後日談199話、増える武器
炎の守護者と元勇者が激突するのをよそに、風の守護者とドラゴンの激闘もまた続いていた。
吹き抜ける突風。風の守護者シルフィが銀色のショートカットの髪をなびかせて壁を蹴り、方向転換する。
しつこい。
追尾する灰色の髪をたなびかせた女性戦士――クラウドドラゴン。彼女は宙を引っ掻いた。
かまいたち。
渦巻く風の直撃が岩をえぐる。さながらドラゴンの爪が地面を引っ掻いたような傷だった。
砕ける岩を避け、シルフィは反撃のソニックブラストを放つ。向かってきたクラウドドラゴンの体をわずかに押し退ける。
だがそこまでだ。
風のドラゴンに風をぶつけても、勢いをほんの少し抑える程度に過ぎない。しかし風の守護者にとっても、その少しでも攻撃のためには充分だった。
「弾けろ……!」
サンダーブレードが紫電をまとい、クラウドドラゴンに斬りかかる。
――動きが止まって見えるぜ!
と、シルフィは一瞬思ったものの、それで痛い目を見たのは記憶に新しい。
「雷轟」
その瞬間、クラウドドラゴンは雷となった。目にも留まらぬ早業。人ならば一撃感電。常人ならば焼け死ぬほどの雷が駆け抜けた。
轟音が空洞内を反響した。雷は音さえ置き去りにする。
しかし、シルフィはそれを紙一重で躱した。全ては風のなすまま。身を委ねれば、雷は過ぎ去るものだ。
着地。そして振り返り、互いに相手を見やる。
「埒が明かないわね」
「そりゃあ、こっちのセリフだぜ」
互いに風を司る者。スピード、そして技の系譜は似通っている。
「いい加減、諦めたら?」
「いいや。どっちがより強き風の者か、あたしは試したくてウズウズしている」
シルフィは不敵な笑みを浮かべた。
「面白くなってきたんだ。しばらく遊んでくれよな!」
疾風――シルフィの体が加速する。分身、否、残像を残したような移動。クラウドドラゴンは背中から翼を生やすと、風となった。
・ ・ ・
「あちらも派手にやっているな……」
ジンは、遠くから聞こえる雷鳴やら轟音で、風の守護者とクラウドドラゴンの戦いが続いているのを確認した。
一方で、視線を目の前――ソウヤと炎の守護者サラの戦いに戻す。
炎が吹き荒れる。飛んできた槍を、ミストが竜爪槍で弾いた。
「よそ見厳禁よ、お爺ちゃん」
「すまないな」
本当は避けれたし防ぐこともできたのだが、ミストがわざわざ守ってくれたのだ。その好意には素直に感謝の意を表する。
サラは炎の短槍を駆使して、ソウヤの近接戦に対応した。果たして何刀流というべきか。手にした槍は二本、しかし空中に槍を複数具現化させ、それを見えない手で扱い、攻撃を繰り出してきた。
まるで蜘蛛の足がすべて槍になり、それで複数の突きを放っているかのようにも見えた。実際の蜘蛛はそんな攻撃はしないのだが、複数の腕を持つ魔神やらの攻撃にも通じるものがあった。
「ミスト、君は体の方は大丈夫か?」
「本領発揮には、まだ程遠いわね」
ミストは顔をしかめた。
「炎の守護者に、だいぶ霧を削られた。いまソウヤがやっているような動きはちょっと厳しいわね」
「ゆっくり回復に務めなさい」
ドラゴンの再生能力であれば、さほど時間はかからないだろうが、少なくともソウヤはその時間を稼ぐだろう。
それより早く彼が負けるようなことがあれば、その時は前に出る。あくまでサポートに徹しているのは、実のところ人を蘇らせることに関してあまり乗り気ではないからだ。しかし友人は大切であり、そのために頑張る者への協力を惜しむことはない。
ガルとカリュプスメンバーの復活は、ソウヤがやろうとしていること、彼の願い。それを叶えるべく努力するのは、ソウヤでなければならない。神竜の試練とは、つまるところそういうものだ。
補助をしつつ、どうしようもなくなった時に何とかするのがジンの役目である。とはいえ――
「時々じれったくはある」
・ ・ ・
ソウヤの斬鉄は、サラの短槍を叩き折った。槍が短くなったから剛性が落ちているというわけではない。
だが彼女が片手で槍を扱うようになってから、手数は増えたが、槍がバンバン折れるようになった。
しかし折れることに意味はない。おそらく彼女の魔力で生み出されている槍は、いくらでも複製ができそうだから。
事実、槍は複数あって、空中に浮かべたそれが、時々ソウヤの死角に回り込み、突きを放ってくる。
だがそれをソウヤは避ける。まるで背中に目がついているように。
「大したものだ」
サラは舌をまく。
「気配、もしくは魔力で感知しているのだろう」
またも一本、サラの手の槍が折れた。ソウヤの剛力は健在だ。
「だんだんわかってきた」
ソウヤは腕を片手で斬鉄を握ると、空いた片手から、もう一振りの大剣を生成した。
「こうだろう? 得物の増やし方は」
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