表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/1

体術における脱力について

 よく、こういった描写を目撃することはありませんでしょうか。


「思いっきり、力を込めて○○をぶん殴った」


 もちろん語彙力の豊富な作者様は、もっと捻った文章で表現していることでしょうが、ニュアンス的には「力いっぱい」「持てる力の全てを振り絞って」「相手を思いっきりぶん殴った」という表現です。

 確かに、主人公が「全くの素人」であれば適切な表現でしょう。

 だって戦い方を知らないわけですからね。

 しかし主人公が何らかの武術経験者(この場では空手、ムエタイ等の打撃系とする)である場合、実はこういった描写は誤りになってしまうのです。と、いうのも実は「無駄に力を籠めたら、かえって攻撃力が低下してしまう」こともあり得るのです。


 どういうことなのか、順を追って説明していきましょう。



◇実はテキトーに殴ったほうが痛い◇


 試しに、自分の腹部を力いっぱい殴ってみてください(あくまでケガをしない程度に、またケガをされても当方一切の責任は負いませんのでご了承ください)。

 痛いですよね?

 きっと痛いはずです、人間の体はある程度の衝撃を受ければ痛みを覚えるものですからね。


 では次に、、素早く、なおかつ力を入れないで叩いてみてください。

 それで力を入れた時よりも「痛い」「鋭い」「重い」と感じるようであれば成功です。


 そう、実は適度に脱力したほうが攻撃力は上昇するのです。


 武道経験者であれば分かると思いますが、稽古中、特に初心者のうちは「もっと力を抜いて!」って言われることがあると思います。一見すると力押しにも見える技術でございますが、実は「力を抜く=脱力」によって「力む=筋収縮」をする必要がなく、筋肉が収縮するということは、相手に「攻撃を浴びせる=放出」したいにも拘わらず、体のほうは「筋肉に力を入れる=縮こまっている」ということになっているのです。

 何を言っているんだコイツは、と思うかもしれませんが、簡単に言うとこうです。

 前に進もうとする意志に反して、体は内に行こうとしている、ということです。



◇脱力は「威力」だけではなく「キレ」や「スピード」も生む◇


 試しに全身に思いっきり力を入れて動いてみましょう。

 たぶん、かなり動きにくいはずです。

 その理由ですが、前述の通り「力を出すためには筋肉が内側に収縮する」ためで、力強くはあるもののスピードやキレが殺されてしまうという現象が起きるのです。

 ただ力を抜くだけでいいというわけではありませんが、正しく力を抜けば位置エネルギーが運動エネルギーに変換される。つまり容易に動けるというわけです。

 実はこれ、受け(防御)でも攻め(攻撃)でも、素手での攻守のみならず武器術(棒術、剣術など)にも応用できるのです。



◇でもそれって本当なの?◇


「はあ? なに言ってんだ。ド付き合いは力こそ全てだし、筋肉無いやつは黙ってろ」


「ゆーてアレじゃん、チビが筋肉ムキムキに勝てるわけないでしょ?」


 ここまで言うと、きっとこう疑問を抱く人がいるハズです。

 事実、私もそういう疑問を抱いたことがありました。

 常識で考えたら筋肉量の多い人のほうが強いわけですし、マトモな方法では逆立ちしても勝てません。

 しかし圧倒的な差を埋めるために、(いにしえ)の達人たちは苦労してきました。その過程で生まれたのが「脱力」なのであります。

 確かに、極端な話をすれば身長150センチ台の細い人が、身長190センチ台の筋肉ムキムキな屈強男との差を埋めるのは確かに難しいものであります。某格闘漫画の合気柔術の達人クラスの達人でなければ、恐らく難しい事かと思われます。

 しかし多少の差、相手のほうが力は強いが絶望的なほどの差でない場合、あとは気持ち次第で実は意外と「力の差」を「技術」でカバーすることができるのです。


 ……ホントにそうなの?


 と、疑問に思った読者の方がいらっしゃいましたら、百聞は一見に如かずです。

 実際に「武道」をやってみるといいかもしれません。たぶん、体で理解できます。



◇結局それは戦いで使えるのか◇


 結論から言うと使えます。

 ……が、本当に実戦で稽古通りに技が使えるか、という話はまた別になってきます。それに関しましては本人の経験、気の強さ、など様々な要因がありますから、技の練習を積んでなお負けたからといって、それは技や理論が悪いというわけではなく、使用者の未熟さというところも関わってくるものであります。

 そういう部分も含めて、キャラクターが強くなる過程の描写にも使えるかもしれませんね。


 さて、次回は「戦いにおける気の持ちよう」ついて触れようと思います。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