1
これは十数日前、闘技後のことだった
_________________________________
「ヤバイぞ、なんかわからないものに囲まれてるぞこの宿!」
正直にこれは、恐ろしい数だった
「こんなのとどう戦うんだ、ゲンキ!」
「………」
「どうするのよ! 近づいて来たわよ、ゲンキ!」
「………」
「なんか策はあるの、ゲンキ!」
「………」
『ゲンキ!!!』
「よし、トンズラしよう」
『ハアッ!?』
俺の作戦に完全にびっくりの一同
「何言ってるんだ、ゲンキ?! この包囲網をどう抜けるのさ!」
「そこは『転移』だろ?」
「半径的に遠くに行けないわよ!」
「あいつらを越えられればこっちのもんだろ?」
「でも…」
「『転移』! 座標『闘技場』!」
『ゲンキ〜〜〜〜〜!!』
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
全員は闘技場に転移した
逃走は成功した…
「…後で覚えてなさいよ、ゲンキ」
「…逃げ切れたらな」
…わけではないからだ
殺気を感じないし、気配もない
でも、足音がする。すぐ近くから…
「まずは走るぞ」
俺は駆け出した
他三人も駆け出した
「転移でいいんじゃないのか?」
スザカは言うが、正直…
「…正直に言うとな、待ち伏せされてるかもしれないんだ、これが」
「なんでだ?」
「今駆け出した理由忘れたか?」
「あ、確かにそうだな」
あんなに集まってたはずの軍団がすぐここには来れない距離だ
何せ、『転移』だから…
それに、俺にとって、恐怖がある
あいつらには殺気を、気配を感じないのだから
俺は今までの中で一番恐怖しているのだ
目の前に出て来られた時、まともには戦えないかもしれない…
「今日は他の宿までこのままだ!」
『足つっちゃうよ〜(って〜)!』
「死にたくなければ走れ! …まあ、生贄も––––」
『いや〜、走るっていいねーー!!!』
そう言って、俺を追い越して、光の速さで見えなくなっていった
_________________________________
「…うん、頼むぜピロエ」
『まあ、マッカセッナサーイ♫』
電話越しで、あの軍団についての情報収集してもらう依頼を、マキの村に着くまでにしたのは言うまでもないだろう
『しかし、奴らが動き出したか……』
「奴ら?」
『いや〜、なんでもね〜ですよ〜♫』
「ああ、スッゲーわかりやすい返答だな」
『ではこれで…あ、そうそう、くれぐれも––––』
––––神と仏を信じ過ぎないように
プツン…
奴がなぜ、神と仏を知っているのかはいいとして…
信じるな、か
「俺は誰も信じ切ってないよ、俺自身も…」
そう、独り言を言った




