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ヒモ貴族転生。女勇者を回避して、姫君やご令嬢ばかりの世界でゆるーく華麗に無双する  作者: 星屑ぽんぽん


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13話 新たなるヒモ計画



 冒険に出た当初の目的は二つ。

 まずはシロナたちに実戦経験を積ませること。

 次に修行で生傷の絶えないシロナのために、上級ポーションを製作することだ。

 ちなみに市販で取引きされている中で最も回復力が強いのは中級ポーションで、上級ポーションとなるとかなりレア度が高い。もちろんお値段も相当で、金貨1枚はくだらない。



「だけどさ、『ガチ百合』の回復薬の作り方っておかしいよな」


 回復薬の素材といえば植物、薬草! なんて常識をぶっ壊すのが『ガチ百合』だ。

 まずは鉄キノコをそのまま粉々に砕き、それから細かく()く。そして銀貨10枚で買えるやっすい中級ポーションにそれらを煎じるとアラ不思議、上級ポーションの出来上がり。

 まあ、【虹の巨神(ビスマス)】の体毛が回復薬になるのは設定的に不思議ではないものの、ビジュアル的に不自然ではある。


 七色の色力(いりょく)が込もった鉄キノコなら、様々な属性に対する癒し効果があるのも頷ける。逆を言えば、七属性以外の色力を伴う傷は癒せないわけだが、そこは特殊な呪いや因果律に作用する運命属性でなければ問題ないだろう。


「んん……出来栄えは、あまりよくないか……」


 七色に煌めくポーションを眺め、俺は少しだけ落胆した。

 ゲームで見ていたものはもっと綺麗だったし、おそらく効果もコレより強力だ。

 素人の俺がなんちゃって気分で作った物だから当然と言えば当然か。


「本当はユニークスキル【錬金女王】を持つあいつに任せた方が、出来の良い物が作れるけど……こればっかりは自分でやるしかない」


 なにせアイツは『ガチ百合』のサブヒロインだし、下手に接点を持ったら女勇者(しゅじんこう)がらみで面倒を引き起こしかねない。


「まあ当面はこの上級ポーションで事足りるだろう」


 さて、当初の目的とは別に、予想外の収穫があったといえば【鉄食い大羊(メタル・シープ)】だ。

 こいつの羊毛と皮は極上だし、骨は頑丈だ。

 つまり、骨でベッド基盤の骨組みを作り、皮や羊毛で布団が作れる。



「ふふふふ……『ガチ百合』の戦闘ガチ勢としてお世話になったベッドをこの手に!」


鉄食い大羊(メタル・シープ)】を素材として作れるベッド、その名も【シープベッド1号】。

 これはワガママで気分屋なヒロインたちを安眠へと誘い、次の日のメンタルを安定させる強力な効果を持っていた。

 もはやこいつなしでは『ガチ百合』をクリアできなかったと言っても過言ではない。

 

「これを手に入れるまで苦行すぎたよなあ……女大賢者ことマナリアには『今日は寝てない』とか一言だけで戦闘放棄されたし、姫騎士には『つまらないし気分が乗らない』とかでちゃんとガードしてくれないし、聖女に至っては『喉の調子が良くない』とかで聖歌の支援なしでボスに挑んだときはマジでキツかった」


 よくよく思えば、なんであんな自由奔放で見た目だけしか取り柄のない女子を引き連れてたんだろうな?

 マジでありえないわ。


 それに比べて王都にいたサポートキャラたちは優秀だったな。

 (ネル)のようにシステム上利用されるだけのモブキャラだったが、店に行けば必ずいい仕事をしてくれるし、お金さえ払えば安定してサービスを受けられた。

 特に道具職人(クラフティン)のアイテマちゃんは俺の癒しだったかもしれない。


「あ……アイテマちゃんにベッド作りを頼んで、それらを販売させたら【ヒモ】スキルが発動するんじゃ?」


 思い立ったら吉日だ。

 さっそく彼女に会いに行くために、それらしい理由を並べ立て直談判をしよう。

 俺は父上が仕事をしているであろう書斎室へ足早に向かう。


「父上、少々よろしいでしょうか」


 俺は慎重に書斎の扉をノックした。





 あれから数日後、ストクッズ家の馬車に揺られながら父上と王都に到着した。

 俺が『王都にあるストクッズ商会支部を実際にこの目で見てみたい』とか、『競合商会がどのような品物を扱っているのか勉強したい』とお願いしたら、アッサリ王都行きを許可してくれた。


