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無敵のフルフェイス  作者: みけな
第二章 無敵のコンビ〜始動編〜
67/150

67話 嵐の予感③

家でおとなしく、小説を読んでる皆様。外に出ている皆様も、読書日和です。皆さん読書しましょう(*'ω'*)


ブックマーク、感想、評価、誤字報告、読んでくれた皆様!

いつもありがとうございます(*'ω'*)

 2人の戦いは静かに始まった。


 ―キンキンキン!キィン!


 打ち合いの音が響き渡る。


「すげぇ……。」

「さすがハーネス。」


 2人の戦いに目を奪われて、見入る黒髪のおじさん。そして抵抗すらしない勇者。正直こっちのやる気が削がれた。


「……。」

「あ、セロー水玉を解除して。」

「はいです。」


 ―バシャァァ。


「……かは!」

「良かった。まだ生きていた。」


 水の中でもがいていたのが無くなり、セローに魔法解除を言わなければ溺れていたかもしれない。水を吐き出して息はしているっぽいから大丈夫だろう。


 そんな密かに死にそうになっていたけど、勇者達は気づかない。


「ふふ。素晴らしい剣技です。貴女……ゾクゾクしちゃう。」

「貴女こそ。その細い腕と剣でよく受けられるわね。」

「コツがいるのよ。どこかの誰かみたいに、真っ直ぐ振れば良いものじゃないの。」


 言われてるぞ勇者。しかし自分の事とは思っていない勇者は応援までしている。僕に頭抑えつけられている事すら、忘れているんじゃなかろうか。


「でもダメね。このまま打ち合っても勝てるイメージが湧かないわ。」

「私もよ。」


 そろそろ潮時か。お互い相手を殺そうとはしていない。順番に剣技を見せ合い相手の力量を図っている。だからこそ決着がつかない。あの剣士はレブルと同格の剣士のようだ。


「それじゃそろそろ帰るよ。」

「はいです。」

「そうですね。ここで戦う意味はもうありません。」

「て事よ。貴女とはまたいつか会う気がするわ。」

「そうね。それまでに私ももっと精進しますわ。世界にはまだまだ強い人が溢れている……。」


 そう言うとお互い剣を収める。これで終わりかと、僕らは立ち去ろうとした。しかしそれに待ったをかける人物が。


「このまま去るつもりか!させんぞ!」

「はぁ〜ココロ。今はいいの、貴方では敵わないわ。」

「油断さえしてしていなければ、魔族に引けを取るわけがない!」

「その言葉を発している段階で、負けていると気がつかないのかしら?」

「俺は負けていない……そこの魔族。俺と一騎打ちで勝負だ!」


 剣を抜き僕に突きつける勇者様。この人は仲間の意見を聞かないんだろう。視界の先に頭を抱えるお姉さんが見えるけど。


「失礼な奴ね。シノブさん、コイツ私がやっても?」

「女は黙って……」

「あ?」

「……。」


 レブルそれ以上睨まないであげて。なんか泣きそうだよ。


「ごめんなさい……えっと、シノブさん?この子の相手をお願いしてもいいかしら?」

「分かりました。」


 ここで走って撒くのは簡単だけど。追いかけられても面倒だ。


「皆んなは先にアマン達を追いかけて。魔物が出ないとも限らないし。戦えるのがエストだけだと、辛いかもしれないしさ。」

「……シノブさんが言うのなら。ただしやるからには徹底的に!」

「師匠頑張って!」

「シノブさん。力は出し過ぎずに。適度に頑張って下さい。」

「適度に頑張るよ。じゃ、皆んなの事頼んだよ。」

「任されたわ。行くわよ。」


 レブルが勇者から離れて歩き出す。


「誰が行っていいと言った?」

「誰が早く行くか競争だね!」

「良いわよ。まだセローに負けてあげる無いわ。」

「私、お2人に着いて行けるでしょうか。」

「男の子なら気合で着いて来なさい。」

「こら!俺を無視……」


 ―タン!!!


