第50話 夢の翼を失って
バトラーはナルマンジーへと旅立った。
その後、スザンヌの足の傷は完全に癒えた。
しかし軍への復帰の許可はおりなかった。
仲間からは、すっかり引き離されてしまった。
バトラーはもちろん、アランシモン、レオ……。
〈彼らは私に翼を与えてくれた〉
だからこそスザンヌは自由自在に羽ばたけた。
どんな戦いも勝利に導くことができた。
しかし今、頼もしい騎士たちとはずっと会えていない。
しばらくして、ようやくスコット国王から知らせが届いた。
エール国軍への復帰の要請である。
占領された都市・サオンジーを奪回する戦いだった。
そこには敵のシニョーラ公国軍が駐留している。
スザンヌはサオンジーに向かった。
現地で視察してみると、攻略の難しい要塞都市だった。
街の周りには深い堀が掘られている。
守備兵もびっしりと配置されている。
与えられた戦力だけでは苦戦が予想された。
スザンヌはスコット国王に援軍を依頼した。
するとすぐに反応があった。
身内であるスコット家の貴族が援軍に入ってくれたのだ。
サオンジー近郊の領地を持つ貴族・レオーネである。
彼はカルバリン砲の部隊も用意してくれた。
スコット国王がスザンヌを、かつての仲間の騎士と引き離したのには思惑があった。
彼はスザンヌを思い通りに動かせるようにしたかった。
そのために飴とムチを使い始めたのだ。
難しいミッションを与えて、頼らせる。
頼ってきたら援助を存分に与える。
これによってスザンヌを手中に収めようとしたのである。
スコット国王の親族・レオーネとともに、スザンヌはサオンジーへの進軍を開始した。
カルバリン砲の効果はてきめんだった。
敵の守備部隊が崩れ始める。
〈この機しかない!〉
スザンヌは軍旗を掲げて部隊を突入させる。
スザンヌの鼓舞のもとエール国軍は勇敢に戦った。
敵兵の抵抗は日没前に尽きた。
サオンジーは投降し、街の奪回が完了した。
スザンヌが戦勝の報告に戻る。
スコット国王がじきじきに出迎えた。
「スザンヌ。よくやった。おまえに貴族の地位を与えよう」
「ありがとうございます」
「家族も含め、ドゥ・ラルクの姓を名乗ることを許す。手続きが終わったら正式に叙任式を行おう」
正直なところ、スザンヌには貴族の地位に全く興味はない。
しかし断ると面倒なので、あらためて感謝の意を伝える。
「身に余る光栄でございます」
続いてスコット国王はスザンヌに新たなミッションを与えた。
占領されている都市セルマの奪回作戦である。
駐留しているのはシニョーラ公国軍だ。
これはサオンジー奪回よりも難易度が高かった。
城門の守りは固い。
守備兵の数もスザンヌの部隊を上回っている。
しかも長期の戦いに対応できる備えもある都市だ。
スザンヌはスコット国王に要望した。
「私が動かせる部隊だけでは難しい作戦です」
スコット国王が聞く。
「必要なものは何だ?」
「カルバリン砲兵隊と補給物資です」
「わかった。近隣都市から提供させよう」
スコット国王からの要請で援軍が手配された。
セルマに向かったスザンヌ。
カルバリン砲兵隊と合流し、城門への攻撃を指示する。
砲弾が炸裂する。
しかし城門は堅固で破壊できない。
守備隊の守りも厳しい。
町は包囲したものの、両軍、にらみ合いの時期が続いた。
スザンヌはさらなる援軍を求めた。
先の戦いで共闘したレオーネも頼る。
するとレオーネの声掛けで新たな援助があった。
パビリオンとマルカから、援軍と補給物資が届いた。
これによりさらに強力な砲兵隊が編成された。
そして激しい攻撃が再開された。
砲弾の爆発音とともに城壁の破壊が進む。
しかしスザンヌを阻んだのが悪天候だった。
雪と風による嵐のような日々が続いた。
敵は守備兵だけではなかった。
コンディションの悪さがスザンヌの部隊の突入を阻んでいた。
悪天候が続き、補給物資が尽きる。
ついに、見かねたスコット国王から退却命令が出た。
やはり、かつての騎士仲間こそ、スザンヌにとって「夢の翼」だった。
彼らがいたからこそ、スザンヌは思い通りに羽ばたけた。
スザンヌは仲間の騎士を失い、思い通りの戦いができなくなっていた。
夕方くらいにまた投稿しますね♡




