第三十四話 白日の下に、そしてー
今回の登場人物
■ ▢ ■ ▢
・三ツ谷 華 (みつたにはな)
蓮太と同じく乙名学科を専攻、卒業し、沙汰人として、周囲からは女史と称える人格者。監査人といわれる権力に打ち克つ役職として、活動を開始した。前髪パッツンのボブスタイル、青いタータンチェックのベレー帽を被り、服装も気品漂うお嬢様スタイルに変貌。
・羽黒 宗助 (はぐろそうすけ)
乙名専攻学科卒業後、官人を束ねる官人所役となって活躍。黒の燕尾服に白のウィングシャツに黒のリボンにシューズを履いて如何にも紳士的な服装。
冴島 五郎 (さえじまごろう)
乙名専攻学科卒業。日輪在住。時が経ち、宗助と同じ官人所役・日輪支部にて活躍。正義感が強く人道的だが応用の利かないところもある。今はスーツにネクタイ、シューズという姿で、祖柄樫山の闇組織・禍津社を追っていた。
・浦路 光之介 (うらじこうのすけ)
日輪の宝石商。宝石箱の唯一の生き残り。冴えない商人だが、ここ数年で大きく利益を出す。華らに命を救われ、協力することを誓う。違法なる南蛮人・ロベルト・ロマノとの秘密の取引場所を知る人物。
・置田 藤香 (おきたふじか)
故・蓮次の妻。器量と度胸に優れ、夫亡き後は置田勢を率いてきた。若い世代を教育後、村を託そうと切に願う。若くして蓮次に見初められた強靭で屈強な戦士の資質と、美しく気の付く女性の品格を持つ。
○宝石箱(九狼党)
・瑠璃川 三葉 (るりかわみつば)
置田村東部・秘八上の沙汰人で顧問。ここ数年で名を馳せるまでになった、上流階級の娘で33歳。平和的思想が美咲に買われ、刀禰から沙汰人へと上がる。気品に満ちた出立と話し方が、更にその人間性を物語る。曲線美を見せる為か、常に胸の谷間を象徴する着物と、片足は生足を見せる着こなしをする。その実は❝初夢❞と呼称される【宝石箱】の幹部。
・❝頭❞ (あたま)
九狼党のトップで、❝頭❞と呼称される絶対者。その実体は謎だが、祖柄樫山の表と裏で、かなりの権威を持つ存在とされる。
■ ▢ ■ ▢
【前回までのあらすじ】
違法宝石の流通を探る華は、次々と暗殺されていく重要参考人を保護することを考える。
華と宗助は、手に入れた顧客名簿に載る人物を追うも、❝宝石箱❞の顧客たちは、次々と暗殺されていくのだった…
華と宗助は、桐谷医院で死体と密書を見つけると、浦路と水本(貴婦人)が宿屋・波にいる事が発覚。
急ぎ、保護へ向かい、受付前で張り込んでいた。
不覚にも睡眠薬を混ぜたお茶で眠らされる宗助は、犯人が暗殺者・雪平若子と断定する。
急ぎ部屋へと向かう華と浦路は、惨殺された水本とその愛人を前に、憎悪と悲しみの気持ちを抱く。
浦路から、【宝石箱】の正体を聞くと、その一人【薔薇】は、祖母屋だった。
そして浦路が違法宝石を取引していたのは南蛮人で、その者の名はロベルト・ロマノ。
翌日、赤島の死体が上がり、華と宗助は、冴島と合流すると、福本も現れる。
赤島は心中したと処理する福本に、異を唱える華。
福本は冴島に、この事件の背後には九狼党の脅威を示唆される。冴島は、華に真実を話す代わりに条件として、今回は赤島の件から手を引いて貰う事を提示。
華ら一行は、秘八上へと向かうと、美咲の代理と瑠璃川と面会となる。
これまでの経緯と、薔薇も正体が祖母屋であることが、生存者の浦路からの情報と説明する華。
これに対し、瑠璃川は後日、連絡をすると残し、この場を解散する。
瑠璃川は、美咲に華との報告を済ますと、しばらく外回りをすると伝え外出する。
祖母屋と、その腹心・棋山は❝頭❞より結果報告にと一早く旅館・瀬織津へ赴いていた。初夢への対抗心を燃やす祖母屋。
しかし、二人へのその評価は散々たるもの。浦路は生きており、華は祖母屋の正体に気付いたことに、生かす価値を問うが、❝初夢❞が最後のチャンスを与えるよう、フォロー。
二人は、悔しながらも、それに応じ、華らの殺害へと向かう。
その運びをする❝初夢❞に才を感じる❝頭❞。❝初夢❞、彼女は実は❝瑠璃川 三葉❞だった。
そして、その正体も知らず、ただただ【宝石箱】根絶を目指す、華たちに、忌部と雪平の魔の手が忍び寄るも、華の機転と仲間の反撃で撃退する。
❝頭❞への報告をしに、棋山と出頭する祖母屋は、いきなり責を問われ、棋山は祖母屋を切り捨てようと反論を述べるも、毒茶を飲まされ殺されてしまう。
❝頭❞に藤香と華の会合の日を教えてもらうと、それが殺害の最後のチャンスと、毒茶にて二人の殺害を狙う。
そして、当日、華は藤香に謁見する。祖母屋の話をし、女中の手伝いをと台所へ向かう華。
しかし、その女中は祖母屋だった。決死の攻撃を振り切り、茶釜の湯を浴びせかけると、祖母屋はその毒茶を飲み込み、倒れる。