「私も王宮の方に用があったしな。優秀すぎる息子のためだ、時は金なり息子なり!」


 なんだかんだで父上はフッ軽というかノリが軽い。

 まあ成功者ってのは、行動に移すまでのスピードが速いと自己啓発本で目にした気がするし、そんな感じなのだろう。


 一つ懸念点があるとすれば、この王都にはメインヒロインの【姫騎士アリス】がいるはず。

 とはいえ奴は王族だし、俺なんかがお目にかかれる相手じゃない。そこまで警戒しなくてもいいだろう。


「それにしても……ネルが拾ってきた奴隷騎士とやらはなかなかに腕が立つらしいな。剣はヘリオにも勝るのだとか」


 話題は俺についてきたシロナへと移る。

 馬車はかなり大きめで、俺、ヘリオ、シロナ、父上、そして父上の側近の5人編成だ。

 父上はジロリとシロナを値踏みするようにねめつける。

 どうやら次期当主の傍付きにふさわしいか見定めているようだ。


「シロナはよく頑張っていますよ、父上。そうだな、シロナ?」

「だ、旦那様からそのようなお言葉を賜り光栄です。これも一重にネルせんせ、ネル様のご指導ご鞭撻のおかげでございます」


 シロナはシーンによっては奴隷騎士の態度を全うしてくれる。

 10歳ちょっとの少女が、一生懸命に敬語を使うところがなんとも微笑ましい。

 だが、父上はシロナが敬語につたない点に鋭く反応した。


「ほう……剣は振るえても、舌の方は満足に振るえぬか。まあよい」


 とはいえ、俺が手塩にかけてシロナを育てているのは父上も把握済みだ。

 今すぐにでも奴隷契約を解除しろと言いはしない。それなりにコストをかけているのだから、もう少し様子見といったところだろうか。


「ネルは王都をしばらく巡ってくるのだったな。護衛騎士を一人ほどつけよう」

「ありがとうございます、父上」


「奴隷騎士やヘリオだけでは心もとないからな」


 そんな父上の挑発にシロナは易々と乗ってしまった。


「恐れながら旦那様。僕とヘリオは、ネル様に素晴らしい教えをいただいております」


「だから護衛は自分たちで十分だと?」


「は、はい……」


「よい家臣とは、主人に恵んでもらうばかりではない。時に主人を支え、知恵を貸し、武で示す。武勇を轟かせ、ネルの名声を広めるのもまた、良き騎士であろう」


 なんだか雲行きが怪しいな。

 これにはシロナもどう口を紡げばよいのか考えあぐねている。

 ここは俺が横やりを入れるべきか。


「不詳の身ゆえ、父上の思惑が判然といたしません。どうか父上の胸の内をお聞かせください」


「ちょうどよいことに、近々王都では剣闘大会が催されるようだ」

「剣闘大会……」


 5年に一度開催される武の祭典だ。

『ガチ百合』でも開催され、いわゆる対戦コンテンツみたいなものだった。

 俺はヒロイン攻略そっちのけでけっこうやり込んでいたし、ストーリー上でも女勇者(しゅじんこう)はここで活躍して、貴族子弟令嬢ばかりが通う学院に推薦入学が決まった。

 ちなみに俺の戦績は、妹の記録(スコア)を抜かして堂々の一位だった。


 今はゲームの約5年前。

 ちょうど前大会の時期に当たるわけか。


「優勝賞金ははした金だが景品の方は魅力的だぞ? あの【月狼の(めい)剣ムーンヴォルフ】なのだからな」

「月狼の鳴剣ムーンヴォルフ……!?」


 そういえば……【月狼の(めい)剣ムーンヴォルフ】と最近手に入れたばかりの【巨神の白金貨(ティターンズコイン)】を捧げれば、アレ(・・)が召喚できたよな!?

 戦力的にも睡眠的にも格段にQOL爆増だぞ!


「ネルにしては珍しく目の色を変えたな。ほれ、奴隷騎士とやらは主人のために何ができるのであろうな?」


 これはつまりそういうことか……。

 シロナに剣闘大会に参加しろと仄めかしているわけだ。そこで実力を示し、あわよくば息子の名声も上げろと。

 そしてこの挑発に、やはりシロナ乗っかってしまう。


「ネル様にお許しいただけるのであれば、ぜひにでもお願いいたします……!」


 まあいっか。

 シロナが優勝してくれたら、スキル【ヒモ】が発動しそうだしな。

 それにもし彼女がダメでも、俺がこっそりエントリーして、優勝をもぎ取るってのもありだ。


「わかった。シロナの好きにするがいい」


 俺はなるべくシロナの自由意思に任せるよ~ってスタンスで、偉そうに許可を出した。





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