作戦会議
ダンジョンで戦闘不能になるとレベルが下がり、外に放り出されるだけで、死ぬことはない。この安全仕様のために、女一人で探索者を続けられている。
ボス戦の敗因は火力不足とMP補充ができないことだ。MP5では小威力の魔法を一発しか撃てず、その後はコボルトジェネラルの俊敏な動きに翻弄され、戦闘不能となった。
しかし、MPを上げようにも、MPを1上げるためにはMPポーションを500mL飲まなければならない。さらに、戦闘不能になったことでレベルが5から1に下がっており、基礎MPは0に戻っていた。
「また飲み直しか〜。考えただけでも辛いなあ」
MPは下がった一方、腹にたまった水分はそのままなので、今は水すら見たくない。
今日は撤退して、とりあえず生産職さんにMPアップポーションの使用感をフィードバックすることにした。
―――その日の夜、電話で生産職さんに使用感を報告した。
「なるほど、ポーションのMP上昇が思ったより少ないですね。」
「そうなんです。もっと効果を上げられません?」
「うーん。ゲームのセオリーだと良い魔石を使えばいいのでしょうけど...自力で入手可能なのがスライムの魔石なんですよね。」
B1Fで出現するスライムを倒すと99%以上の確率で魔石をドロップすると言われている。一方、B2Fのコボルトは、正確な確率は出ていないが、体感では0.5%未満だ。
「手持ちはないですが、コボルトの魔石がでたらお譲りします。とりあえず今のMPポーションをあるだけもらえませんか?」
「それはありがたい。スライムポーションは作りすぎて邪魔なので是非貰ってください!」
どちらの意味でありがたいのか定かではないが、供給は十分そうで安心する。
「でも、既にかなりの量を渡していますが、低効果品をどうするおつもりで?転売はご遠慮願いたいのですが...」
「いえいえ転売なんて!しばらくは地上でポーションを飲みまくって、MPをためる作戦です。コボルト狩りの効率を考えるとMP1000はほしいですね。」
1日1個は魔石をゲットすることを目標に、小威力の火魔法200発分である。
「どんだけポーションのむきですか...まあ研究のためには仕方なし。私もポーション作製に励みますよ」
「ではよろしくお願いします」
こうして私のMP増加作戦が本格始動した。