その時、遺言の様に宝石箱は九狼党の資金調達部隊であることと、その首領は豊倉であること、果ては❝初夢❞を殺して欲しいと華に託す。それが誰かを言い切る前に・・・
◎和都歴452年 3月27日 13時 置田村・本置田 置田家
馬車へ宗助と冴島、浦路を呼びに行った華は、皆を連れて戻ってくる。
藤香と家守が、改めて広間で出迎えていた。
「まさか、祖母屋自身が…?」
「恐らく特攻だろう。」
宗助の疑問に、藤香が答える。
「祖母屋の話から、宝石箱は九狼党の一味だとわかった。まずは、豊倉の確保が一番の近道だろう。」
「ただ、奴は今、白石組集会所の中ですね?」
藤香の整理に現状を答える宗助。
「ああ。」
「となれば、もう1人は❝初夢❞という女。かなりの地位にいるらしいが、情報はない。」
「情報…そう、三つ…三つとか言ってた!」
藤香の❝初夢❞に対する言葉に、付け加える華。
「三つ?」
「何て言ったのかよくわからなくて...『あの女、三つ』…って?確かに言ってた。」
宗助の疑問に答える華。
「三つ、というか…三ツ谷華のミツタニ…じゃないのか?」
「え?」
「最後を❝初夢❞を華に託した、とも取れる。」
宗助がそう推理する。
「そうかなぁ…?ミツタニ…?」
「…ここで推理してても仕方あるまい。」
華の悩みを他所に、締めくくる藤香。
「今後は、小さな事件に戻るとするか。いずれ、九狼党にぶち当たるだろう。」
「そうですね。」
宗助の今後の方針に同意する浦路。
「僕は禍津社の調査に戻ろうかと思う。」
冴島が溢すように話す。
「ああ。ここまで色々と助かったよ。」
宗助が冴島に礼を言う。
「お前はどうする、宗助?」
「ああ…浦路と共に、ロベルトとやらのルートを探ろうと思う。宝石箱から浦路が消えて、きっと後任を立てた筈だ。そいつにも繋がる可能性はある。」
冴島の質問に答える宗助。
「宗助と浦路の調査に期待、というところだな。華はどうする?殺されかけたのだ、少し休暇を取るか?」
藤香が華に優しく接する。
「殺されかけたのは、藤香さんもですがね。」
からかうように宗助が口を挟む。
「ーそうよ!」
「いきなり、どうした華?」
沈黙していた華が大声をあげると、宗助はびっくりする。
「私と藤香さん、2人を狙ったのよ?」
「え?ああ…だからどした?」
華の閃きについてこれない宗助たち。
「私と藤香さんがここで会うことを知っていた人、誰かしら?」
「…あ、そういうことか!」
華の機転に頷く宗助は、藤香を見る。
「ん?そりゃ家守と、栗の母親だけだと思うぞ?」
「その誰かが、九狼党に繋がる可能性はあるんじゃ?」
藤香の話しに答える宗助。
「ん?待てよ…春浪さんにも話した。」
「春浪?秘八上の副統括の春浪十茶?」
「ああ。しかし、彼は九狼党の事で人脈を使い、調査してくれている筈だ…」
藤香の春浪への恩赦に、皆は聞くほど疑惑も沸く。
「いや、春浪さんへは私が調べる。皆はそれぞれ、やるべき事に注力してくれ。」
「わかりました。」
藤香の話しに一同は納得する。
「じゃあな、無茶するなよ。」
冴島はそう言って馬車へ向かう。
「俺たちもそろそろ行くよ。またな、華。」
宗助と浦路も馬車へ向かう。
「では、私もこれにて失礼します。」
「ご苦労だった。華の活躍で、宝石箱は半ば壊滅だろう。思うところはあるだろうが、権威に隠れる事件は1つ、解決したのだ。今はゆっくり休むといい。」
「ありがとうございます。」
華の挨拶に応える藤香。
しばらく雑談をすると、それぞれの馬車が走り出し、帰路につく。
「九狼党…まさか…な。」
何となく危惧を感じつつ、馬車を見送る藤香だった。
◎和都歴452年 3月27日 22時 置田村・秘八上 旅館・泡沫 秘密部屋
「申し訳ございません、❝薔薇❞がやられ、華らの殺害に失敗したとの事です。」
「いや、予定通りだ。❝薔薇❞が死ねば漏れる情報もあるまい。」
「とはいえー」
「ー❝初夢❞よ、お前には期待している。次なる任務は既に与えてある。全うし、九狼党幹部入りを果たすのだ。」
❝頭❞が三葉の言葉を遮り、そう伝える。
そのまま、赤い羽織りをして席を立つ❝頭❞に、三葉は軽く会釈する。
華らは、一度、宝石箱と九狼党から離れることになるが、九狼党の躍進はこれから始まろうとしていた…
~監査人・三ツ谷 華~
ー完ー
~監査人・三ツ谷 華~
これを以って完結となります。長い間の御愛読、ありがとうございました。
しばらく、華もお休みしますので、機会があれば、続編も考えていきたいと思います。
続編を描くことを考慮した上で、ここでは1部・完、ということで(笑)




