゃいましたね先輩。」
兵士②「そうだな。彼らには感謝しないとだな。」
兵士①「案内役なのに、守って貰ってしまいましたから。」
兵士②「引き金はお前だがな。」
兵士①「っぐ。申し訳ありません。」
兵士②「……そこは怒ってはいない。むしろ感謝している。」
兵士①「感謝ですか?」
兵士②「ああ。見ろ配属したくないランク1位の、この第1堀がこの有様だ。」
兵士①「そんなランキングあったんですね……。」
兵士②「明日からは平和だ!寝れるぞ。」
兵士①「先輩。片付けがありますよ?」
兵士②「……いたた!さっきの戦いで腕を負傷してしまったようだ。」
兵士①「先輩戦うどころか、剣すら抜いてませんよね?」
兵士②「やだ〜サボりたい〜」
兵士①「はいはい。行きますよ先輩。」




