第3話 【Taught】
自分と、同じ者。
「……同じ?」
ということは、自分と同じような魂を喰える者が、存在する…?
「ああ。俺もお前と同じ『魂喰い(たまくい)』だ」
「タマクイ…??」
しばらく彼はこっちを疑うような目で見てきた。
…居心地が悪い。それに開放されたということかも分からない。
「お前、自分のことについても知らねぇの?」
「自分のこと…」
質問をして、彼は腰を下ろした。手で合図されて、自分もその場に座る。
魂喰いとは、自分のことなのだろうか。いままで自分と同じような者がいるなんて、考えもしなかったから世間でそう呼ばれている存在だということは分かるはずもない。
だとしても、まったくその存在を知らないというのはおかしいが…
「そうだ。どうやらお前は今まで同族と会っていなかったから分からなかったらしいが、最近は魂喰いの生態について研究する学者とかいるからな…」
なんて恐ろしい話だ。
「世間ではまだあまりその存在を明かされていないらしい。まだ複数いると確定したわけでなく、あくまで完璧に発見されたのは数人だからだ」
なるほど。しかしまだ彼が自分と同じと知ってからずっとある疑問が引っかかっていた。
「1つ質問してもいいですか。」
「なんだ」
「僕達は、まぁ僕だけかもしれないんですけど、1人の魂を食べれば、1週間は食べなくても生きていけるはずなんですが」
少なくとも自分はそうだ。
「そうだが」
「何故そのように1日に何人もの魂を食べるんですか」
事件が起きたのは昨日。つまり昨日から魂の多量摂取を始めたということ。なんのために?
「決まってるだろ。瑠魂を強化するためだ。最近はSEOの奴らもいるらしいからな」
(??)
意味不明な単語が次々と出てきて混乱する。
瑠魂…SEO…?
「そうか、知らないか。瑠魂はお前も使ったことがあるだろう魂の塊ともいえる武器みたいなやつだな」
勿論使ったことなどない。
「SouleaterExpulsionOrganization…通称SEOは俺たち魂喰いを駆逐するための組織だ。お前もしらなきゃ命取りになるぞ」
「あの」
やはり1つ、引っかかる。
「ん?」
「その、瑠魂の意味が、あまり良く分からないんですが」
彼は大きく目を見開いた。
「瑠魂の意味が分からない?使ったことがないのか?それで今まで生きてきたのか」
「はぁ…」
そこで彼は何かにきずいたようだ。
「お前、子供の時どうしてた」
(子供…?)
そう、祐は、子供の時、小学校より前の記憶が欠落しているのだった。
「記憶がない、か…」
「はい。小学校より前の記憶があまりなくて」
原因は分からない。頭をうったとかでもない。ただ、記憶だけが、すっぽりとなくなっている。
「まぁ、その原因は今はおいといて、瑠魂についてだ。瑠魂とは、さっきも言ったが、魂の塊だ。自分が喰った魂を形として具現化させたものだ。」
魂を具現化…
「種類は大きく分けて3つ。斬撃タイプ、射撃タイプ、打撃タイプだ。詳しいことは実際に使えば分かる」
なんとなく、分かってきたが使い方を知らない。
「出せるようになるには時間がかかる」
考えていたことを見透かされたようだ。思えば、自分はこの男のことを何もしらない。見ず知らずの人にこんなに親切にしてもらっていいのか、と考えるのが普通だろう。
「すみません…こんなに親切に教えていただいて」
「ん?ああ、いいんだよ、仲間同士助け合うのが常識だからな」
「はい、ありがとうございます…」
「そういえば、おたがい名前も知らねぇんだったな。悪い。」
いえ、と短く応えると、自己紹介をしてきた。
「俺は黒沢師。分からないことがあったら、頼るといい。普段はここにいるからな」
「ありがとうございます。僕は佐々木祐です。それで、あの…」
「ん?」
「帰り道…分からないんですが」
師は、一拍おいて吹き出し、僕は無事に帰ることができた。
真実への第一歩を刻む。