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Twin Fate  作者: Hiz
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Prologue 2 [The Void Emerges] 01

…人々はいつも、俺が何事も理屈で判断していると思い込んでいる。まあ、実際そうかもしれない。…だが、時には不必要な感情に流されて決断を下さなければならない場合もある。


そして、それをどう修正すべきか、俺には分からない。


「…」


今、目の前にいるガキは『デコイル』だ。


敵と呼ぶには語弊がある。俺にとって敵という定義は、そう単純なものではない。…とはいえ、デコイルは俺と弟が偶然開いてしまった亀裂を利用し、異世界を渡ってきた者だ。


その思考が俺をわずかに不快にさせる。あの時、転送地点をもっと入念に調査していれば、こんな事態にはならなかったはずだ。


だが、時間を巻き戻すことはできないし、そうするつもりもない。ならば…俺にできるのは、自分の過ち、自分の不手際を片付けることだけだ。


俺たちが始めたことに、ケリをつける。


俺はもう、この『異世界』には反吐が出るほど飽き漸くしているんだ。


「…」


こんなものの、どこがいい。


強くなって何になる。たった一人すら守れないというのに…。


「アイさん?」


俺が過去を追想している最中、デコイルが笑顔で呼びかけてきた。


「ああ」


「あの…そこのドラゴンに、睨むのをやめるよう言ってくれませんか? なんというか…結構怖いんですよ」


「……」


ドラゴン――ベルはその言葉を聞いても視線を逸らさなかった。デコイルが動いた瞬間に攻撃するよう、俺は命じている。


「ユウの『Solar Deity’s Judgement』を食らっても平気な貴様が、今更ドラゴンを怖がる理由があるのか?」


「見つめられるのは苦手なんですよ。特に、どこの世界から紛れ込んできたのかも分からないような、恐ろしい目をした人たちの視線はね」


デコイルは両手を広げた。


「それに、あの勇者様のスキルを弾くのだって楽じゃなかったんですから。コストが多すぎて、数日間はまともに動けなかったんです。おまけに勇者様側は連射までできる。はぁ…無敵だと思わせて牽制するつもりだったのに、その後に更なる強力なスキルを叩き込もうとしてくるなんて…」


「貴様と昔話をする暇はない」


「そうですね。昔話、ですね。アイさんは昔話を好まない…ふむふむ、分かりますよ」


デコイルの人を食ったような態度に、今すぐこいつを囲んでいる魔法陣から魔法を解き放ってやりたい衝動に駆られる。


だが、まだ『World Key』を回収できていない。どこに隠したのかも分からない。


「World Keyはどこだ」


「あのですね…あなた、その鍵のことばかり聞くつもりですか…?」


「問題は貴様ではない、鍵だ」


「ほう? 僕は敵としてふさわしくないとでも?」


「鍵がなければ、貴様は世界を渡れない。その後、この世界で何をしようが貴様の勝手だ」


「魔王の跡を継ごうとしている僕ですよ? ちょっと待ってください…根絶やしにすべきじゃないんですか?」


「…」


根絶やしにする。


ユウならそうするだろう。


あいつは他人の心配ばかりして、自分の身が危険にさらされても構わず、誰にでも手を差し伸める。たとえこの異世界の住人であっても関係ない。命であれば…ユウは何があっても守り抜くだろう。


それは、俺とは正反対だ。


「貴様が何をしようと知ったことか。俺とユウは、魔王が死んだ時点で異世界に用はなくなった」


「つまり、普通の学生生活に戻りたくて仕方ないと?」


「いいや。ただ、こういうことが煩わしいだけだ」


「じゃあ…もし僕がWorld Keyを渡したら、僕を殺さないんですか?」


「ああ」


デコイルは陽気に手を叩いた。


「わあ、僕があなたの弟を何度も殺そうとしたっていうのに…。おっと、危ない危ない。殺す理由がなくても、殺さない理由もないはず。あなたのようなタイプは、災いの種を早めに摘み取っておきたいはずだ。…そう言うのは、僕を殺したらWorld Keyが見つからなくなると恐れているからでしょう?」


「…貴様がどうなろうと興味はない」


言った通りだ。異世界がデコイルにどう脅かされようが構わない。放置するか否か、俺にとっては大差ない。重要なのはデコイルが持っているものだ。


もしアイテムが、この異世界のシステムである『Inventory』内に保管されている場合、所有者が死亡した瞬間に中身はすべて消失する。


デコイルがそこに隠している可能性が高い。だから今は殺せない。こうして睨み合うことしかできない。


確かに、デコイルが鍵と共に消えれば、デコイルと世界渡りの鍵という二つの問題が同時に解決する。それでも、俺には鍵を回収しなければならない理由がある。


「あなたの言う通りですよ。鍵がなければ、僕はここから去れない。…あなたはここを『Beta』と呼んでいるようですね」デコイルは肩をすくめた。「鍵がなければどこにも行けない。神域からの許可でもない限りはね。あなたと勇者様が『Alpha』に帰還した時のように。…だとしたら…」


