第5話 【Friend】
衝撃が侵食していく。
「………!?」
弾丸のようなものに身体を貫かれたというのに、彼は倒れもしない。
そして彼の背後にいつの間にか人影が現れていた。
「見つけたぞ、俊」
この声に聴き覚えがあった。
それはいつも追いかけていた声。憧れていた声。いつもよりずっと低かったけど。顔を確認することが怖かった。
華憐だった。弾丸を打ち込んだのも。
そしてその瞬間、なんとも言えない感情が祐を包んだ。自分と同じだった、嬉しさと哀しみ。汗がふき出る。
「なん…で…」
その後ろにもう4人いる。それぞれが祐の見たことがある顔だった。
華憐が言う。
「祐君、君も私たちと一緒だったとは、きづかなかった」
後ろの男たちもいう。
「翔良の生徒か。魂喰いだったとは」
今、気付いた。自分の愚かさに。こんなにも魂喰いは、日常に潜んでいたんだ。
バキッ
鈍い音がして、華憐の身体が吹っ飛ばされた。
見ると、貫かれたはずの彼の傷穴は修復されていて、禍々しい赤い物体が身体の至る所を包み込んでいた。
「俊…てめぇ…」
華憐の仲間の一人が俊と呼ばれる男を睨み付けた。仲間達はそれぞれ青い物体を発現させた。
「そこまで瑠魂が成長してるとは思わなかったよ、俊」
華憐が瓦礫をどかして起き上がりながらいった。
「それは成長もするよな、あんだけ喰ってれば」
「魂だけじゃ事足りず、肉体まで食い尽くすとはなぁ」
「SEOの奴らには『暴食』なんて呼ばれるほどだ」
どうやら俊も一応魂喰いらしい。そして彼らが発現させた物体は、瑠魂?
俊は彼らに背を向けた。
「待て、俊!」
華憐は再び弾丸のような瑠魂を撃つ。しかしそれは当たらなかった。そして目にも止まらぬスピードで、俊の瑠魂が華憐や彼らを貫いた。
「ガハッ…!」
相手をしてる暇はないと言わんばかりに、俊は立ち去った。
「くそっ…また逃がしたか…」
祐はしばらく呆然としてから、彼らの手当てをした。
翔良高校地下用具庫。そこが彼らの本拠地らしい。連れてこられた祐は、こんな場所があったとは、と驚く。地下の存在すら知らなかったのだ。
「ここを知ってるのは先代校長と俺らだけだよ」
そうだったのか。
改めて自己紹介をした。
「私は華憐。改めてよろしくね」
「俺は本堂駆だ、一応こんなかでは皆より年上で先輩だ」
「僕は佐藤歩。よろしく」
「俺は後藤春だ。」
「俺は、柿崎敢!よろしくな」
性格的には後の4人は、駆がリーダー格できちんとしている。歩は大人しくて、敢は元気で活発…という感じだろうか。
「僕は佐々木祐です。よろしくお願いします」
魂喰いの仲間がいると心強い。師もいるが、同年代の方が落ち着く。
しかし、人間から見て『悪』の仲間がいると考えると、少し複雑な気もしたが。
彼らは自分達が『魂喰い』だということをどう思っているのか。
一方東京都C区。師の小屋。そこには、ある足音が歩み寄っていた。
「ここですね、鍵山さん」
「突入だ」
刻々と、近づいていた。感じ取ることさえ不可能な気配と共に。