第18章 シャール防衛戦Ⅱ
戦闘描写って本当に難しい…
目の前に広がるのは戦場だった。
「ギャギャギャ!!」
目の前には緑色の魔物…ゴブリンが子どもの首を使って遊んでいる。
「いやぁ!!ケイトォ!!!!」
近くにはすでに左手を失いながらも、右手を伸ばし息子を取り返そうとしている母親らしき人影。
「んぐぅ…」
湧き上がる吐き気を無理やり抑える。
わかっていたはずだ。
侵攻してきた…しかも救援依頼を出した街であれば凄惨な光景が広がっていることくらい…
だが、実際に目にすると自分がいかに浅く考えていたかがわかる。
目の前で広がるグロテスクな光景、血と何かが焼けるようなにおい、魔物の咀嚼音。
今までに経験したことのない不快感が俺の五感にたたきつけられる。
「『ファイヤーボール』」
「ギィィ!」
ライヤーさんがすぐに火の魔法でゴブリンを倒す。
「あぁ…あぁ…」
「間に合わなくてすまない…せめて息子の近くで眠るといい」
ライヤーさんは男の子の首と体を女性の近くに置いた。
「せめて安らかに眠ってくれ…」
ライアーさんがそういうと女性は事切れた。
「…」
「勇者殿、これが戦場だ」
ライヤーさんが手を合わせながら言う。
「こんな光景がこれからも続くだろう。無理ならここで休んでいてもいいぞ」
「…」
ライヤーさんなりの優しさなのだろうか、その声は突き放すような内容に反して優しい声だった。
「…ふざけるな、俺にそんな覚悟がないように見えるか」
そうだ、俺は進むしかないんだ。
「そうか…いくぞ」
そういってライヤーさんが歩き出した。
俺はこみ上げる吐き気を飲み込んで歩き出す。
「『ファイヤーボール』!」
「『ライトニング』!」
俺とライヤーさんは魔法を使って魔物を倒していく。
先ほどまでいたゴブリンだけではない。
オーク、鳥の魔物、リザードマンなど様々な魔物が街を襲っている。
それを魔法で殺していく。
自分の意思で明確に生物を殺したことに対する嫌悪感などなくなっていた。
「きゃぁぁぁぁ!!!!」
「「!?」
近くで女性の悲鳴が響き渡る。
「いくぞ勇者殿!」
「はい!」
俺とライヤーさんは声のするほうへ向かった。
「いやぁ…」
「ギェェ!!」
女性の近くにゴブリンがいた。
ゴブリンは女性に飛び掛かりその爪で女性を切り裂こうとする。
「間に合えぇ!」
俺は加速の魔法を使い女性とゴブリンの間に入り込む。
「ギギィ!?」
目の前に突如違う対照が出てきたことに驚きながらもその爪は止まらない。
その爪は俺を切り裂き…
「見え見えなんだよ!」
俺はその爪を剣ではじき返した。
急な反撃によりはじき返されたことにより大きな隙を見せたゴブリンに俺は剣を向ける。
「はぁぁぁぁ!」
俺が振り下ろした剣によってゴブリンは真っ二つになった。
「はぁっはぁっはっ!…」
乱れた息を整えるのと一緒に込み上がる吐き気を抑え込む。
今までは魔法による攻撃だったため殺したことの実感がわかなかった。
だが、実際に剣で斬ることにより俺の触覚には切り裂かれる肉や粉砕される骨の感覚が刻み込まれた。
「はぁ…はぁ…ふぅ…」
何とか息を整えることが出来てきた。
「あの…ありがとう…ございます」
助けた女性が俺に感謝の言葉を言う。
「……」
「あっちのほうに行けば俺たちの仲間がいる。そこに行って保護してもらってくれ」
ライヤーさんが女性を味方がいるほうに誘導する。
「はい!あの…お名前は…」
「…慧だ」
俺は短くそう返した。
「その…ありがとうございました!」
そういって女性は足早に去っていった。
「……」
まだいまいち思考がはっきりしない。
女性を助けることが出来た達成感、生物を斬ったことに対する嫌悪感、覚悟を決めたはずなのにまた苦しんでいる自身の不甲斐なさ、いろんな感情が俺の中でぶつかり合っている。
「勇者殿…いや、慧…よくやった」
そういってライヤーさんが俺の顔についていた返り血を拭いてくれた。
「ライヤー…さん…」
「初めてのことがいっぱい過ぎて混乱しているんだろう。わかるよ…俺も最初はそうだった」
「……」
「だが俺たちは進まなければならない、この手で救える命がある限り…」
「…はい…」
「この戦いが終わったら話を聞かせてくれよ、慧。お前がどう感じたか、どう思ったか、これからどうしていくか」
ライヤーさんは笑顔を少し見せた後、また戦場の顔に戻った。
「他のみんなの頑張りもあってかだいぶ進行を食い止めることが出来てきているようだ、あと少し…頑張るぞ」
「はい!」
そういって二人で駆け出した。
そうだ、今の俺は一人じゃない。
一緒に戦ってくれる、話を聞いてくれる人がいるんだ。
だから頑張ろう。
今の自分にできることを少しでもやるんだ!




