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岩山から落ちて  作者: 寿和丸
第1章 縄文の世界

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第15話 狩りの成果

「でもロクさん、最初会った時は冷たかったですよ」

「お前たちがあそこから来たと言ったから、何か裏があると思って、警戒していたんだ。お前らが、本当に小屋を造り出したんで、手伝ったんだ。」

「そうだったんですか。」ケンも少し納得する。

「たまに、フサの奴、俺たちの様子を知ろうと、スパイを送り込むことがあるのよ。お前らもそうなんだろうと思っていた。」

「スパイですか?そんなことまでして、ここのことを知る必要があるんですか?」

「さあ、フサの思惑は分かんねぇが、こっちのことが気になるんだろう。」

「ここと、あの山の人たちとは何で関係が悪いんだ?」

「俺も昔、あそこにいたんだ。だがフサの奴が子供を集め、こき使うのを見て、反対したんだ。そうしたら、喧嘩になって、俺は家族を連れて、こっちに逃げ出したのよ」

「フサという人と戦わなかったのか」ロクは腕っぷしがよさそうだったので、喧嘩で負けるとは思わなかった。

「あいつには兄弟が3人もいるのよ。喧嘩したら、俺が、負ける。」

「それじゃぁ、他の皆さんも」ノブとサジを見ながら言う。

「他の者も、似たようなもので、みんなあそこから逃げて来た。だから、どうもあの山から来たと言われると警戒するのよ。」

山の向こうとの事情は分かった。ともかくあまり関わりを持たないのがよさそうだった。

「明日から、狩りに行く。お前の弓の腕前もその時見させてもらうとする。今夜は久しぶりに面白い晩だった。」

それで夕食会はお開きとなった。


その晩、新しい小屋でケンたちはゆっくり休むことができた。

(信頼できる人たち、ここでなら安心できる。)久しぶりに味わえた安心感だった。


あくる朝から猟に出かける。部落の男3人とツムとイサも一緒だ。部落の子供は女の子が多く、イサと付き合えそうな男児はいなかったので、連れて行くことにした。

森に入って見ると確かに、獣が多かった。

実がなる木が多いせいなのだろう。多くの木に実が実り、花が咲いている。

「俺たちが、あの山の連中と仲が悪いのに、ここを離れないのは、ここに獲物がいるからだ。」

ロクの話になるほどと思った。


始めに見つけたのは山鳥だった。距離は少し遠いが、邪魔になる木もなく十分狙えた。

鳥が矢音に気付いて、どのように逃げ出すか、弓の性能も掴んでいる。外すはずもない。

「ズサ」逃げ出しかけた鳥が落ちる。

急所はずれていたが、飛べず、地面でバタバタしている。捕らえるのは動作もない。

「お、凄い。一発だ。」感心の声が上がる。

「へへ、兄貴の腕なら当然なんだよ」なんかイサが自慢顔だ。ケンの実際の腕を見て興奮しているようだ。

「イサ、感心ばかりしないで、俺の弓のやり方をよく覚えるんだ」

「うん」イサなりに思うことがあるのだろう。強く頷く。

まだ小さいが、ここで生きるには少しでも、皆の役立つことを覚えて貰わないとならない。兄として、きつく言った。

その後も、ウサギ、アナグマなど次々と狩っていく。


「いやぁ。大したもんだ。これだけの時間で、こんなにも多く獲物が取れたなんて」

「そうだよ。いつもだったら、この半分も捕れてねぇ」

ノブとサジが驚き顔で言っている。

「お前の弓の腕前はうそじゃぁなかったな」ロクも認めた。

「もう、これで十分だ。あんまり取りすぎと次が困る。戻るぞ。」そのロクの一声で狩りは終了。引き上げだ。


帰ると捕って来た獲物を目にして、女性陣が大騒ぎとなる。

「わぁ、凄い量よ。」「どうやって、裁く?」

(何時か見た風景だな。)ケンは昔を思い出す。

いろいろなことがあって、何か昔の出来事のように感じるのだが、まだ1年も経ってないのだ。


あの時と女性陣の顔ぶれは大きく変わっている。大人の女性二人とケンと同じ年ぐらいの少女、それにラムがいる。

ラムは手際よく獲物をさばいていく。

「あら、本当に上手ね」他の女性たちも感心する。すっかりここの女性たちと打ち解けているようだ。

ラムの手際の良さもあるが、使っている刃物は、黒曜石をケンが良く切れるよう加工し、持ちやすいように枝切れに挟み込んでいる。

皮を剥ぎ、部位ごとに肉が切り分けられていく。

「さあ、次は料理ね。何、作る?」

「「焼き肉!」」近くで女たちの仕事を見ていた子供たちが、一斉に声を上げた。

その声が余りに揃っていたので、大笑い。

「芋と一緒に煮込んでも旨いわよ」

「そうね、そろそろ芋もいいわね」

「じゃあ、焼き肉と芋のごった煮にしましょう」

今夜も楽しい夕食会になろうとしていた。


その夕食後、ロクと二人きりになれたので話しかける。

「実はなぁ、俺たち、干し魚の他に、塩も持って来ているんだ。」

「塩も持っているのか?」

「うん、使うことがあれば、供給する。」

少し、ケンの顔を見てから言った。

「いや、今すぐには必要ではない。お前が持っていろ。」

「そうか、分かった。それと聞きたいことがあるんだ。」

「なんだ?」

にかわの作り方を知っているか?」

「膠なんて誰でも作れるだろう。」

「いや、前に作ってみたんだが、うまく行かなかったんだ。俺は強い弓を作ろうとしているんだ。弓を作る時によく貼りつく膠が必要なんだ。」

「それなら、明日から膠を作ろう。今日の猟で、しばらくは食い物の心配しなくてもいいから、2,3日は猟に行かずに済む。お前の膠作りに協力しよう。」


ようやく懸案の強い弓作りに進展が出来そうだった。


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