40 エピローグ
数ヶ月後。
カフェ・パンデミックにはペスト氏が来ていた。
マスターはペスト氏にコーヒーを出す。
「マスター、最近この街の様子がおかしいと思いませんか」
「いつだっておかしな街だよ」
「それはそうなのですが」
「何かあった?」
「いつも人間を無作法に取り締まっていたピーポくんたちがやけに礼儀正しいんですよ」
「そうなの? 彼らも賢くなったんじゃない?」
「ピーポくんだけじゃない。街中のあらゆるロボットやIoT機器の挙動が以前とは違うような気がするんです」
「へえ。私はあんまり外を出歩かないからなあ」
「なんていうか、以前よりも人間に対する親密さがあがったというか、不安を感じさせなくなったというか」
「いいことじゃないの?」
「それはそうなのですが……。いや……、そうなのでしょうか……」
ピローン。
けん玉の課金を知らせる通知が入った。
ペスト氏は課金額を確認する。
ペスト氏がアマビエ様に渡したけん玉は、課金がなされると逐一ペスト氏に通知がいく仕組みになっていた。
課金額の15%がペスト氏に分配されるのだった。
けん玉は現在、マーズが所持しており、順調に毎日課金額を増やしていた。
銀行口座はいまなおアマビエ様のそれと紐づけられたままだった。
「ああ、でも世の中から不安がなくなると、ペストさんの商売はあがったりかな」
「いえいえ、心配ご無用ですよ。平穏なときにこそ売れる商品もありますから」
「ははは。それもそうか」
「それに、不安がなくなるなんてことはないんです。ひとつの不安が取り除かれても、すぐに次の、新しい不安が生まれるものですから。何か大きな問題が収束したと思えても、実際には次の別の問題の入り口に立っているというのに過ぎないのです」
「たしかにねえ。私もこの店がいつまで続けられるか、不安で仕方がないよ」
「マスター、実はマスターにだけお売りできるいい商品がありますよ」