 レブルが先頭で、セローが追いかける形に遅れてハイヤーが走る。勇者の事を無視して3人が走り去る。






 そして僅か数秒で見えなくなる。走り去ったレブル達を追いかけられる者は……彼女だけだろう。


「な!?もうあんな所に!」

「2人は特別速いからね。ハイヤーはギリギリかな。途中で逸れたりはしないと思うけど。」

「くそ。貴様を倒し、あの魔族を追わねば。」


 剣を構える勇者様。構えだけだと隙は少なく、白銀の鎧が輝いていて実に勇者らしい立ち振る舞い。きっと型を教える師匠が良いんだろう。後ろにいるお姉さんを見る。


「改めてごめんなさい。そしてありがとう。一度やれば満足すると思うんだ。」

「いえ、大変そうなのは察しましたので。」

「空気も読める良い殿方ね…………貴方が勇者なら良かったのに。」

「何か言ったか?」

「いいえ。ほら、戦うんでしょう?世界を学んで来なさい。」

「ん?よく分からないが。」


 先程までのゆったりした喋り方ではなく、しっかりとした受け答えをしてくれる。そして凄い事を口にした。小さな声でボソッと言っていたが、僕にはしっかり聞こえた。


「さて、始めようか。僕も仲間と早く合流したいからね。」

「俺を倒せると思っているのか?」

「いや、さっき地面に伏せたよね?」

「知らん!後ろから攻撃なんぞ無効だ!」


 随分と都合のいい事で。背後を向けたのも自分の所為だろう。今度は後ろで両手を合わせて謝るお姉さん。


「まぁいいや。本気で来なよ。この世界の勇者様が呆気なく倒されたとなれば、僕もこの先だいぶ不安だから。」

「良いだろう!俺の本気を見せてやる!顕現せよ!シャイーン……インストール!!!」


 勇者様から神々しい光が溢れ出す。眩しいな。


『視覚を調整します。』


 あー助かります。正直眩しいくらいで、ハンデにもならないけど。


「こうなった俺は手加減できないからな!」

「いいから来なよ。」

『強化はしますか?』

「強化したら死んじゃいそうだし。」

『畏まりました。』

「なめやがって……後悔するなよ。」


 力を抑える事も出来るけど、一応勇者様だし。あのピカピカもなんだか分からないから、遊ぶ事はしない。


「行くぞ!」


 掛け声と共に勇者様が突っ込んで来る。この人学ばない?


「シャイーンブレイドォォ!改!」


 ―キィィン!


「なんだと……。」

「いやいや、こっちがなんだとだよ。」


 少しだけ速くはなったけど。期待を大きく下回る。そしてフェイントに警戒もしたけど、やっぱり真正面からの上段。名前を改と言ったところで何も変わらない。僕は難なく受け止める。


「それ聖剣なんだよね?剣が泣くよ?」

「なんだと!!」

「ふふ。」


 笑われてるぞ。


 ―キン!ヒュヒュン、ピタ。


「え?」

「どうした?」


 剣を1度弾き、フェイントを入れ首筋に剣を突きつける。全く反応しなかったから、僕のフェイントを見抜いたのかと思ったけど。回避も何もしないから剣を止めた。


「何を固まっている。来ないならこちらから行くぞ!」

「わわ。」


 首筋に近かった剣を引っ込める。そのまま突き出していれば刺さってしまう所だった。この勇者様は何が狙いだ?


 ―キィィン。キィィン。


 右から左へと剣を弾き、攻撃の軌道を変える。


「くそ!なぜ当たらん!」


 イライラしたからか、綺麗な型が崩れて雑になる。


「どういう事だ?何が狙いなの?」

「狙いだと?貴様を倒すだけ……だ!」


 ―キィィン!


 剣を交わす事で話が伝わるとか嘘だな。相手は一向に攻撃を止めない。でも1点だけ僕に伝わってくる……この勇者様は弱いのではないか?


 一度距離を取る。


「どう思うアイさん?」

『初めのはどう見ても見えていないからかと。』


 自分の剣を見る。風の魔法剣は見えにくいが、見ようと思えば見えるはず。実際にレブルやセローは見える。


「もしかしてあの勇者様は、見ようとしていない?」

『そう感じます。なので決定打を寸止めしても、ただ固まったとしか思わないんでしょう。』

「えーそれじゃダメじゃん。それなら見える剣に変えないとか。」


 ―ザク!


 風の魔法剣を地面に突き刺す。


「それなら土だな。よいしょ。」


 ―バキバキ……バキン!


 地面から土を剣の形へと変えて、引き抜く。


「2属性……しかも魔法剣をあんな軽々と。この子が勝てないのも納得だわ。」

「ふん。やっとまともな剣を構える気になったか。」


 まともって……見えない剣の方が脅威だとは思うけど。土の魔法剣は刀身が見えるけど、その分破壊と再生と厄介ではあるか?


「今度は僕から行くよ。しっかり構えてね。」

「ふん。どこからでもかかって……」


 ―ヒュン。


「横薙ぎするから。」

「貴様いつのまに横に!」


 別に普通に動いたつもりなんだけど。そして攻撃予告をして、意識をこっちに向ける。思いっきり振り抜いたら危ないかな?ゆっくり振ってみようか。あー気を使う。


 ―ビュゥン!ガツン!


「ぐぉぉぉぉ…………」


 ―ダン、ダン、ドカァァァン!!


 軽く剣を当てただけなのに、勇者様は吹き飛んでいった。何度か地面にバウンドして、荒野の岩に激突して止まった?


