第八話 奴隷商人
朝起きて、朝食を取り城の最上階へと行った。今日は休みなので、王都を見ようと思ってとりあえず上から見ることにした。
上から見る王都は綺麗であり、まだ朝なのに人がたくさん出ている。市場であろう場所には、数えきれないほどいる。
チェレンコフに街に出たいと言ったが「街の中では何が起こるか分かりませんし、護衛が付くようになっているので周りの注目を集めることになりますが?」と言われてしまった。
現在、城外に出る時は護衛が付くようになっている。それと俺は知らない人に見られるのにあまり好きじゃない。誰かに見られていると調子が狂うからだ。
しかし、街中に行きたいのは本当であり、この世界の物を見てみたいからである。
結果的に好奇心が勝ってしまい、街中に行くことにした。護衛はチェレンコフと一般兵が四人、計五人である。他のところは二人とかなんだが、俺のところはアイリスがいないので、そのための変わりだそう。護衛が多いことは、それだけ俺を守ってくれるていうことである。
街の中に行く際チェレンコフから「欲しいものがあったら言ってください。買いますので」と言っていた。
その金は、おそらく税金だろう。まぁ税金が市民に帰って来ているなら、まだいいと思うが・・・
そんなことを考え街中を探索する。周りを見てみると、元の世界でもあったものが多く存在していた。見たことのない物は、ほとんどが工芸品であった。今回見に来たのは、新しい武器が欲しいからである。俺の今の腕では、一応振れるだろうが、翔のような動きは不可能である。しかし、翔を見ていて分かった。俺は剣が欲しいと。
そのため、目に入った武器屋には片っ端から入っていった。欲しい剣に厳しい条件なんて付いていない。ただ両刃の剣でなければいい。両刃の場合、剣を使ったことない俺だと、怪我するのがオチである。だったら、片刃の方がいいと思った。刀が最初に思いついたが、西洋の剣でも片刃の剣はあると思うので、一応見てみたかった。
しかし、三店舗回ったのだが全く見つからない。城の武器庫から取ってくれば早い話なのだが、自分で選んで新しい物を買いたかったからである。
五店舗目でやっと欲しい物があった。重量は4キロから5キロほど、耐久性も高そうだった。しかしこの店、置いてあるのは見本であり、注文を受けてから作りはじめるところだった。
作成には、三日はかかるらしく、それまで短剣一本で頑張れということか。
目的は達成したので城に帰ろうと思う。
店から出て、皆の後を付いていく。帰り道が分からなくなり、先行してもらっているのである。途中気になる物があり、列から抜けてしまった。戻ろうとして、フラフラ歩いていると、サーカス場のようなところに出てしまった。しかしサーカス場ではない別の物であると思う。
中が気になるのでテントの中を見た。
その中にはいた。いや、あったというべきか、居たのは檻の中で鎖で繋がれた獣人達であった。衛生環境はいいとは言えないが、ひどいわけでもない。俺がいることに気がついた獣人は、ほとんどがぼ~としており、怯えているのは片手で数えるしかいなかった。
その光景に、動揺していると後ろから足音が聞こえた。
「おやおや、子供がこんなところにいてはダメでしょう。刺激が強すぎますからね。おっと、同情はしなくていいですよ。なぜならあれは物ですから」
声の主は、160センチぐらいの小太りなおじさんだった。服はスーツを着ており眼鏡をかけていた。
「これは何なんだ?」
分かってはいるが信じたくない。しかもこのサーカス場モドキはかなり広範囲に展開しており、これが非合法だった場合、すぐに見つかって逮捕のはずだ。
「見たら分かるでしょう?奴隷ですよ。この世界では当たり前ですがね。知らないのも当然でしょう、だって貴方はこの世界に召喚されて日が浅いですから」
「・・・何で俺のことを知っている」
「商人の情報網を舐めないほうがいいですよ」
そう言ってこいつは不気味な笑みを浮かべていた。
「おっと失礼。いいことがあるとなってしまう癖でね。何か困ったことがあったらここに来なさい。そうしたら取引次第では助けてあげましょう」
「今、俺が困ってるように見えるか?」
「ええ、貴方は今この国が信用できるか分からないのでしょう。言ってしまいますが、貴方にとってこの国は信用できませんよ。逃亡するのがいいでしょう」
「何で俺を助けようとする?」
こういうパターンには絶対裏があると思うからな。一応質問してみる。国と俺の亀裂を狙っているのだろう。商人を信用してはいけないのだ。
「なあに簡単なことですよ。貴方からは金の匂いがしますから」
なるほどね、困った時にここで買い物をしたら助けてやるってことか。うまく出来てるな。
「なるほどね、じゃあ今度金持って来るから帰り道を教えてくれないかな?」
「最初から、その考えでしたよ。あの通りを進み、次に右に曲がったら、護衛の最後尾に着きますよ。そうそう、走らなければ遅れますよ」
不快な笑みを浮かべながら商人が魔法で地図を出して教えてくれた。
その言葉を聞き、ダッシュでチェレンコフのところに向かって行った。
結局間に合い、城の中に帰ってこれた。万が一あの奴隷商人の言葉が本当のことを言っている場合も考えておくとしよう。
図書室の帰りの時、王が喋っていたことも気がかりだしな。
しかし、これをクラスメイトに話したって信じてもらえるだろうか?恐らく信じてはもらえないだろう。皆この国が素晴らしいってなってるし、翔はジョークだと思われる。しかも大人数の移動は危険が伴う。だから俺だけ脱走するというのもな~いや待て、話したら周りに兵士がいるから、ばれるだろう。つまり必然的に一人での逃亡が絶対という訳だ。護衛は恐らく監視員的な存在だろう。まぁ可能性の話だ。
考えても今はどうしようもないので飯を食べて寝ることにした。深く考え過ぎたせいか頭がいたい。早く寝よう。
1500とかで終わるつもりが2000とかいってた。一応タイトル回収?はしてると思います。
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追記:ここまで読んでくれてありがとう!