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第51話 ママの思い、パパの思い

 セルマ包囲戦は失敗に終わった。

 しかしスコット国王からお咎めはなかった。


 それどころか、スコット国王はスザンヌの家族をマルカに呼び寄せた。

 彼らに貴族の地位を与える「叙任式」を行うためだ。


 「フルーレの乙女」スザンヌの国民人気は依然として高い。

 スザンヌの影響で愛国心は飛躍的に高まっている。

 エール国民の心もひとつになり始めていた。

 それこそがスコット国王の生命線でもあった。


 マルク一家が王宮にやってきた。

 母シャルロットの姿を見つけたスザンヌ。

 駆け寄って、その体を抱きしめる。

 みんなに黙って家出同然でフルーレ村を旅立った日が思い出される。


 ママの体、少しやせたかもしれない、とスザンヌは思う。

 母シャルロットはぼろぼろ涙をこぼしながら言う。


「スザンヌちゃん、すっかり凛々(りり)しくなっちゃって……」


 スザンヌにも熱いものがこみあげる。


「こめんなさい、ママ、村にも帰らず家のことを放りっぱなしで……」


「いいのよ。あなたは、好きなことをせっかく見つけたのだから、思う存分にやりきりなさい」


「ママ、ありがとう」


 この先のチャレンジ、失敗して火あぶり処刑にされるかも知れないけれど……。

 ママならきっと、わかってくれるだろう。


 ママの後にいた父フランクも、ハンカチで目をぬぐっていた。

 スザンヌはフランクに言う。


「父さん、来てくれてありがとう」


 フランクは、


「こちらこそありがとう。貴族の名をいただけるなんて、思っても見なかったことだよ」


 と言って、スザンヌにこう耳打ちした。


「でも本当は、もう危険な戦いはやめてほしいんだ。いまの仕事が片付いたら、フルーレ村に戻って、結婚して家庭を持ってほしいんだ」


 パパはいつまでもパパのまま。

 少しも変わっていない。

 スザンヌは微笑ましく思う。

 確かに、ここでやめてしまえば、村で家族と平穏に暮らせるかもしれない。

 でもこの先、悲惨な末路をたどる騎士たちの運命はどうなるのだろう?

 彼らを放り出して逃げることはできない。

 おそらく私は、パパの望む私にはなれないだろう。

 今は、こう応えておく。


「パパ、考えておくわね」


 そしてあらためて、パパに心からの思いを伝える。


「私、家族一緒の時間が一番幸せなの。心配してくれてありがとう」


 叙任式はマルカ城の大広場で行われた。

「フルーレの乙女」スザンヌを見ようと、大群衆が押し寄せた。

 城のバルコニーに並ぶスザンヌの家族、マルク一家。

 エール国軍で戦う長兄のアンリ、次兄のブラン。

 父フランク、母シャルロット、三兄のモーリス、妹のジュリー。

 スコット国王は彼に、貴族の身分を授ける叙任書を手渡す。

 スザンヌが深く一礼する。 

 万雷の拍手が群衆から巻き起こる。


 スザンヌはスコット国王から発言を求められた。

 大群衆に向かってスザンヌは声を張り上げた。


「エール国の皆様、スコット王太子は戴冠式で正式なエール国王となりました」


 人々から先ほどを上回る歓声と拍手が起こり、響き渡る。

 しばらく何も聞こえない状態。

 それが静まるのを待って、スザンヌが続ける。


「スコット国王のもと、私たちは力を合わせましょう! 首都ラシンと残りの国土を取り戻し、完全なるエール国を復活させましょう!!」


 地鳴りのような歓声と拍手が、いつ終わるともなく続く。

 スコット国王は満足そうな表情である。

 これでいい、とスザンヌは思う。

 失敗に終わるかもしれないけど……。

 みんなのために、最後まで戦おう!


今夜も20時くらいに投稿しますね♡

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