後片付け
配信が終わり、僕たちは余った犬小屋を片付けていた。
どうやら『ホイール・オブ・フォーチュン』のメンバー達は買った犬小屋を少し改良して日本での活動拠点とするらしい。
完成はまだまだ先だけど、なぜかすごく心待ちにしているようだった。
「この大きな犬小屋はどうしよう?」
「がうっ」
「えっ、トカゲ君がどうにかできるの?」
「がうがう」
「うん、それじゃあよろしくね」
「がふっ!」
トカゲ君たちが素早く自分たちで作った犬小屋を運んでいた。
それとは別に難航したのはミィちゃんの鳥の巣もとい犬小屋だった。
運ぶのはどうにでもなるのだが、探索者の面々がやたら食いついていた。
「この頑丈さ……、防具として使えそう」
「なんでこんなに強固なんだ」
「鉄並の硬さと軽さを両立させるなんて……」
「うむうむ、みんなよくわかってるのだ! これは私がつい殴ってしまっても変わらない固さなのだ」
すっかり機嫌を良くしたミィちゃんがどこから持ってきたのか、肉を食べながら言う。
家の側には『明けの雫』が作った犬小屋が設置され、ゴブ君がこっそり隠れて空調機能を取り付けていた。
こうして犬小屋大会は無事に終わりを迎えるのだった。
「柚月さん、ルシルさんが作ったダンジョンの調査、忘れてないですよね?」
「も、もちろん忘れてないですよ。ま、また後日行きますね」
「よろしくお願いします」
ダンジョン探索……か。
何か用意するものってあるのかな?
上位探索者のユキさんでも数時間かかるから休みのうちしかできないよね。
「リトルテイマー、肉を用意したよ。少しは私たちも良いところを見せないとね」
戻ってきたらミーシャさんが大量の肉を持ってやってくる。
「肉なのだ!?」
目を輝かせるミィちゃんやトカゲ君たち。
「えぇ、あなたたちの打ち上げといったらこれでしょ? いくらでも追加注文できるから好きなだけ食べると良いわよ。ちゃんとバーベキューセットも用意してるから」
「お前は神なのだ! 特別にミィちゃん様と呼ぶことを許すのだ!」
一瞬のうちにミーシャさんの評価が鰻登りに上がって行った。
「ありがとう、ミィちゃん様。ついでにリトルテイマーの説得に協力してくれないかしら? 成功したら一生お肉を食べ放題にしてあげるわよ?」
「お肉食べ放題……」
ミィちゃんの心が揺らいでいる。
しかし、辛うじて踏みとどまっていた。
「だ、ダメなのだ。八代は売れないのだ」
「残念ね。(でも、この子なら簡単に落とせそうね。方針転換させましょうか)」
ミーシャさんはニヤリ微笑んで仲間たちに合図を送る。
すると、ミィちゃんの前にたくさんのお肉が置かれていた。
「今日はミィちゃん様と私の友好記念ね。どんどん食べてね。まだまだ下っ端に持ってこさせるから」
「誰が下っ端だ!」
「リーダーのことよ?」
「下っ端リーダーは肉係なのだ」
「ちっがーう!! 俺は探索者だ!」
「探索者のお肉なのだ?」
「それだと俺が食われることになるぞ?」
「うーん、人間は不味そうなのだ。八代が買ってきてくれるお肉の方が美味しいのだ!」
「あらっ、リトルテイマーとずいぶん仲良しなのね」
「もちろんなのだ! 八代は私をここまで育ててくれた恩人なのだ!」
ミーシャさんの目が一瞬光ったような気がした。
しかし、すぐに笑顔で話しかける。
「ちなみに他にはどんな特別なことをしてもらったのかしら?」
「特別? 八代は優しいのだ!」
「それで?」
「八代は強いのだ!」
「強いの? とてもそうは見えなかったけど」
「もちろんなのだ! 私は一回も勝ったことないのだ」
「(ちょっと待って!? そんな情報あったかしら?)」
「(いや、初耳だ、お嬢)」
「(これは柚月八代の警戒度を更に挙げる必要があるわね。私たちだけじゃ太刀打ちできないわよ)」
「いずれ私が勝つのだ! ババ抜きで」
ミィちゃんの最後の言葉は慌てて相談し合っていたミーシャさんたちの耳には入らなかった。
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