「勇者様!!」

「だめだイグニ!巻き込まれるぞ。俺らははなれよう。」

「あれは流石に答えたかしら。」

『忍様。早すぎます。あれではエストが受けるのも精一杯ですよ。』

「エストは鍛治師志望の戦士だよ?それより弱い訳が……。」

『エストは強いですよ?忍様が思うよりずっと。』

「そうなのか。」


 赤い子が勇者様に近づこうとしたのを、おじさんが止めている。気絶した白い人を連れて離れて行く。お姉さんは余裕そうに立ってるまま。


 ―ズガァァン!


「なんだ!?体が浮いたぞ!」

「あ、無事だった。派手に吹き飛んだ割に、あまりダメージが無さそうだけど。」

「っち。やっぱりタフね。」


 舌打ちと小言を聞くに頑丈みたいだ。まぁこれだけ見事に吹き飛んだら流石に……


「俺はまだ立っているぞ!ここからが俺のターン!」

「え!まだやるの?」

「当たり前だ!俺はまだ戦える。」


 えー。今ので諦めてくれないの?そうなると、もっと一方的に倒す必要があるの?


「シャイーンブレイドォォ!…………あ、改!」


 ―ガァァン!


 言い忘れるなら、もう改とかいらないでしょう。そして接近戦だと剣を振り回すだけの勇者様。埒があかない。


「水玉……。」

「んな!なんだその魔法!」

「さっきの子も凄かったけど。どうやら師匠はもっと凄いのね……あれ水?え、3属性?」


 勇者様の周りを全包囲で取り囲む。一つ一つは威力を抑えているけど、派手差重視の水玉100個。


「集まれ……」


 ただ見ているだけの勇者様に向かって、一斉に水玉が集まる。そして破裂はさせず、当たれば跳ね返るように調整した。


「大嵐!」


 僕が密かに考えていた魔法の一つ。タフな勇者様だからこそ、試すなら今しかないと思って実行した。


「こんな雨粒……あで。これしき……いて。くそ、身動きが……いたた。」

「えげつない魔法ね……ココロじゃなきゃ死ぬわ。」

「え?一つ一つはそんな威力ないよ?」

「そういう問題じゃないわ。回避不能な上にぶつかり合う毎に、速さが増しているのよ?分かるでしょう?」


 んー分かるでしょうと言われても。僕が実際にあれを受けたと想像してみよう…………。


「うざったいね。」

「そういう問題?いい、普通の人間が受ければ……蜂の巣よ?貫通するの、死ぬわ。」

「嘘だぁ〜」

「絶対人間相手には使わないで。」

「ん〜分かった。」


 とは言え、勇者様も一応人間なんじゃ?そしたら止めた方がいいかな?


「そしたらこれも止めるべきか……どうやって止めようかな。」

「あで。いいから……いた。止めろ!」

「そうだな。全部解除すればいいか。」

「え!?ちょっとそんな事した……」

「えい。」


 ―パン!パン!…………パパパパパパパ!!!!!


「っく!韋駄天!」

「キャーー勇者様ぁ!?」

「いいから伏せてろ!死ぬぞ!」


 一つ、また一つと破裂していく水玉。結果大惨事……おう、どうしよう。僕自身は風で壁を作っていたから、一切の被害はない。


「ちょっと!私まで巻き込まないでくれる!流石に死ぬわよ!」

「ごめんなさい。でもその脚があれば何とかなるでしょう?」

「ちょっと謝る気ある?少しでも反応遅れたらアウトよ!」

「でもお姉さんなら大丈夫かなって。一応他の仲間さんには風で軌道ずらしておいたし。」

「私を何だと思っているの?」

「ん?ん〜よく分からない。」

「……君の仲間もだいぶ苦労しそうね。」

「はは。よく言われます。」

「笑い事じゃないわよ。」


 怒って詰め寄ってきたお姉さん。無事で何よりです。


 そして嵐が去った後、勇者様はどうなっているだろうか。水が爆発した事で発生した水蒸気が晴れようとしている。

イグニ「夢でも見ているようだわ。」

カウル「俺もだ。あんな強いやつが魔族なんて、どう太刀打ちすればいいんだ。」


???「ん……何か凄い音がした。」

イグニ「おはよう、バッフル。その音なら、あの魔族が出したまほうよ。」

バッフル「魔族?どこにも居ないけど。逃げたの?」

カウル「何を言って。ハーネス嬢の横にいるだろう。」


バッフル「ん?あんなんでも彼は人間よ。もう1人いたでしょ?落ち着いた感じのお兄さんよ。」

イグニ「カウルを殴り飛ばしたやつじゃないか?」

カウル「そうなると。魔族と戦ったのって俺だけなのか……。」

イグニ「それじゃ魔族をも超える、あの黒い種族は一体なんだっていうの?」

バッフル「だから人間だって。」

イグニ・カウル「「あの強さを人間で?不可能だって。」」

バッフル「そんな可哀想よ。」

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