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「乙女はお姉さまに恋してる―after.elder―」  作者: かずとん。
―Virgin and my male daughter―
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第8話「将軍妃との約束」

「あ、朝だ………結局眠れなかった……」


そう、昨日の夜。あの1年生杁江果歩を迎えたはいいが、寝ようとすれば


『あ、寝るんですか?なら私も御一緒致しますっ!さぁ!』


追い返しても鴒のように突然現れたりで警戒しているうちに、朝になったようだ。果歩はあのあと、皆に紹介したが意味なかった。そりゃそうだ、在籍はしていて自分の部屋があるのだからな。俺と鴒だけは知らなかっただけだ。


「1年生か、実際俺も1年生なんだが飛び級だしな。」


俺は化粧台にすわり、憂鬱なメイクを開始する。さすがに慣れたもんだ…………慣れた……………


……………………_| ̄|○ il||li……………


俺は男なんです。見た目はどうであれ男です。

ブツブツしながらメイクを終わらせて、髪をポニーテールに縛る。お気に入りの軍隊ブーツを履いて。


「よし!出来上がり!」


その声を聞いたのか扉が開く。


「おはようございます璃季様、おや、慣れたもんですね。」


鴒はマジマジと全身を見てくる。


「み、みんなよバカっ。殴るぞ」


「むしろご褒美です。それより皆さん食堂にいらっしゃいますよ」


「うし、んじゃ降りるか。」


部屋から出ようとしたら、鴒が制止する


「待ちなさい。まだ終わっていませんよ?」


「いや、終わったぞ。メイク完璧だしな」


しかし鴒はある一点をジッと見つめる。すると


「おりゃ!!やはり、下着が男物でしたか。どうりで違和感が」


鴒はミニスカをバサっと巻き上げそう述べた。


「て、てて、てめぇなにしやがる!!?」


「璃季様、ちゃんと女の下着をお召になってください。男物などを召されているところを見られたら」


「……まぁ確かにお前の言う通りだが」


「旦那さまが御覧になってしまわれたら酷く傷ついてしまいます………」


「俺が酷く傷ついたわっ!!!!」


鴒はいつも通りだった、指定された下着を身に付け(不本意)て、食堂へ行く。海利、夜埜依、果歩と揃っていた。


「おはようございます。」


「おはようございます璃季さんっ」


「おはようございます璃季お姉さま!!」


元気が周りの3倍も高い果歩、しかし気になったことがあった。


「そう言えば、果歩ちゃんはどうして私の名前を?まだ自己紹介はしていなかったと思いますが」


そう、果歩からの自己紹介は受けたが自分から名乗り出ていないのだ。


「それについては、部屋にあった筆箱です。名前が刺繍で入っていたのです!」


あー、鴒が昔。よく無くしものをしていた俺のために、筆箱に刺繍で名前をいれてくれたんだっけ?小学生の時だったかな


「刺繍ですか、私も無くさないように刺繍を入れたりシールを貼ったりしていますっ」


「私は無くさないように毎回確認するくらいですね」


「璃季様は昔からよく無くしものをしていたので、この私が刺繍致しました。」


「羨ましいですねー、私も入れて欲しいです!」


果歩は鴒の目をキラキラした目で見つめる。


「果歩様が仰るならば、またお暇があるときにやりましょう。」


果歩はガタッと立ち上がり喜ぶ、賑やかな食堂になってきたんだなって、まだ1週間ちょっとしか立ってないんだけどね。適度に会話を済ませ、学院へ登校する。学院の正門までいくと


