24 パチンコPCR
午後1時。
結社ダイヤモンド・プリンセスのサファイアとマジェスティックはアマビエ様を探していた。
サーズとマーズもアマビエ様も探していた。
そしてコビット三兄弟もアマビエ様を探していた。
一方その頃、アマビエ様はパチンコをしていた。
アマビエ様はパチンコPCRのプレミアム会員専用ブースに朝から入り浸っていた。
昨日は、古い生活様式を守る会と対決したり、深夜のライブ配信をしたりといつになくがんばったので、今日は一日趣味のパチンコをしようと決めていたのだった。
パチンコPCRは「PCがある!PCR検査が受けられる!」でおなじみのインターネットカフェ・PCRが運営するパチンコ店である。
PCRは当初からパチンコ事業に携わっていたわけではなかった。
発端はカジノだった。
統合型リゾート(IR)整備推進法案、俗に言うカジノ法案が成立したのは2018年のことだ。
2020年には国内初のカジノ施設のオープンが期待されていたものの、新型コロナウイルス禍の影響を受けて、海外のカジノ事業者が相次いで参入を見合わせた。
カジノを柱にしたIR計画の頓挫がささやかれた矢先、事業者として手を挙げたのがネットカフェ店舗を急速に拡大していたPCRだった。
PCRはこれまでのカジノのイメージを刷新する斬新なカジノ施設、カジノPCRを開業した。
カジノPCRでは、すべての賭博が個室内で行われる。
顧客はひとりひとり専用ブースに案内され、ブース内に設置されたデバイスによってバカラやルーレット、スロットといったゲームを、誰にも接触することなく楽しめる。
またマンガやインターネット、シャワー、ドリンクバーといったアメニティも完備され、希望者はブース内で寝泊りすることもできた。
まさに統合型リゾートだ。
国内の識者からは、ネットカフェと何が違うのか、「カジノは大人の社交場」という建前はどこにいったのか、といった批判が続出したものの、少しずつ戻りつつあった海外からの観光客からはこれまでにないカジノとして支持を集めた。
人との接触が皆無で感染対策が万全な上、人目を気にせずギャンブルが楽しめる、さらにはカジノに大量のマンガがあるのもユニークで、これぞクールジャパン!と評判になり、またたく間に人気観光スポットとなった。
カジノPCRは、国内のパチンコ・パチスロファンからもにわかに注目を集めた。
パチンコ店は、2020年以降、緊急事態宣言が発出されるたびに、もっとも強いバッシングにさらされた業種だ。
多くのパチンコ店は、ガイドラインに沿って感染対策を万全にした上で営業を行っており、また実際にパチンコ店でのクラスター感染は発生していなかった。
にもかかわらず、緊急事態宣言の有無や解除レベルに関係なく、パチンコ店への非難は止むことがなかった。
そんな中、営業が立ち行かなくなったパチンコ店は次々と閉店していった。
行き場を失ったパチンコ・パチスロファンはカジノPCRに救いを求めたのだった。
カジノPCRは都市にしかなかったし、レートも高いから頻繁に通える場所ではなかった。
それでも年に1回か2回の楽しみとして、全国からパチンコ・パチスロファンが集った。
カジノ事業で成功を収めると、PCRはカジノで培ったノウハウを活かし、いよいよパチンコ事業にも進出した。
廃墟となっていた全国のパチンコ店跡地を次々と買い取り、内部を全面リノベーションしてパチンコPCRを開店した。
カジノPCRの完全感染対策設計はそのままに、カジュアルに遊戯が楽しめるパチンコPCRは、従来のパチンコ・パチスロファンのみならず、かつてのパチンコ店を知らない若い世代からも熱狂的に受け入れられた。
「こんなゲームの何がおもしろいのですか。同じ玉で遊ぶなら、私で遊びませんか」
「ちょっと黙ってて、いまいいところなんだから」
「どうせすべてが提供者側の設定した確率によって決まる運任せの遊びです」
「よし!確変突入」
昨日はさんざん遊んでくれたのに、今日のアマビエ様はすっかりパチンコに夢中だ。
けん玉はやきもちをやいていた。
「確率がお好きなら、私にも確率変動モードがありますよ。玉がけん先に入る確率が2倍にアップします。また大技成功率も1.5倍になります。確率変動モードの課金額は30分2,000円です」
「あなたねえ、なんでもかんでもお金とりすぎなの。それに課金させるばかりでリターンがないでしょ?」
「15分5,000円のギャンブルモードもございます。ギャンブルモード中に技が成功すると、技の難易度に応じてケンダマネーがもらえます」
「ケンダマネー?」
「ケンダマネーを使って玉のデコレーションや大皿・小皿の拡張を行いましょう。ギャンブルモードに設定しますか」
「それって現金には換えられないの」
「ゲーム内通貨の現金への換金は違法です」
「やった!確変続行!」
そのときだった。
内側からしか開かないはずのブースの扉が何者かによってこじ開けられた。
二人の人間がアマビエ様の背後に立つ。
「アマビエ、やっと見つけたわ」
「ちょっとツラ貸せや、コラァ!!」
サーズとマーズだった。
アマビエ様はパチンコから目を離さずに、けん玉に告げた。
「バトルモードよ。あと確率変動モードもつけて」