Alphaは俺の元の世界。Betaはこの異世界のことだ。


デコイルが楽しげに視線を送ってくる。俺は視線を逸らさず、問いを受け止める。


「…あなたはどうやってここに来たんですか?」


「…」


「World Keyは一本しかない。そしてAlphaには鍵はないはずだ。つまり、AlphaからBetaへ渡るには、どうしても鍵の所持者である必要がある」


デコイルは嘲笑を浮かべた。


「…どうやって鍵を手に持っているんですか? 今、僕の手元にあるはずの一本きりの鍵を」


重要な情報を引き出そうとしている。最善の選択は答えないことだ。


だが…これほど詰んでいる状況だというのに、デコイルの態度は余裕を失っていない。


死ぬか死なないかは重要ではない。もしデコイルがそういう立場にいるのだとしたら、他に重要なことがあるはずだ…たとえデコイルを片付けたとしても、終わらないかもしれない。


「…どう思う?」


俺は問い返した。


デコイルはただ首を振った。


「その顔は何ですか? 僕が何でも知っていると思っているんですか? 勇者様の情報は、覚えるのが嫌になるほどたくさんありましたが、あなたの情報はほんのわずかだ…」


「わずかな情報とは、何だ?」


「それは…」


デコイルはボロボロのローブの中に手を突っ込んだ。その瞬間、横から焼けるような熱気を感じた。


ベルが炎を放とうとしている。デコイルに向けられた、火属性最強のスキルだ。


「わあ!? あ、アイさん! 僕はただ物を取り出そうとしただけですよ!?」


俺は手でベルを制した。


「何を取り出す」


デコイルは恐る恐る手を入れ、ある物を取り出した。


何度も折り畳まれた、服と同じくらいボロボロの紙。書き手の名もなければ、放たれる魔力もない。


ただの紙のはずだ。だが…そこから感じる気配に、俺は思わず舌打ちを漏らした。


デコイルは紙を俺に差し出した。


「勇者様の情報はどこでも手に入りますよ。あの方はここの英雄のようなものですから。でもあなたに関しては…これだけです」


俺は紙を広げた。そこには、何のインクか分からない赤い文字が並んでいた。


その内容は…。


「あなたの情報ですよ。まあ、そんなに多くはないですが。残念だ…もう少しあっても良かったのに。それからここ、『堕天神の玩具と呼ばれたら面白いことが起きる』なんて書いてありますけど、死にかけた以外に面白いことなんて何もありゃしませんよ」


紙の前半部分には、俺のスキルの一部が記されていた。あくまで一部だけだ。それと少しの魔法。


ステータスに関してもそれだけだ。


そして残りは、異世界での戦闘には不要な個人的な情報。性格、好き嫌い。…そして、俺がある人物を失った出来事。詳細は書かれていない。


俺を始末するための情報というよりは、誰かについて書かれた日記のような印象を受ける。


とはいえ、この紙は数枚しかない。おそらくここだけ抜き取ってデコイルに渡されたのだろう。全体としてデコイルがほとんど情報を得ていなかったのは幸運だった。


あの忌々しい呼び名を除けば、デコイルに渡った俺の戦闘能力の情報は、Betaの多くの者も知っていることだ。使える魔法や『Absolute Isolation』など…隠す必要のない情報ばかりだ。


それ以外にここにあるのは…ただの重要でない情報。あの女がいつもつけていた日報のような…。


俺は読み終え、見落としがないことを確認すると、即座に魔法で紙を焼き捨てた。


デコイルがため息をつく。


「僕の物なのに…」


「他にまだあるのか?」


「調べたければどうぞ。でも、乱暴にしないでくださいね」


「どこで手に入れた」


「拾ったんですよ」


デコイルの答えに、俺は舌打ちした。


「ふざけるな」


「本当ですよ。一ヶ月前くらいに、突然ここに置いてあったんです」


デコイルは自分が座っていた場所を指差し、首を振って続けた。


「魔法で持ち主を辿ろうとしましたが、無理でした」


「…書いた奴はシステムに縛られていない。通常の魔法で追える相手じゃない」


「へぇ…」


つまり、デコイルが先ほど言ったことは、すべての事象を知っていたわけではないということだ。ただ重要なキーワードを口にしただけ。堕天神の玩具だの…。


「貴様が言っていた『Werebeast』についても…今の紙で知っただけか?」


「まあね。そこには、あなたがその種族の人物を失ったことがあるとだけ書いてありました。うーん、よければ名前を教えてくれませんか? せめて性別だけでも」


「…面白いか?」


「わあ、これは間違いなく女性だ」


デコイルの推測は外れていないが、これ以上こいつに話す必要はない。重要なのは、なぜデコイルにこれを与えたのか。


「あいつ」は何を企んでいる…。


デコイルが薄く笑う。


「それじゃあ…アイさん、持ち主が誰か教えてくれませんか? さっきあなたが焼いた紙の」


その問いに、俺は歪んだ微笑みを思い出した。


毒を塗った甘い果実のような、美しい化身。


敵に情報を与えるべきではない。だが…。


『お前はずっと私の玩具でいなさいね、アイ』


人間のものではないような、甘ったるく、とろけるような声。だが、その女の本性は、他人の苦痛…俺の苦痛だけを糧にするクズだ。


システムに縛られない存在。女神に等しい存在、いや…かつて女神だった存在。


俺は抑えきれない怒りを孕んだまま、デコイルの問いに答えた。


「『ガブリエル』…堕天神だ」

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