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次の日、オットーは足を引きずりながら再びホーランド家を訪れていた。
昨日のように怒鳴りも威張りもせず、ただひたすら門の前で土下座し続けた。
ホーランド家は繁華街の近くに立つ。領主が土下座なんかしていたら、嫌でも目立つ。
人々がひそひそ話す声が聞こえていた。あざ笑う声もある。
プライドの高いオットーにとって最大級の屈辱だった。
しかし先述した通り、オールドガーデンの壊滅はカヴェンディッシュ家の終わりを意味する。領地の、そして侯爵家の存続を図るためには手段を選んでいられなかった。
こうして彼の土下座はトイレ休憩とハイドレーションブレイクを挟んで三日三晩に渡った。
***
「で、結局ホーランド家のルイス様が守護聖女を引き受けることになったの?」
屋敷の庭を歩きながらオリヴィエは言った。
「はい。ただ一筋縄ではいかないようです」
隣を歩くローランが答える。
結局最終的にオットーの謝罪は受け入れられた。三日間は彼の部下たちが総出で領内を駆けずり回り、結界を張れる魔法使いをかき集め、どうにかモンスターの侵攻を防いでいたようだ。
幸いその間に大型モンスターは現れなかった。
オットーは許されたが散々に外の白魔導士を優遇したことを詰られ、ルイスを守護聖女として雇うのに大金を払わざるを得なくなった。
しかもオットーはルイスに敬語を使うことを強制され、使いっぱしりをさせられているようだ。
オットーは街を歩いても人々から後ろ指を指される。有能だったオリヴィエを解任してしまったこと、街中で土下座していたこと、聖女の言いなりになっていることなど、馬鹿にされるネタを豊富に取り揃えてしまっていた。
信頼していたキュルルにも逃げられ、最早領主なのは形だけだと市民たちからは言われているらしい。
「素晴らしい。裏切り者には相応しい末路だわ」
「そうですね。ご主人様を裏切ったのだから、当然の報いだと思います」
二人は暫く無言で歩いた。
「ただ、それよりも」
ローランが少しどもりながら言った。
「あなたがこの屋敷に戻ってくれたことが、俺は嬉しいです」
オリヴィエは頬を赤らめている彼の事を微笑ましく思った。
「この屋敷に戻ったこと、じゃなくて、自分の元に戻って来たこと、じゃなくて?」
「そ、そんなおこがましいことは……」
ローランは首を振る。
「私は、あなたと一緒になって良いと思っているわ」
「そ、それどういう……」
ローランは立ち止まったが、オリヴィエは止まらなかった。
空を二羽の小鳥が滑るように飛んでいく。
ローランとの距離を縮めるには、もう少し時間がかかるのかもしれない。
おわり




