老朽船
そこへ、若旦那さんを待っていた荷主達がやってきます。不安な面持ちで、この船で大丈夫か? と口々に詰め寄ります。傍でお婆様、懐から算木を取り出し何やら占いを始めます。
「坎の卦・・・」
水難じゃ、とお婆様。じゃが、困難な中に少し希望もある、と呟きます。
若旦那さん、怪しい天気と老朽船、そして荷主に詰め寄られ困っています。そうね、私にできる事はあるかしら? そう思い、接岸されている老朽船の傍に行き船を見上げます。
古い船には違いないですが、重厚な格のようなものを感じます。
「若旦那さん、船を祀らせて下さい・・・」
私は、船の前に跪きます。供物がなかったので、もしもの時にと借りた虎の子の砂金をお供えして、魔法陣を描きます。祈りの間、ザムに入るときに見たえ輝く白い山が頭に浮かびます。
「幾多の航海を潜り抜けた、歴戦の兵たる船よ。時の巡りによるこの出会いに感謝すると共に、どうか安航の祈り・・・我龍巫女が願いとして聞し召し給へ、我が名はラシル・・・」
雄大な白く輝く山から、何かがこちらに飛んで来ます。夕日に紅く染まる山を背景に、ゆったりと羽を広げる姿、鳥でしょうか? 風に乗ってその鳥は、どんどん近づいてきます。
やがて、魔方陣が揺らめきます。現れたのは、顔から首にかけて黒く、それ以外は真っ白な鳥!片足で器用に降り立ち、跪く私を赤い目で見下ろします。
「ラホン様!」
成り行きを見守っていた若旦那さんや荷主達、お婆様がそう呟くと、皆平伏します・・・。
「え・・・?」
その鳥、私が供えた砂金の袋を、嘴で器用に開けると、
パク!
(た、食べた・・・!)
続けざまに嘴を動かし、砂金をあっという間に平らげます。すると、内側から黄金色に輝きを放ち、ふわり飛び立ちます。
そして、船の周りをひと回りすると、船首降り立ちすっと消えて行きました・・・。
「フホ! アンタ、いい功徳をしたね!」
「・・・」
お婆様、笑いを堪えてそう言います・・・。
「さあ、ラホン様が宿った船だ。皆の荷物を必ず都まで運んでやる!」
赤銅色に日焼けした船長さん、都合よく現れ皆に声を掛けます。荷主達、さっきの騒ぎが嘘のように、荷物を船に運び始めます。
船長さん、私に向かって一言、
「姉さん、顔に似合わず豪気だな、ハハハ・・・」
(違うの、祀りの後返してもらうつもりだったのに・・・!)
若旦那さん、気の毒そうな顔で、慌ただしく積み荷の確認へと走っていきました・・・。




