一話 はじまりの事件
初!投稿です。何かアドバイスなど下さると嬉しいです。
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〈……続いて、今日のニュースです。今日午前、上丹江神社にて、神主の木更津 菫(きさらづ すみれ)さん86歳が死亡されているのが発見されました。死因は今のところ不明で、警視庁は当時何があったか、現場を調べています。
……続いて、……〉
「………うそ…。」
木更津 菫は女……木更津 百合にとって、母方の祖母であった。
優しく、時に厳しく自分をしつけ、自分の確固たる信念を貫いて生きる祖母は百合の憧れであり、将来は祖母の神主という職業を継ごうと思う程だった。
百合達一家は二年前に上京してきた。母が病を患い、地元の病院に「東京の大きな病院に行った方がいい」と言われた為である。「まだ足腰が弱くはないわ!」と言い張る祖母にけおされ、上京してきた。
母の病は回復の兆しを見せており、父と自分で稼ぎながら母を支えていた。
だが、自分は両親の代わりに祖母の家……上丹江神社に、お盆・年越しと訪れていた。今年のお盆では祖母はとても元気だった。
ピロピロピロン♪ピロピロピロン♪
LINEの無料電話の着信音が鳴る。相手を見ると、自分の父であった。
「はい、もしもし」
――……ところ変わって、そして日付も二ヶ月と過ぎ、季節も秋から冬へと変わった。
水野探偵事務所に一本の依頼が入った。今日はその依頼人とご対面の日だ。他の探偵は別の依頼が入っている為、今回は社長…いや、所長である水野 涼音と、その助手である片岡 美奈が依頼人との待ち合わせ場所…カフェ「スモールベア」へと向かっていた。
水野 涼音
26歳の独身女性であり、性格は冷静沈着。5年前に探偵事務所をオープン。以来一人で探偵事務所を運営している。探偵の腕は確かなのだが、些か積極性に欠ける。
片岡 美奈
23歳、独身女性。憧れていた探偵になるべく大学卒業後、水野探偵事務所に入所。入所以来、涼音の良き助手となっているようだ。若干Sっ気がある。探偵としてはまだまだ新米。昔何かの武道をやっていたらしい。
カフェ「スモールベア」に着き、依頼人を探す。依頼人は奥の席に座っていた。
「お待たせして申し訳ありません。」
涼音がそう言って頭を下げる。
「いえ…。私も先ほど来たばかりなんですよ。」
そうはにかんで依頼人―……木更津 百合は笑った。
セルフサービスの水を戴き、百合の話に探偵二人は耳を傾ける。
「……二ヶ月くらい前に、上丹江神社の神主、木更津 菫が死因不明で亡くなったのを、覚えていませんか?」
「覚えています」と涼音が返し、美奈が「私もです」と続く。
「………木更津なんて名字、あまり見かけないから探偵さんはわかったかもしれませんが……。私は、木更津 菫の孫です。私の家は代々、上丹江神社の神主、巫女を家業としています。」
「……ちょっと疑問をお尋ねしても?」という美奈の問いに、「どうぞ」と百合は答える。
「家業を継ぐのは女性のみなんですか?」
「はい。継ぐのは女性のみで、しかも神主になる条件みたいなのがあるのはわかってるんですけど、それ以外は神主になるまで知らされてないんです。」
「………条件?」
オウム返しのように涼音が聞き返す。
「はい。まず1つ…。名前に花に関連ある文字が入っていなければならない。二つ目。女性であり、尚且つ先代より二代下の者が神主を継ぐ。」
「確かに、`百合´って花の名前でお祖母様である`菫´も花の名前ですよね。えーと、先代より二代下の者、というのは…?」
「簡単に言うと、孫から孫へ引き継ぐんです。理由はわかりませんが……。初代は自分の孫に神主を引き継がせ、その孫も孫に引き継がせ……とおこなって来たと伝えられていて、私も神主を引き継ぐ予定なんです。」
「……ところで…依頼内容は?」
「あ!…すいません、話をそらしてしまって…。あの事件のあと、警察が死因究明をしました。警察は…獣に深く咬まれたことが死因だと断定し、捜査は切り上げられました。でも、おかしいんです。確かに上丹江神社は山のふもとに存在しています。ですが、あの山の動物達は気性は荒くはなく、人間を襲うとはとても思えません。それに、傷口が…赤い血の中に、赤紫の何か…液体が乾いた後のようなものがあったんです。」
百合は恥ずかしそうに俯いたあと、そう、真剣な、どこか沈んだような声音で言った。
「祖母の死因を、調べて下さい。死因を調べて下さるならなんだってします。」
確かな、覚悟を決めたような眼差しをもってまっすぐ涼音と美奈の方を向いてそう言った。
「…わかりました、協力します。」
涼音がそう返した。
「っ! ありがとうございます!!」
百合は花が咲いたように笑った