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第12話 模擬戦闘と冒険者組合


 「デスト君、私は目が悪くなったようじゃ。これを読んでくれたまえ。」

 「えっ、支部長(ブランチマネージャー)そんな歳でしたっけ?えーっと...支部長(ブランチマネージャー)、どうやら儂も目がおかしくなったようですぜ。Lvもステータスも桁がおかしい。」

 「イレーナ君、これは【投影石】が壊れているのかね?それなら新しいものを発注するが。」

 「いえ、【投影石】に異常がないことは確認済みです。」

 「そうか...」

 「...えーと、僕はどうしたら良いのでしょうか。」


 先程まで、目がおかしくなったとか言ってた人たちが、一斉にこちらを向いた。その後数秒、3人が目で会話を交わしてから、やっと質問に答えてくれた。


 「あぁ、すまんな。先程イレーナ君からも紹介されたが、改めて。私は冒険者組合(ギルド)ワーライド支部の支部長(ブランチマネージャー)のボーレドじゃ。君には今から模擬戦闘(イミテーションバトル)をしてもらおうと思っておる。対戦相手はデスト君じゃ。」

 「ッ、ちょっ、支部長(ブランチマネージャー)何考えてるんですか。このステータスが本物なら、確実に儂がおっ死んじまうでしょうが。」

 「頼むよ、デスト君。見てみないことにはわからんじゃろ。特別手当も出すぞ。」

 「えっ、本当ですかい。わかりました。やりましょう。おい小僧、手加減はせんからな。」


 えーと、どうしてこうなったんだ?やっぱりあのステータスは不審がられるのか。まぁ、デスト先生と久しぶりに模擬戦ができるのか。これはこれでよかったのかも...


 「もちろんです。こちらも本気でやらせてもらいます。」

 「...い、いや、お前さんは本気でやらんでくれ。」

 「...わかりました。ある程度抑えます。」


 「抑えるじゃぁ、困るんだがなぁー」などと聞こえたが、知らないふりをしておいた。今いるのは検査室、6畳程の部屋だ。こんなところでは、模擬戦闘(イミテーションバトル)などできるはずもないので、場所を移動する。

 やって来たのは、冒険者組合(ギルド)の裏に隣接された室内闘技場だ。ここは、組合(ギルド)職員に許可を貰った者のみが使用できる場所だ。よって、今回の試合の観戦者は、イレーナさんとボーレドさんのみだ。

 模擬戦闘(イミテーションバトル)。それは、その名の通り模擬戦闘だ。細かなルールは、その場その場で決めることが多いが、


 ・相手を死に至らしめる攻撃をしない

 ・回復不可能な攻撃をしない

 ・両者同意のもとで行う

 

この3つが絶対順守の掟となっている。だから、デスト先生が「おっ死んじまう」なんて言っていたのは冗談だ。今回は、力を見たいということなので、結構強めの魔法を使おうと思っている。武術はデスト先生に教わったものがほとんどなので、魔法の方が効果的だろう。


 「両者距離をとれ、魔法武器、魔法防具の使用は禁止。スキルの使用、自己の魔法での身体強化、能力強化は可じゃ。制限時間は10分。準備は良いか?」


 そう、審判を引き受けたボーレドさんが言うと、デスト先生が頷いた。それを見て、僕も同じ様に頷く。

 この闘技場は縦横30ⅿの正方形だ。デスト先生と僕の距離は約10ⅿ。この間合いを一気に詰めて、攻撃するのは容易い。しかしそれはデスト先生も同じだ。先生に武術を習っていた時に何度か模擬戦をしたが、その時のスピードはなかなかのものだった。

 さっき鑑定したら、あれから先生のLvやスキルは変わっていないようだが、あの頃は手加減をしていた可能性もあるし、警戒はしておかないとな。とりあえず、少し強めの魔法で攻撃してみるのがいいかな。


 「それでは、始め。」


 ボーレドさんの合図と同時に、僕は魔法を発動させる。


 「闇よ、炎よ、我が前に集い、一つと成りて、敵を撃て、十二段魔法〘暗黒猛炎ダークストロングフレイム〙」

「何ッ」

 「何じゃと」

 「そんな、ありえない。」


 ん?...しまった。少し強めのとか思ってこの魔法にしたけど、確かこの魔法は天蝎を降参させた時の魔法だったけ。さすがに強めにしすぎたかな。デスト先生大丈夫かな。かなり加減はしたし、先生も直撃はしていなかったから、問題ないと思うけど。

 ボォォォォ ゴォォォォ

 まだ、燃えてるよ。やり過ぎちゃったけど、このくらいなら、何とかごまかせるかな?


