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求婚されました

 学園時代も花屋で多忙だったこともあり、殿方と二人でお茶なんて初めてのことです。

 ましてやそれが、幼いころお慕いしていた公爵様だなんて! 自慢のガーデンも霞むくらいの美しいお姿にクラクラします。


「ローズ」

「ひゃ、ひゃい!」


 突然公爵様に呼ばれ、おかしな返事をしてしまいました。ああ、穴があったら入りたい……。

 そう思い俯いた私に、衝撃的な一言が降り注ぎました。


「胸を、見せてくれ」


(ムネヲ、ミセテクレ?)


 あまりの美しさに目だけではなく、耳までおかしくなってしまったのでしょうか。

 素敵な優しいアルトの声には相応しくない卑猥な言葉が聞こえたような……。


思わず公爵様のお顔を拝見しましたが、真剣な面持ちです。いやいやいや。


「い、今なんと?」

「……胸を、見せてくれ」


聞き間違いではなかったようです。貞操の危機でしょうか!? ここ屋外ですよ!?

 しかも公爵様はごく真面目な表情。先程の微笑みもなければ、照れている様子もなく、かと言って悪事を働いてやろうとするような邪心もなさそうなお顔です。


 だとすれば、「あの事件に対する責任感」からのお申し出だろう、と予測出来ました。驚きもトキメキも瞬時に萎んでゆきます。しかし「あの事件」のことを、私から掘り起こすことはしたくありません。ここは、ごく普通の理由でお断りすることに致します。


「公爵様、た、大変申し訳ございませんが、婚約者でもない殿方にお胸はお見せ出来ませんの……」


 すると公爵様はひらめいた! という演技をして、「じゃあローズ、私と結婚しよう」と、またも真面目な顔で言い放ったのです。


ポン!!


 私の周りにピンクの花が咲き乱れます。

 魔法の制御は今も苦手で、こうして心が乱れると花を無作為に咲かせてしまうのです。「結婚しよう」などどお慕いしていた憧れの方(しかも成長してさらに素敵になっていらっしゃる方)に言われて動揺しない令嬢がおりましょうか!!?


「こ、公爵様! 動機が謎です! 責任感だけで求婚しないでくださいませ!」


 そう、胸を見たいと言ったのも、結婚しようと言ったのも、きっと責任感からなのでしょう。現在魔術師として活躍される中で、昔の失敗を思い出されたのかもしれません。


「……む、胸のこと、は、お忘れになられたもの、と思っておりました」

「忘れる訳がないだろう。君の身体に傷をつけたのはこの私だ」


 そう、私の右胸には傷痕があります。

 キズモノになった伯爵令嬢。しかも魔法も花魔法しか使えない。

 これが私が結婚出来ない理由です。


 胸にあるのは、赤く大きな火傷の跡。それを付けたのは、幼い公爵様でした。



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