「会長、おはようございます」


「あぁ、おはようございます」


「皇紀さん、ですね。」


「聖應の将軍妃、鬼道の女将軍とも呼ばれています。」


前にも聞いたが、物騒な通り名だよな。


「確か、剣道でかなり厳しく。その上全国大会制覇を遂げたとか。」


「へ、へぇ。なんだか怖そうですね」


「でも1年生の時は今みたいに厳しい人では無かったと聞いています。」


「確かお兄さんが亡くなってからと噂では流れていましたね。」


人には色々あるもんなんだな、あまり人のことは言えないが。

向こうもこちらに気づいたが、目を合わせるだけで直ぐに学院内に入っていった。それから時間が経ち、1時限目が終わり2時限目の移動授業。もちろん隣は


「せ、雪皇紀かぁ………(小声)」


授業は国語、正直隣が気になりすぎて集中できないが、ノートは書き込んでいく。緋紗子先生の声は耳に入らないが、黒板の内容だけは書き込んでいく。が


「なんだ?なにかようか?」


「え?あ、いえ、すみません。じ、実はシャーペンの芯を切らしてしまいまして……」


嘘だけど、とりあえずジロジロ見てしまったからには何か理由がないとな


「全く……これを使うといい。」


皇紀はシャー芯の入った容器を手渡してくれる。それを左手で受け取る。俺は左利きだから利き手で咄嗟に取ってしまう、いや、利き手で取るのは当たり前だが。


「ほぉ、左にマメができて皮膚が硬くなっているんだな。」


「へ?あ、その。昔から身体が弱くて鍛えていた時期がありましてー…あはは」


待て、見ただけでわかるのか?!さすがは剣道の神様だな……

俺は芯を一本だけ抜き取り、右手で返すと。向こうは左手で受け取る。


「綺麗な手ですね。」


つい、そんなことを言ってしまう。剣道をしているならば、左手はマメで硬くなっているはずだ、俺のように。


「………そうでもないさ」


一瞬、本当に一瞬だが。彼女は悲しい顔をしたように見えた、しかし、今はまた険しい顔で授業を静かに聞いていた。




放課後はあっという間に訪れる。鴒には


璃季『悪い、ちょっと寄る所があるんだ。帰りは遅くなるよ』


とそれだけしか言っていないのに。


『怪我だけはしないでくださいね、璃季様』


何かを悟ったような返答を返された、まぁ怪我はしないだろうがな。体験入部許可証を首からぶら下げて、武道館に入ると


「はぁぁぁぁぁ!!!メェェェェェン!!!」


パシン!!パシン!!パコォン!!


女子達の雄叫びが武道館内部で反響していた。俺に気づいた女子がやってくる


「体験入部ですか?3年のお姉さまとお見受けいたします」


「あ、はい。竹ノ宮璃季です、あちらの名簿に書けばいいのかしら?」


「はいっ、書けましたらあちらで見ていってください」


俺はお礼を告げて、道場の床に左足から膝を着き最後右膝で床に着いて正座をした。ちなみに下座に居るのが常識だ


「えーと、皇紀さんは…」


面を着けているからわからない、と思うだろうが。主将は道着の色が違ったり、袴が違ったりする。大体は『垂れネーム』と言う物に苗字が書いてあるからわかる。


「お、居た」


どうやら自稽古をしているようだ。お互い見合いながら、左右、前後と動く。時々フェイントを掛けたりして隙を見ている、そして


「メェェェェェンッッッ!!!」


パシィィィィィィィン!!!!


乾いた音が道場に響く。うまい、純粋にそう思った。左足で加速しながら右足を浮かせてから、面を打つ瞬間に右足で床を叩き、そのままのインパクトで相手の面金(めんがね)上の生地に放った。


『面金』とは面の顔の部分にある網目状のことを示す。


その瞬間、審判役をやっている女子三人が白旗を上げて。高らかに一本勝負あり!と叫ぶ、それを聞いた二人は指定の位置に戻り、構え直ししゃがむ。そのまま竹刀を収め立ち上がりゆっくり前を向いたまま後ろに下がりお辞儀をし。自稽古が終わった。


俺に気づいた皇紀はこちらへやってくる。


「君来ていたのか、興味があるのか?」


俺は立ち上がる。ちなみに立ち上がるときは座った時の逆で右足から立ち上がる。


「はい。小さな時に少しだけやったことがありましたので、体験入部をと思いまして。」


「そうか。なら竹刀を握ってみるか?」


竹刀をこちらに渡してくる。俺は受け取り、竹刀を構える。

懐かしい、中学以来だな。軽く素振りをすると


「……君は小さな時にと言ったがどのくらい前だ?」


「へ?あ、あー。小学生のころくらいだったかとー……」


いかん、相手は全国レベルだ。素振りや構えだけでお見通しだろう。


「そうか、相当良い師範と出会ったのだな。確か名前は璃季さんだな」


濃いお姉さん声なのにさん付けだと違和感があるが、ここだとそれが当たり前なんだよな確か。師範って言うか、鴒から習ったんだよな。なんでもできるメイドってすげーって思っていると


「いきなりだが、璃季さんの腕を見たい。どうだ?自稽古」


「じ、自稽古ですか?すみません、今日は長く居られませんので」


いきなりやるにしても腕が鈍っているはずだ、軽く流し稽古しないと。


「ならば、3日後はどうだ?丁度他の部員も自稽古を見に来る予定なのだが」


なるほど、定期的にギャラリーを集めてやっているのか。


「わかりました、私で宜しければ」


初めて、将軍妃が薄ら笑顔を見せてくれた。そんな

夕方の日だった。

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