第11話 新たな街と冒険者登録
家を出てから3日が経った。普通、今回のような長距離を移動する場合、貴族は馬車などを用いる。さらに、爵位の高い者になれば、当然護衛もつける。しかし僕は、父や皆の勧めを断って護衛なしで、馬車もなしを選択した。理由は簡単だ。自分の身は自分で守るほうが、安全だからだ。馬車を断ったのは、魔法を使って自分で移動したほうが早いからだ。
そんなわけで、馬車で20日の道のりの王都までを、3日で3分の2程進んでいる。アドルクス領である、エイヴィスティン王国の西方の街、屋敷のあるウェストーナから出発し、今までに3つの街を通ってきた。と言っても、街の中で宿泊したのは1つだけだ。ウェストーナと王都の中央に位置するワーライド。エイヴィスティン王国の中で5番目に大きい街だ。この街に寄った理由は幾つかある。1つ目は、【投影石】がどの程度の物なのかの確認。2つ目は、物品の市場価格の調査。3つ目は、冒険者組合への登録だ。
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ワーライドの検問所の【投影石】は、父に説明してもらった通り、[名前][年齢][種族][職業][Lv]が分かる物だった。しかし、父の説明では〖隠蔽Ⅲ〗までなら無効化。ということだったが、ここの【投影石】は〖隠蔽Ⅳ〗まで無効化できるそうだ。街の大きさによって決まっているらしい。王都では〖隠蔽Ⅴ〗まで、無効化できる【投影石】が設置されているそうだ。やはり、〖隠蔽Ⅹ〗を無効化できるのは、〖鑑定Ⅹ〗と本物の【投影石】のみのようだ。
検問所を難なく通過した僕は、次に市場価格、物価の調査だ。ウェストーナでの価格とどこも同じとは考えにくい。そこで今後、ぼったくりなどの被害に合わないために、調査をすることにしたのだ。エイヴィスティン王国の通貨は下から、銭貨、鉄貨、青銅貨、銅貨、銀貨、金貨、白金貨、龍金貨、王金貨、神金貨がある。数が多すぎないか?間違えたりしないか?と思うかもしれないが、それぞれ流通頻度や特徴が異なるので、決してそんなことはない。ちなみに、これらの特徴は、
・銭貨 赤銅色 直径2㎝程の歪な形 花の紋様
・鉄貨 鉛色 直径2㎝程の歪な形 鳥の紋様
・青銅貨 濃藍 直径2㎝程の歪な形 双剣の紋様
・銅貨 銅色 直径2.5㎝の円形 表/王国印の紋様 裏/船の紋様
・銀貨 銀色 直径2.5㎝の円形 表/王国印の紋様 裏/国花の紋様
・金貨 金色 直径3㎝の円形 表/王国印の紋様 裏/国鳥の紋様
・白金貨 象牙色 直径3㎝の円形 表/王国印の紋様 裏/王城の紋様
・王金貨 若芽色 直径3.5㎝の円形 表/初代国王の肖像 裏/王国印の紋様
・龍金貨 鉄色 直径3.5㎝の円形 表/龍の紋様 裏/盾の紋様
・神金貨 月白 直径4㎝の円形 表/神の紋様 裏/天使の紋様
こんな感じだ。だがこの世界は、物価の安い物と高い物の差が激しい。もちろん、季節や場所によっても物価が変わる。普通使われるのは金貨までで、高額取引では、白金貨以上も使われることがある。しかし、神金貨はほとんど使われることはない。ちなみに、ウェストーナとワーライドの物価はほとんど変わらなかった。あまり物価が変わっていないことを確認し、次に冒険者組合へと向かった。
冒険者組合。それは、様々な依頼を引き受け、冒険者を派遣する世界最大級の組織だ。登録前の説明によると、依頼は雑用から、魔物(魔獣)討伐まで、何でもある。しかし、引き受けることのできる依頼は、冒険者ランクによって決まっている。冒険者ランクは、その人物がどれほどの腕前なのか、どのような性格なのかを検査し、決定する。上から、SS、S、A、B、C、D、Eランクだ。登録時に決定したランクから、上がるためには試験を受ける必要がある。普通、一般的なLv、HP、MP、ATKを持っていれば、Dランクからのスタートだ。スキルや魔法適性が多いほど、ランクが上がる。驚いたことに、登録は複数できるそうで、2つ,3つ登録している人もいるそうだ。
