17話 作業場
次の日から新しい弓を持って狩りに行く。メンバーは前と一緒。
ただ、弓の効果は違う。
今までの矢がひょろひょろと飛んでいくのに対し、今の矢はひゅーと飛んでいく感じだ。
獲物は矢を感じて、逃げ出そうとした時には、もう矢が当たっている。
しかもケンの腕は一段と上手くなっていた。
今日の最初の獲物はコジュケイだった。普段は地面を歩いて餌を探しているが、危険を感じるとさっと逃げ出す。捕まえにくい鳥だった。
ケンが矢を放つ。他の者がすぐに、獲物を捕まえに行く。するとコジュケイは首を矢で貫かれていた。
「すげぇ。首を一刺しだ」「矢の勢いが違っていたよ」
新しい弓の威力だった。
「ケン、前より一段、上手くなっているな」ツムは呆れる口ぶりだ。
「俺、もう弓の練習、やめるかな」ツムがぼやきとも本音ともつかないことを漏らす。
「ツム、それはダメだ。俺が猟に出られないことだってあるんだ。お前が俺の代わりを務めないと行けなくなるんだ。」
「まあ、そうだな」
「イサ、お前も弓の練習を真面目にやれよ」
「うん。」弟は素直だ。
ケンたちの家族だけでは生きていくのが難しい。小屋一つ作るのも大変なのだ。受け入れてくれたロク達にケンとしては、家族の全員が役に立つと思われたかった。だから、今は弓が下手でも、練習をやり続けてうまくなって欲しいのだ。
その次の日から雨模様となる。
雨が降っても、一応、狩りはできる。獣は雨でも活動しているから、成果が全くないことはない。ただ、雨だと体温を奪われるし、視界も悪く獣を見つけにくい。余ほどのことがないと雨降りに狩りは出ない。
ケンは手持無沙汰を解消するため、小屋の中で弓矢を拵える。しかし丸一日はやれないし、ミイが膝の上を狙って来る。
最近のミイは同じ年代の女の子と遊んでいる。だが、この雨で外に行かず小屋にいた。
ずーとミイの相手をしていても良かったのだが、狭い小屋にいるのは身体がなまる。
それで、ロクに言った。
「作業用の小屋を作らないか。住居用の小屋では狭くて、みんなで集まれないから大きなものを造れない。みんなが集まり、作業できるように広く、天井を高くすればいい」
「悪くない考えだ。みんなで作ろう」とすんなり言ってくれた。
作業用の小屋は必要だった。ケンに言われロクも気づいたから、すぐにノブとサジにも伝える。
こんな時、小さな集りの行動早い。翌朝、まだ小雨が残る中、空き地に集まってくれた。
「さて、どう作るか、ケン、説明してくれ」
ケンは小枝を使い、地面に小屋の形を書きながら説明を始める。
「まず、柱を4本立て、間を棒で渡す。そして2本のもっと長い柱を立てて、この間も棒で渡す。そこを屋根として、草を敷く。」
簡単な説明だったが、皆、頷いてくれる。地面に書いて説明したのが分かり易かったのだろう。
木を伐る、土を掘って柱を立てる、そのあと枯れ草を屋根に拭く。壁のない簡単な造りだから、早くできる。
ただ、男たちが作業に使いだす前に、女性陣から喜びの声があがった。。
「これはいい。雨が降っても、ここで作業できるわ」
「本当!これなら、洗い物もここに干しておけば、雨も心配いらない」
「ねえ、ロクさん。ここに水場を作ってよ。」
「そうよ、そうすれば雨の日だって、濡れないで調理物を洗えるわ。」
「いや、そうだけどよぅ。お前らのためにここを造ったんじゃないぞ。」
「何言ってんのよ。男衆は、日中、狩りに行ってほとんどここを使わないじゃない。私らの方が使う機会がおおいわ。」
「そうよ。使う人のために、作るべきよ。」
結局、ロクは女性に押し切られる形となって、水場をつくることになった。
まあ、竹の樋を伸ばすだけだったから、そんなに面倒な作業ではない。
1時間もかからなかった。
水場が出来たのを見て、ケンは竈がここにあれば便利だと思いつく。
早速、石と粘土を持ち込んで造り始めた。
「あら、ケンさん。何を造っているの?」
「竈を造っているんです。安全に薪を燃やせるので、お湯などを簡単に沸かせられますよ。」
「あら、便利なるのね。楽しみだわ。」
竈つくりは簡単にはいかない、粘土が渇く時間を入れて3日ほどかかった、
ただ、出来上がった竈は好評だった。女性たちは水場で野菜や肉を洗い調理し、すぐその場で煮たり、ゆでたりできるようになる。
「竈で沸かす方が早いわね」「芋が煮えるのも早いわ」
竈は熱を鍋に集められるので、効率がよい。女性たちはこのことにすぐ気づき、積極的に竈を使いだす。
すると、皆で料理を囲むようになり、いつも賑やか食事会が開かれることになった。
以前は、焚火を囲んでの食事だが、竈だと火が飛び散り火事になる心配をしなくてよい。竈に煙突を付けたので煙たくないのも好評の理由だ。
何時も多くの者が、この場所に集まり、洗い物、調理、食事、そして雑談をするようになった。
そうなると、本来の目的だった、男たちが作業をする場所がなくなる。
「しょうがねぇ。もう一つ小屋を造るか」ロクはあきらめ顔で言うしかなかった。




