第三十六話
東風吹かば にほいおこせよ 梅の花
主なしとて 春なわすれそ
菅原道真
故郷の筑前国を後にして、一人の若者が堺の町を目指して
交易船に乗り込んだ。
かつて都を追われ、太宰府に左遷された菅原道真の末裔・東風双葉は
大志を胸に...ない胸に秘め、戦国の世を生き抜いていく決意と共に。
本能寺の変より24年前 筑紫の国
それがしの名は東風双葉!
1545年(天文14年)11月15日に北九州筑紫の国で菅原道真公の末裔である東風家で生を受けた。
東風家は菅原家一族には珍しく文学や学問よりも武芸に秀で、東風流武術を興し3代にわたり継承している。
もの心がつくと2歳年上の姉、一葉とともに至極当然のごとく鍛錬を始めていた。
ストレッチで筋肉をほぐしたあと一葉と組んで柔軟。
ランニングにダッシュ、腕立て伏せ、腹筋、スクワット、組手と続いていく。
早朝の鍛錬を終えると、裏山を駆け巡り入り山菜、キノコ、果実などを採集する。
春は竹の子、秋はマッタケや栗など自然の恵みが豊富に取れる。
今日は栗がたくさん取れたので、大好物の栗ご飯にありつけそうだ。
丼で5杯は軽くいける。
双葉は大食漢だが小柄で体重を感じさせないぐらい身が軽い。
特筆すべきは素早さ!
修行を始めて数年後には速さにますます磨きがかかり、俊敏さだけなら師範代補佐の一葉を凌駕するほどまでになっていた。
13歳になったばかりの双葉は、明日東風流の免許皆伝を認めてもらうための最終試験を受ける。
異例の早さだ。姉の一葉が先日免許皆伝の最年少記録を塗り替えたのが15歳。
それを更に2年も上回る。
双葉の桁違いの才能が日々の鍛錬で開花して認められたのだ。
最終試験の相手は一葉! 相手にとって不足はない。
今まで申し合いで一度も勝ったことがないが、不思議と気負いはない。
一葉と双葉は静かに対峙している。
互いに一礼を済ませて、「始め!」と号令がかかると身構えた。
二人はじわじわと間合いをつめていく。
間合いの長い一葉から仕掛けて、拳と蹴りを繰り出す。
双葉は受けずにかわす。受けてはだめなのだ。
受けたとたん動きが止まるからだ。
双葉は一気に間合いをつめ、拳を放つ。
一葉は逆にかわさずに受けて双葉の動きを止めようとすると、双葉が間合いをとる。
一瞬も気が抜けない攻防が続く。
お互いに東風流の秘技を使えば返し技を食らうので使えない。
膠着状態になるのを嫌ったのは双葉の方だ。
このままだと体格差が大きく、じり貧になり押し切られてしまう。
いつもの負けパターンだ。
だが双葉はこの日のためのとっておきの新技を編み出していた。
大きく息を吸い込むと軽やかにステップを刻み始める。
さながら本気になったブルース・リーの如く!
ゆっくりと反時計回りに一葉の周りを回っていく。
速度に変化をつけながらも徐々に速度を上げていく。
背を見せるわけにいかない一葉は双葉に合わせて回転せざるを得ない。
双葉の残像が残るぐらいの速度に達したとき、
今だ! 双葉は反転し、時計回りに動きを変える。
この瞬間、一葉の視界から双葉が消えた。
勝負あった!
双葉が一葉の後ろを取ったのだ。ここからの逆転はありえない。
「そこまで!」
審判役の師範代、範馬勇が声をかけると、「参りました。見事です、双葉」と一葉。
「ありがとうございました!姉上。これで1勝45敗でございます」
「最後に勝つことにこそ意味があるのだ。だから次は私が勝つよ」
「ならば、もう姉上とは戦いませぬ」
「双葉!それはずるくないか?」
「姉上より格上である立場を維持するためにはやむを得ぬかと存じます」
「なんと胸...器量の小さきことよな!」
「今胸といったな?いったよな⁈ ムキー!?」半分よこせと一葉の乳房につかみかかる双葉。
「それぐらいにしておくがよい!二人ともこちらに」と東風流女当主・東風雪風。
「双葉、今より免許皆伝とし、師範代補佐筆頭に任命する。
一葉を補佐次席とする」
一葉と双葉は裏山の奥にある露天の秘湯につかっている。
万が一の映像化に備えての配慮である。
一葉は15歳とは思えないぐらい発育が良く、見事なプロポーションを
月明りの中で惜しげもなくさらしている。
満場一致でサービスシーンと認定された⁉
双葉は13歳とは思えないぐらい発育が遅く、マオマ〇並みの絶壁とセーラームー〇並みにオケツが小さい。
一部のロリマニアには受けても決して認定はされそうにない。
「双葉、今日のあの技は見事だったな。技の名は何と言う?」
「敢えて名付けるなら...〖つられて回れば思うつぼ!〗」
「それはネタばれの上センスが悪いぞ⁉
さておき、今後はどうするつもりじゃ?」
「しばらく武者修行の旅に出ようかと考えておりまする」
不意に湯けむりの向こう側から声がした。
「儂が鍛えてやってもいいぞ」
この人物は2,3日前から東風家に居候として逗留していて
名は確か林石龍、明国からきたという。
飄々とした風貌で年齢不詳、40代にも60代にも見える。
東風流武術の噂を聞いて道場破りに来たのだ。
東風流は道場破り上等で通っている。
小柄な道場破りを見て、かなり腕の立つ門弟の一人が舐め切って相手をしたところ瞬殺された。
女当主の東風雪風は次は師範代、範馬勇作に相手をしなさいと命じた。
異例の出来事に門弟たちがざわつく。
この数年来なかったことである。
二人の体格差は倍近くある。
一礼の後、道場破りは不敵に笑い、右手の小指を立てた。
つまり小指一本で相手をするというのだ。
師範代、範馬勇作は相手の意図を察するとみるみるうちに顔面が紅潮する。
一切の手加減なしの拳を道場破りの顔面目掛けて繰り出す。
道場破りは下がらず前に出てかわすと二人の動きが止まった。
数秒後、師範代の範馬勇作は床に倒れて口から泡を吹いて悶絶していた。
「凄まじい腕前だな。次は我との申し合いを所望ならお相手いたそう」
「いや、それには及ばぬ。その代わりといってはなんだが、しばらくの間こちらで
お世話になりたいのだが?」
「よかろう。好きなだけ滞在するがよい」
その時から道場破り林石龍は東風家に居候を決め込んだ。
三食昼寝付き、夜は秘湯で晩酌を堪能する毎日。
今日も例にもれず、湯につかり晩酌としゃれこんでいると、湯けむりの向こうから
声がする。
お!これはあわよくば目の保養ができるかも⁈
湯けむりが少し薄れて目に入ったのは...引き締まったオケツと更地のような胸!
チッ、小僧か、残念ながらハズレじゃ。
いやいや待て待て、もう一人いるような?
どれどれ...おぉ‼ 一葉の見事な裸体に目がくらんだ⁈
だが、この千載一遇のチャンスをむざむざ見逃す林石龍ではない!
すかさず最高奥義を発動する‼
見た光景を瞬間に記憶して脳裏に刻み込み、望みの部位の拡大すら可能という神業!
その名もズバリ〖ズリネタお宝永久保存〗
眼福!眼福‼ 寿命が5年ほど伸びたやもしれぬな。
絶好の出歯亀穴場を見つけたからには、もうしばらく...そう、3年ぐらいは居候をやめるわけにはいかぬ。
良い思案が浮かんだぞ!
―以下に続く




