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第十四話 奇妙な二人組

今回の登場人物


■ ▢ ■ ▢


・三ツ谷 華 (みつたにはな)

蓮太と同じく乙名学科を専攻、卒業し、沙汰人として、周囲からは女史と称える人格者。監査人といわれる権力に打ち克つ役職として、活動を開始した。前髪パッツンのボブスタイル、青いタータンチェックのベレー帽を被り、服装も気品漂うお嬢様スタイルに変貌。


・羽黒 宗助 (はぐろそうすけ)

乙名専攻学科卒業後、官人を束ねる官人所役となって活躍。黒の燕尾服に白のウィングシャツに黒のリボンにシューズを履いて如何にも紳士的な服装。


・伊集院 千毬 (いじゅういんちまり)

乙名専攻学科卒業。学童会長の座も無事終え、その後、守役として学童の育成を行う。ただし、その実、九狼党としての暗躍も健在で、光と闇を使い分け、その利益を得る。髪は二つに分けて結び、カチューシャを着けて、黒と白の配色の服装が、可愛いながらも大人の雰囲気と共に、千毬の二つの顔を暗示させる。


ーーー


・忌部 耕助 (いんべこうすけ)

ある場所で仙術を幾つか修得したという神出鬼没の謎の中年。頭は禿げ上がっているが、宣教師の様な服を纏い、紳士的な振る舞いを見せる。若い男性を愛でる趣味を持つ。


・雪平 若子 (ゆきひらわかこ)

忌部の教え子。中性的の魅力が溢れる美男子。紳士的であるが、殺しを生業とする。化粧とお香を愛する自己愛と同性愛を重ね持つ。暇があれば常備するスカーフを手で靡かせる。


■ ▢ ■ ▢

違法宝石の流通を探る華は、末端の宝石商を客として巡り、潜入捜査を開始して、数か月の時が経とうとしていた。

そしてついに、宝石商・生駒に通う貴婦人に的を絞り、その取引を盗み聞く。

宝石商の主人には惚けられてしまうも、根気よく通う華。

宝石商の主人は、危機を感じ、ある人物に相談すると、その❝黒水晶❞なる人物に、一度普通の宝石商へ戻るよう指示される。

❝黒水晶❞は念のためと、違法宝石と顧客名簿を預かるも、対策は打つと、安心させる。

華は翌日、再び宝石商へと通う。



・和都歴452年 2月16日 13時 置田村・日輪 某・茶屋


華は、毎度の様に茶屋で顧客を観察していた。今のところ、例の貴婦人以外、定期的に来る顧客はいなかった。

「あの宝石商には、よく行くんですか?」

「え?あなたは?」

「雪平若子と申します。貴女は…えっと?」

「華、三ツ谷華よ。」

「素敵なお名前ですね。」

「若子君、茶代は払ってきたよ。」

「あ、耕助さん、ありがとうございます。では行きましょうか。」

「こちらは?」

忌部が華を見ながら、雪平に問いかける。

「あ、三ツ谷華さん。えっと何なされてる方ですっけ?」

「私は親の脛かじりでして。」

華が惚けて笑いを誘う。

「なるほど。僕らも似たようなものでして。」

「では、若子君、行きましょう。」

「耕助さん?たまには僕らも宝石を見るなんて良いかもしれませんよ?」

「はっはっは、敵いませんな。良いでしょう。」

「では、華さん。またどこかで。」

雪平は丁寧にお辞儀をすると、忌部と宝石商へと入っていった。

華はお茶を飲みながら、二人が出てくるのを、それとなく待っている。


「いらっしゃい…男の客人とは珍しい。」

「最近では、女性への贈り物には、宝石が一番だと聞きましてね。」

雪平がニッコリと微笑む。

「違いない。そこの石は売れ筋でね、どう?」

「あ~。これか。じゃ、20個ほど包んでよ。」

「そんなに?景気いいね~。裏に在庫があるから、ちょっと待っててよ。」

店主が暖簾の奥へと入っていきながら笑顔で話す。

「お願いします。」

雪平と忌部は顔を見合い、ケダモノのように微笑む。


しばらくして、二人が出てくると、華の顔を見るや再び会釈しながら、通りを歩いて去っていく。女性とすれ違い、そのまま女性は宝石商へと入っていった。

「今日も見たことない人ばっかりだなぁ…」


⦅きゃあああ!⦆


「!?」

先ほどの女性の悲鳴だろうか、急いで宝石商へと入る華。

暖簾の前で、絞殺され息絶えた店主がいた。

「か…官人を!」

「は、はい!」

華は女性に官人を呼ぶよう伝えると、急いで外へ出る。

(さっきの二人組…?)

走って後を追う華。

(いない…!)

立ち止まり、辺りを見回す華。

(唯一の手掛かりが…暗殺された! 一度、宗助や千毬と情報を共有した方がいいかのな…)


「三ツ谷…華…か。素晴らしい美貌だ。」

忌部がニヤリと笑うと、雪平は忌部を睨む。

「あぁ、女性にしては…だよ。」

そう言って、忌部は雪平の手を握り、その場を去っていく。


その後、華はその旨を知らせる文を送り、宗助と千毬に、改めて会う場を設けた。



・和都歴452年 3月12日 15時 置田村・日輪 料亭・伊佐


「なるほど、確かに違法宝石の取引はあった…と。お手柄だぞ、華。」

「ええ、ありがとう。」

「でも、残念だわ。その店主が殺されては、また振り出しよ。」

宗助が華を褒めるも、千毬は事実上、進展しないことに落胆する。

「いえ、まだその店に通っていた貴婦人と、店主を殺した二人が、手掛かりとしては生きてるわ。」

華が珍しく強く発言する。

「しかし、華、危険だ。特にその二人組は雇われた殺し屋だろう?」

「わからない…一人は雪平若子って名乗っていたけれど…奇妙な二人組だったわ。…だからって、このまま黙って引き下がれない…!」

宗助の忠告にも屈しない華。

「…じゃあ、僕も同行する。さすがに君一人はこの先危険だ。」

「お願いするわ。」

「華、実は1月に、変若水の監獄から逃亡を果たした人を保護したの。その人は今後は藤香様の側近として、色々動くと思うの。」

千毬が言葉を挟む。

「脱獄者?」

「正確には、生還者…ね。彼と、華の持つ情報を交換し、広い網を築いて欲しい。冴島君も予定が合うなら、情報を共有したいみたい。」

「もちろん、それは願ったりだわ。」

華が笑顔で応える。

次回2025/11/7(金) 18:00~「 第十五話 神兵」を配信予定です。

   

※11/3(月)~11/28(金)は秋の読書・強化月間です。

期間中は毎週(金) 及び祝日18:00に投稿致しますので、御期待下さい。

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