拾伍
開口一番に言いたい・・・・
どうしてこうなった!!?
あぁ、そう言われてもよくわからないのはわかる。今の俺は樹木に縛られている。いや、比喩ではなくよくわからない手に似た枝を伸ばし俺の腹のあたりを
拘束しているんだ・・・・
ほどこうにもビクともしないんだけど・・・・
あれ?カーノルドって樹海じゃなかったけ?なんで木の化物がいるの?なんで捕まってるの!?ねぇ、なんで!!?
アヴェルは知らなかったルディアの秘密兵器の縄はこの魔樹の繊維から作られていることを。縄が切れたことにより微量の魔力が溢れたのだ。
この魔樹は同じ魔力の篭ったこの縄を我が子と勘違いして抱きしめているところだと・・・
時は少し遡る。
ふんふん~
ふんふんふ~ん
あ?今俺はゴキゲンなのだ。なんてったって番を見つけたからな!!まだ俺は背が低いから番は繋ぐのは歩きにくそうだが、我慢してもらおう。
はぁ~・・・言葉は分からないが心地いいな・・・俺の中で蔓延っていた黒い物が霧散してる感じがする。
俺が笑うと番はニコッと微笑んでくれる・・・・癒されるな・・・・
と思っていたら勢いよく番は俺の手を離し、腰に下げていた袋から何かを探している。そんなにでかい袋でもないのにゴソゴソと・・・
俺と少し距離を開けてドヤ顔で見える位置に掲げた。いや・・・・それ、縄だよね?それが?何?
内心困惑した。え?いや・・・左右に揺らしても何も変わらないし珍しくもないよね?あぁ、でも小首を傾げるのカワイイー!!
え?だれ?バカいっちゃいけない俺の番!!
すると驚愕の表情をした後、今度は悲観顔をする番・・・・・・・有難うございます!!その表情頂きました!
でも、その縄がどうしたの?
「ボク?これ、分かるかな?これとっても大事なものなの、もっと喜んでくれないかしら?」
『すまない、何を言っているのかよくわからない・・・・あと・・・・それ、何の変哲もない縄だよね?それが、どうしたの?』
少女は徐に俺の腰に紐を結ぶと番も腰に結びだした。なんでかな?俺は疑問に思いつつ答えた。
『何で貴女も結ぶんだ?』
意味が分からず縄を解こうとすると満足気だった表情が険しくなり大きな声で何かを喋ってる。
「これでいいのです!!あぁ、外してはだめですよ!!とーっても大事なんですからね!!子供は特に外してはダメ!!絶対!!」
『なんで、そんなに必死なんだろう?別に俺と手を離したかったならそういえばいいのに・・・・ちょっ!!苦しい!!苦しいから!!!!これ以上締めるのは止めて!!分かった!分かったから!!もう離しません!!』
勢いよく少女は俺の腕を掴み縄から手から離すとちょっと、そうちょっと緩んでいた結び目をなんてゆうの?こう、親の敵みたいに力一杯ね、うん。
もうぎゅぎゅううううううぅぅぅぅぅっと、締めるんだから口から飛び出すところだったよ・・・・・フッ・・・・なんか遠い目になってしまった。
そうすると何故か私はわかってますよって表情になった。何を?すると頭を撫でてきた。とても、複雑な気持ちになったがもし、母親が生きていたらこんなふうに撫でて貰えただろうか・・・・
『俺は貴女よりも、遥かに年上なのに・・・・』
「ボクとお話しできないのは何かと不便でなりませんね?」
思案顔をすると閃いたっというように表情が明るくなった。うん、さすが俺の番!!
する喋りだした。
「私の名前はルディアよ?」
何を言っているのかと疑問に思ったが・・・・そう言えば俺の愛すべき番の名を聞きそびれていたのを思い出した。
『何だって?』
「ルディア」
今度は自分を指しながら喋る・・・・・・え?もしかして名前教えてくれてるのか?え、呼んでいいの?いいよね!!あぁ、なんていい響きなんだろう・・・
なんかね、こう、生きてて良かった―――――!!・・・・って、思った。
『!!るでぃあ?』
でわでわ・・・ん゛ん゛っコホン・・・・
「ルディア」
『ルディア』
嬉しい・・・あぁ・・・でも、恥ずかしいな番もといルディア・・・・
幸せに浸っていると俺の肩を叩いてきた。ん?えっ?なに?
「ボク、名前は?」
今度は俺の方を指しながら何かを聞いてきた。
『俺の名?』
もしかして、俺の名前を聞いてるのかと思い指を指しながら傾げてしまう。
するとあっていたのかコクコクと頷く。
だが・・・・改めて自分の名前を言うのは心なしか恥ずかしいな・・・
『俺の名前・・・・・は・・・・アヴェル』
よく聞こえなかったのかルディアは小首を傾げて笑顔になる。今度は聞き取れるようにはっきりと言わなくちゃな!!
『アヴェル』
「あ・・・ヴェル?」
『アヴェル!!!』
違うぞ!ヴェルじゃない!
「アヴェル?でいいのかしら?」
『うん!!ルディアあってる』
俺は嬉しくて・・・気がついたらルディアに抱きついていた。恐る恐るに抱きしめ返してくれた・・・・甘い・・・心地よい匂いが鼻を燻った
俺は決めた。
このぬくもりを守りたい・・・
自分のためではなく彼女の・・・
ルディアを・・・
愛しい愛しい番を俺は守りぬくと誓うよ・・・
母様・・・
俺・・・
生きていくよ・・・
魂の片割れに母様達が俺を導いてくれたこと・・・
とても感謝してる・・・
この世にもう母様はいないけど・・・
とても寂しいけど・・・
もう・・・
後ろめたいことはもう言わないよ・・・
ルディアを守る・・・
その時は全力をもって必ず守ってみせるよ・・・
俺の中の荒れ狂う魔力が一つにまとまり器に収まるのを遠くで感じた。
嬉しさと喜びの余韻に浸っていたら、ルディアが俺を引き剥がし勢いよく立ち上がった為、ひっくり返りそうになった・・・・
「アヴェル、こうしちゃいられないわ!!日が暮れる前に寝床と食料を調達しましょう」
必死に体制を整えていたら何かを言いスタスタと歩いていく為慌てて追いかけた・・・
うん、やっぱり早いな・・・・ついでにルディアが勢いよく縄を引っ張るからつんのめりそうになった。顔面から行くところだった。・・・・なんか、鼻歌唄っているし・・・
『ルディア?』
すみません。もう少し歩くスピードを抑えてくれないだろうか・・・・と言う念を込めて問いかけるも何かに集中してるのか全く聞いてくれなかった・・・
最後まで読んで下さり有難うございます