第十八話 閉じられる宝石箱
(注意)
第十八話は、本編❝ケダモノたちよ❞「第10章・23幕 闇を統べる者の面影」までを読了していることを強く推奨します。
今回の登場人物
■ ▢ ■ ▢
・忌部 耕助 (いんべこうすけ)
ある場所で仙術を幾つか修得したという神出鬼没の謎の中年。頭は禿げ上がっているが、宣教師の様な服を纏い、紳士的な振る舞いを見せる。若い男性を愛でる趣味を持つ。
・雪平 若子 (ゆきひらわかこ)
忌部の教え子。中性的の魅力が溢れる美男子。紳士的であるが、殺しを生業とし、袖下にワイヤーを仕込む。化粧とお香を愛する自己愛と同性愛を重ね持つ。暇があれば常備するスカーフを手で靡かせる。
■ ▢ ■ ▢
違法宝石の流通を探る華は、ついに宝石商・生駒に通う貴婦人に的を絞り、その取引を盗み聞く。
その後、妙な2人組に宝石商が暗殺されていることが発覚。
冴島、家守と会い、情報交換を終え、華は、再び宝石商に通っていた貴婦人を見つけ出した。
その貴婦人が通う店は、南蛮菓子屋。宗助がこの店と当たりを付けると、貴婦人が出た後に、中へ入る。主人の居なくなった隙に、顧客名簿を見つけた宗助は、それを盗み出した。
華と宗助は、顧客名簿の人物を探すべく、日輪の官人所へと向かい、冴島にそれを見せると、浦路という人物を知っていた。ここ数年で力を付けた冴えない宝石商。
三人は一度、南蛮菓子屋へ向かうと、主人はまたも暗殺されていた。
華と宗助は、貴婦人を捜索・保護をしに、冴島は浦路を捜索・保護しに向かったのだが…
❝宝石箱❞なる秘密の組織。
違法宝石を調達、流通させる者たち。
彼らに、一斉に配られた密書があった。
● ● ●
監査人という、妙な女が違法宝石を嗅ぎ回っている。直ぐに全ての違法宝石の在庫を回収する。
所持している違法宝石は、全てこちらで把握している。裏切りは許されない。
更に、この任務を全うすれば、今の2倍の報酬を支払う。
使いの者から金と違法宝石を交換せよ。
合言葉は【宝石箱を 閉めよ】だ。
各位の取引場所は下記の通りとする。
3月20日
・桐谷 麻帆 8:00 桐谷医院
・三井 鞠花 12:00 蓮ヶ池 傍の茶室
・猪狩 慎太郎 15:00 原野の巨木
3月21日
以下2人は希望により 15:00 宿屋・波
・水本 亜樹代
・浦路 光之介
以後、他言無用。追って連絡する。 黒水晶より
● ● ●
◇和都歴452年 3月20日 8時 置田村・日輪 桐谷医院
「宝石箱もここまでってことかしら?」
桐谷 麻帆。彼女は村でも優秀な女医として知られる。
密書を読み終えると、急いで違法宝石を集める。
「さて、医者の仕事をしながら待とうかしら。」
桐谷は事務机に違法宝石の箱を置くと、使者の到着を待つ。
ーガチャ…
「まだ開院前ですが…?」
書き物をしながら声をあげる桐谷。
「宝石箱を…」
「閉めよ。」
2人の男が合言葉を言う。そう、雪平と忌部だ。
「早いわね。例のブツならここよ。」
桐谷は箱を持って雪平に渡す。
「御協力感謝します。」
「謝礼は?」
「皆さんには大変感謝しており、中でも桐谷先生には特別なお色を付けて、と黒水晶より申し付けられております。」
雪平がスカーフを靡かせ、笑顔で話す。
「それは嬉しい限り。今後も協力は惜しまないと伝えてくれる?」
「承知いたしました。」
雪平と忌部が不気味に微笑む。
三井 鞠花。彼女は若くして華道の師範代をつとめる女性。密書の指令に従い、日輪の蓮ヶ池へと足を運ぶ。
途中、桐谷医院を通りかかる。
⦅きゃああ!⦆
日輪には珍しい悲鳴と人だかりを横目に、彼女は蓮ヶ池を目指す。
人だかりから、また雪平と忌部が出てくる。
「桐谷先生には、死という御願いにも惜しみ無く協力して頂いた。その謝礼には満足された死に顔でしたね。」
「少々色を付けすぎだよ、若子君。フッフッフッ…」
雪平の笑顔に、一言添え、手を繋ぐ忌部。
◇和都歴452年 3月20日 12時 置田村・日輪・蓮ヶ池 傍の茶室
蓮ヶ池に着いた三井は、茶室に入り、持ってきた花を生けていた。
ーチョキン…
花鋏で、茎を剪定し、愛でる。
ーガラガラ…
「おや?どなたかしら?」
三井は目線は花から逸らさず、声をかける。
「宝石箱を…」
「閉めよ。」
雪平と忌部だ。
「あら…」
三井は一言と共に、違法宝石の入った袋を前に出す。
「指示通り、輝く宝石はこれで全部。」
「御協力感謝します。」
三井の言動に、笑顔で返す雪平。
「なんでも謝礼金が弾むとか?良い花鋏が買えそうじゃ。」
ーチョキン…
「ええ、きっと。」
雪平が三井の背後へ歩いていくと、手首に仕込んだワイヤーを手に取り、妖しく微笑む。
「宝石とは暫く距離が出来るのよね?その金で最高の芸術でも生み出そうかしら?」
ーチョキン…
三井は花を見ながら話をする。
「是非とも。我々も御協力しますよ。」
忌部が机に置いてある幾つかの花鋏に視線を移す。
「蓮ヶ池に死体があがったぞ!」
村民らが池に走っていくと、花で彩られた無惨な三井が浮かんでいた。
「三井師範代、最高の芸術を生み出せましたね。」
「芸術とは、死後評価されるものだ。生きていたらその願いは叶わない。」
雪平と忌部が、顔を見合わせ不気味に微笑むと、腕を組んで去っていく。
◇和都歴452年 3月20日 15時 置田村・原野の巨木
日輪の外れ、八俣に近い閑散とした原野に、ひっそりと立つ巨木。
雪平と忌部が、その巨木の下で待つ。
「次の取引場はここですかね?」
「そうみたいだね、若子君。」
すると、道の向こうから馬に乗った男が来る。
次回2025/12/5(金) 18:00~「第十九話 次々と死んでいく」を配信予定です。
※今回を以って秋の読書・強化月間を終了します。
12/5(金)~12/26(金)は年末年始・強化月間です。
期間中は毎週(金) 18:00に投稿致しますので、御期待下さい。




