お昼寝
「お兄ちゃん、ぬくぬくだねー」
「うん、気持ちいいね」
僕とティナは自然公園の小高い原っぱで砂がつくのも気にせずに寝転がっていた。
「でも、本当にこんなので良かったの?」
「十分すぎるの。お日様ポカポカ美味しいの」
「これでいいならまた一緒にこようね」
「嬉しいの。約束なの」
ここ最近、バタバタした日々だったのでこれだけゆっくりとした生活はいつぶりだろう、と思えてくる。
心地よい陽気に当たっていると自然とまぶたは重くなっていき、気がつくと僕は眠りについていた。
◇◇◇
次に僕が目を覚ましたのは日が沈み始め、空がオレンジ色に変わり始めたタイミングだった。
「あ、あれ? 僕、寝ちゃってた?」
「おはよう、お兄ちゃん」
ティナが覗き込むように僕を見ていた。
「おはよう。ごめんね、せっかく二人で出かけたのに」
「ううん、とっても楽しかったの」
ティナは満足してくれたようで満面の笑みを見せてくれる。
「それじゃあ天瀬さんのところへ行こっか」
「うん、なの!」
◇◇◇
天瀬さんの家に着くと僕は呼び鈴を鳴らす。
「はーい」
「天瀬さん、いますか?」
「いませーん!」
「いないのですね」
いないなら仕方ないなと、僕は自宅へ戻ろうとする。
「嘘です嘘です、ちゃんといますよ!」
慌てて天瀬さんが家から出てくる。
「あっ、おられたのですね。よかった」
「ど、どうしたのですか、今日は……」
キョロキョロと周りを見ながら聞いてくる。
「ミィちゃんさんはいないのですね」
「えぇ、今日はティナとお出かけでしたので」
ティナは眠たそうにまぶたを擦りながら僕の胸ポケットから顔だけ出す。
「そうなのですね。今日はどうされたのですか?」
「ちょっとパーティーを結成しようと思いまして、その相談に乗っていただきたいのですよ」
「そ、それじゃあ探索者に!?」
「いえ、ダンジョンに入るつもりはないのですよ。ただ最近勧誘がすごくて……」
「あっ……。そ、それは申し訳ありません」
探索者の迷惑は組合のせいでもある。
しかも相手は絶対に怒らせてはいけない要注意人物である。
天瀬さんはガクガクと震えながら顔色を青くして謝る。
「大丈夫ですよ、配信してるとどうしても出てくる問題ですもんね」
「それでも私がそういうのから柚月さんを守るためにここに派遣させてるのですから……」
「それならパーティーの組み方と、あと今度の配信で協力してもらいたいことがあるんですよ。いいですか?」
「もちろんですよ。私にできることがあれば何でも言ってください」
「良かったです。やって欲しいことは僕たちの作った犬小屋でどれか一番いいかという判断です。相対的に見てくれるのは 天瀬さんしかいないと思ったんですよ」
「あの、それってもしかして最近柚月さんが飼われたというワンちゃんですか?」
「そうです。 まるくて人なつっこくてとても可愛いんですよ」
「あ、あははははっ……。Aランクじゃ無ければ……ですね」
天瀬さんは苦笑を浮かべていた。
その小声で言った言葉は僕の耳には届かなかった。
「天瀬さんの許可がもらえてよかったです。 あとはパーティーの組み方なんですけれども……」
「そちらは私が申請しておきますのでパーティー名とメンバーが分かったら言っていただけますか?」
「今のところは僕とミィちゃん、ティナとルシル、あとはゴブ君やとトカゲくん達と……」
「魔物の方は結構ですよ」
「そうなると僕だけかな? あっ、違った。参謀に椎が参加してくれます」
「椎さんと言いますと?」
「ユキさんの妹で僕よりもダンジョンのことに詳しいんです」
「柚月さんより知らない人を見つけるのは難しいですね。でも、柚月さんに一人でも常識を教えてくれる人が増えるのはありがたいです」
「とりあえずこの2人ですね」
「まあ探索者避けはちょうどいいかもしれませんね。わかりました。あとはパーティー名が決まりましたら言ってください。申請しておきます」
「ありがとうございます」
「あと、犬小屋対決でできたら地球を吹っ飛ばさないでいただけるとありがたいかな……と」
「あははっ、そんなことできるわけないじゃないですか。天瀬さんも冗談がうまいですね」
僕は笑い声を上げていたが、天瀬さんの表情は真剣そのものだった。
「くれぐれも、よろしくお願いします」
「わ、わかりました」
天瀬さんの迫力に圧させて僕は頷いてしまう。
するとそのタイミングで天瀬さんのスマホが鳴っていた。
「失礼しますね」
電話に出る天瀬さん。
しばらくは何やら大声を出していたもののガックリとした様子でやってくる。
「その……、柚月さん。申し訳ないのですけど」
「どうかされましたか?」
「犬小屋対決、ですけど探索者の中で何人か参加したい人がいるみたいで、当日はコラボ、ということで数組参加させていただけないでしょうか?」
「えっと、僕の方はもちろん構いませんけど、良いのですか? ただわたがしの家を作るだけの配信ですよ?」
「もちろんです。ありがとうございます!!」
天瀬さんが笑顔を見せてくる。
そして、すぐさまスマホで連絡を取り合っていた。
「参加メンバーがわかりました。アメリカの探索者チーム『ホイール・オブ・フォーチュン』と日本の『月夜の光』、『明けの雫』とあとはユキさんですね」
「えっと、結構多いのですね? しかも人気の人ばかり……」
「だ、ダメでしょうか?」
「構いませんけど、本当にただわたがしの家を作るだけなのですよ?」
「みんなそれだけ柚月さんとお近づきになりたいのですよ。一応それ以上はこちらで断っておきますので――」
まぁ、半分はわかってる人だから良いかな。
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