第1話(9)
ギルドに到着すると、怒号が飛び交っていた。
「応援の皆様方、ご足労ありがとうございます! 説明と振り分けをしますので、空いてる列に並んで下さい!」
ギルド内を走り回りながらそう声を張り上げるギルド員。
列はいくつかあるが、空いてる列ったって、全部数グループが並んでいる。そのうちのひとつに、俺たちは並んだ。
ディールをメンバー登録しておいて良かった。この混乱の中、メンバー登録したいんです、なんて言い出せないからな。
「なんだかバカなことを考えてないか?」
ミィウといい、ディールといい、どうしてそんなに勘がいいんだ。
「ディールがパーティメンバーで良かったな、と」
「依頼を受けるのは臨時パーティでも可能だぞ。そうでなくてもこういう時なんだ、いちいちパーティだのなんだの言ってる余裕はないだろう、アホだな」
『ごちゅじたま、わる、ない! でーる、めっ!』
ノノルのかわいさに溺れそう、俺……。
「ノノルすまないな、残念だが、君のご主人様はアホなんだ」
ディイーーールーー!
『きんちょうかんのないひとたちですね』
ブラウにため息つかれちゃったよ?
「遠視でウォルン以外には視てもらっているんだが、現場はかなりひどい状況だぞ。ミィウとモクルは先に魔法陣でこの街まで送っているから、戦況は少し良くなっているといいが。どこに振り分けられるかわからないが、おそらく負傷者を避難させている場所だろう。ブラウは戦力として前線にやりたいが……。ミィウと合流できないと難しいだろうな。ブラウだけでうろうろしてたら、間違えて攻撃されかねない」
それはそうだな。ブラウが戦力として前線に行けないのは痛いが、勘違いで討伐されたらお互いにいたたまれない。
『ごしゅじんさまより、うぉるんさまたちのごえいをまかされております。じたいのしゅうそくにぜんりょくをそそぐようにと』
この中で1番しっかりしてるのって、ブラウじゃね?
まあ、ディールも普段はひどいけど、今は頼れる感じがする。
「ギルドがどう出るかだな。僕たちはギルドに従うのがベターだろう。人数が多いのもあるが、鉱山は崩れやすい。下手に暴れるとかえって危険だ」
ベター、ねぇ。
「ベストは?」
「僕がギルド長ならどうするかな」
ふふふ、と怪しげな笑みを浮かべるディール、怖い……!
「ベターで! ベターでお願いします!」
そうこうしているうちに、俺たちに順番が回ってきた。
「テンバド鉱山の件でいらっしゃったということで間違いないですか?」
そりゃそうか。なんだかわからずに並んでる奴も中にはいそうだもんな。
「そうです。俺は(不本意だけど)リーダーのウォルン。回復魔法術師です。一緒にいるのが魔法使いのディールで、今回は俺の魔力供給をメインにサポートをしてもらいます。攻撃魔法が主なので、回復魔法は使えません。ファフゥンのちっさいほうは戦えません。おっきいほうは強いので、護衛として連れてきました」
「魔獣使いではないのですか?」
訝しげに尋ねるギルド員。魔獣使いでもないのに魔獣連れてたらそりゃ怪しいよな。
「魔獣使いはパーティメンバーにいます。ミィウというんですが。今回は先にこの件で参加しているはずです。ファフゥンのおっきいほうはミィウの魔獣を借りています。ちっさいほうは俺になついているので連れてきたんですが」
「ミィウさん? あの疾風の遅刻魔ミィウさんですか?」
え? ミィウ有名人?
しかも疾風の遅刻魔ってなんだよ。速いのか遅いのかはっきりしろよ。
「その疾風の遅刻魔というのは知りませんが、魔獣使いのミィウです」
「そうですか。ミィウさんの魔獣なら安心ですね。しかし、回復魔法術師というのであれば、ミィウさんと同じ前線よりは避難場所に行ってもらいたいのですが、いいでしょうか? とにかく負傷者が多くて困っているのです」