今回僕は、無属性の上級魔法である十七段魔法〘身体偽造〙を発動し、大人の姿になってやって来た。ちなみに、エイヴィスティン王国の成人は17歳なので、17歳の姿だ。この街に来るまで、魔獣に何度か襲われたので、用心のために【制御腕輪】の<能力制限>をレベル3まで解放していた。ついでに、そのまま登録しようと思いつき、子供(7歳)でこのステータスはどうかとも思ったので、ワーライドの検問所を通る前に〘身体偽造〙を発動したというわけだ。ついでに、貴族であることも隠した。そのおかげで、面倒ごとになることもなく、検問所を通ることができた。
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そんなわけで僕は、冒険者組合でいつもと違う姿で、登録検査を受けていた。
「私は、2等検査官のイレーナです。今回、あなたの登録検査の検査官を務めます。よろしくお願いします。」
「僕は、ライル...です。よろしくお願いします。」
「ライルさん。では初めに、あなたの鑑定をさせていただきます。よろしいですね。」
「はい。よろしくお願いします。」
【投影石】を持った検査官が、僕のステータスを調べ始めて間もなく、笑顔だった顔が青ざめていった。
「あのー、どうかしましたかイレーナさん。」
僕の問いかけによって、10数秒固まっていた検査官が慌てて口を動かすが、声になっていない。
「-------------」
「ちょっと、落ち着いてください。」
検査官が大きく深呼吸するとようやく、
「えっと、ライルさん、いえ、ライル様。少しお待ちいただいてもよろしいでしょうか。」
「あっ、はい。それは構いませんが、どうかしましたか。ものすごく焦っていたようでしたが。」
「いっ、いえ、何でもありません。それでは少々お待ちください。」
なぜ、敬称がさんではなく、様になったんだろう。まぁ、それは良いとして、どうして待たされているんだろう。次は面接とかなんだろうか。
それにしても、検査官焦っていたなー。何かまずかったかな。レベル3までしか開放してないからそこまでではないはずだけど。まぁ、なんにしても、名前をライルだけに変えといてよかったな。家に迷惑はかけられないし。
しばらくすると、イレーナさんと見知らぬお爺さんと、見知った顔のおじさんがやって来た。
「えーとっ、お前か、ありえねぇようなステータスを映したっていう新人は。」
「ほーう、あまりそんな風には見えんが、本当なのかねイレーナ君。」
「本当ですよ、支部長。ほら、これ見てください。」
3人の会話から、このお爺さんがここの責任者ということはわかったが、なぜここにあの人がいるんだ?僕に武術を教えてくれたデスト先生。たしか先生は、ATIの2等担当官。ここには関係ないんじゃ。
「よう、お前がライルか。ライルっつーう名前の奴ぁ、皆そうなのかー。」
「これ、デスト。そう、がっつくんじゃない。すまんなライル君。デストは優秀ではあるじゃがなぁ...」
「ちょっ、支部長そのあとは何なんだ。」
「まぁまぁ、デストさん。そう熱くならずに。ライル様、申し訳ありません。」
「いいですよ。それより、こちらの方々は?」
「あぁ、すいません。こちらは、冒険者組合ワーライド支部支部長のボーレドさん。こちらが、冒険者育成機関武術指導1等担当官のデストさんです。」
えッ、デスト先生1等担当官ということは、昇進したのか。あっと、黙っていたら怪しまれるな。
「どうして、支部長さんが、いらっしゃったのですか。」
「あっ、そうでした。支部長、こちらを。」
イレーナさんが僕のステータスを映した【投影石】を支部長に手渡した。
「ムッ、これは。」