 「デスト君、無事か。」

 「アッチー。何すか今の。あんな魔法見たことねえぞ。」

 「私も初めて見ました。」

 「わしも初めて見たのぉ。それより、大丈夫なのかね?」

 「え、えぇ。かなり痛みますけど大丈夫です。ちょっと火傷をした程度ですから。」

 「それならいいんじゃが。イレーナ君、救護班の者を連れてきてくれ。」

 「わ、分かりました。」


 やっぱりやり過ぎちゃったかな。ここに来た時から思ってたけど、僕のことほったらかし過ぎなんじゃないかな。3人で話してばっかりだし。おっと、それよりも。


 「すいません。やり過ぎましたか?あと、イレーナさん、救護の方は呼ばなくて結構です。「光よ、傷を受けし者に、清らかなる癒しを 五段魔法〘治癒(ヒーリング)〙」」

 「あぁ、悪いな...じゃなくて、さっきのは何だ?」

 「儂にもぜひ教えてくれ。」


 デスト先生とボーレドさんが、まるで子供のような眼差しで、こちらを見ている。その奥では、イレーナさんが呆気にとられたような顔をしていた。


 「えぇーと、先程の魔法は、〘暗黒猛炎ダークネスストロングフレイム〙と言って、闇属性の〘暗黒(ダークネス)〙と、火属性の〘猛炎(ストロングフレイム)〙を無属性の〘合成(シンセシス)〙で合体させた魔法です。」

 「なるほど。複数の属性、更に無属性まで適性がないといかんということか。」

 「まぁ、そうなりますかね。」


 ん、まだ何か聞きたいことがあるのかな。皆こっちを見てる。じろじろ見られるのとか好きじゃないんだよな。


 「あのー、何か?」

 「あッ、いや、君が使うことのできる魔法は、さっきのが最高なのかね?」

 「いえ、先程のは、十二段魔法でしたので、それより上位の魔法を使うこともできます。」

 

 まるで時が止まったかのように、3人が動かなくなった。3人とも口を開けたままだ。はぁー、しまった。複数の適性を持っているのも珍しいのに、十二段魔法は調子に乗り過ぎた。その上、これ以上のものも使えると言ってしまった...これはまずいかもしれないな。


 「さ、さっきの魔法以上のものも使えるのかね?」

 「は、はい。一応は。」

 

それを聞き終わると、3人が何かを話し始めた。5分ほど経つとボーレドさんが口を開いた。


 「ライル君、君には、冒険者組合(ギルド)本部に行ってもらいたいのだが、どうかね。」

 「えっと、それは僕は冒険者登録ができないということですか?」

 「いや、そうではないのだが、ワーライド支部(うち)で決めるのは何というか...躊躇われるのだよ。君のような人材は初めてじゃ。だから、一緒に本部へ行ってはくれないか?」

 

 なるほど。そうきたか。まぁ、冒険者登録は検問を素早く通過することと、魔獣の買い取りをしてもらうことが目的だったし、いいかな。それに、ボーレドさんも来てくれるなら、検問所も問題ないだろう。


 「わかりました。で、本部はどこにあるのですか?」

 「あぁ、本部は王都にある。王都は広いので、組合(ギルド)が3つあってのぉ。その内の1つが本部となっておる。ただ、本部と言ってもエイヴィスティン王国の冒険者組合(ギルド)本部じゃ。冒険者組合(ギルド)は国を超えての組織じゃ。各国々に本部がある。全世界の冒険者組合(ギルド)の本部というものは存在しない。これは、各国々の冒険者組合(ギルド)によって、決まりが違うということもあるからじゃ。だから、他国に行く時は気を付けといた方が良い。おっと、すまん。話が逸れたの。」

 「あぁ、大丈夫ですよ。では、王都に行けば良いのですね?」

 「ああ、そうじゃ。君と、儂、あとは護衛を幾人かつけようと思っておるのじゃが、どうかね?」

 「それは、そちらで決めともらって構いませんが、いつ頃出発できるのでしょうか?明日には、ここを発つ予定なのですが。」

 「あ、明日じゃと!それは、難しいのぉ...ならば、こうしよう。儂は、準備ができ次第王都に向かう。君は先に王都へ向かっておいてくれ。馬車は必要か?」

 「いえ、必要ありません。それでは、王都で合流しましょう。15日後でどうでしょう?」

 「こちらは問題ないが、君は大丈夫なのかね。」

 「はい。では、また15日後に。」


 そう言い終わると、僕は冒険者組合(ギルド)を出た。


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