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傷心者の行く末  作者: 伏見ソラ
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謝罪

俺はあのあと至るところに謝ることになった。緊急治療室から無断外出なんてもっての他だと怒られた。だけどみな最後には自然と笑ってた。医者としても無事に目を覚ましてくれたという安堵から出たものであろうか。さすがに昏倒した美姫を抱えて病室に戻ったときはみんな驚いたものだ。そもそもあれだけ探して見つからなかったのに早い時間で見つけてしまったこと。なぜか頬を染めたまま昏倒していること。誰もその事には触れずに次の日になり、海翔や他の人が病室に訪れていた。


「よー。元気にしてっかー?病室から抜け出したバカ野郎。」


かなりの大声でドアを激しく開ける。


「まぁぼちぼち元気だよ。あと病室では静かにしろよ。クソ野郎。」


俺は、海翔が来てくれたことを嬉しく思いつつ皮肉めいて返す。


「あと、この状況はどんな用件だ?」


と、ニヤニヤと海翔が言う。それもそのはず、美姫が椅子に座り俺のは膝に頭をのせ眠っているからだ。


「俺に説明させるつもりか?状況見ればわかるだろ。美姫が寝てるんだ。起こすならお前を追い出す。」


「おーおー。お熱いことで。で…だ。ここに来たのは見舞いもあるが、もうひとつ。お前にあってもらいたい人がいる。俺のとこで拒めばよかったんだが、それは違うからな。美姫ちゃんと一度はずすからしっかり話せ。」


と、真剣な顔をした海翔は美姫をおぶってそそくさと外へ出ていった。はぁ…せっかくの美姫との時間を邪魔しやがって。そう思っているとノックされる。どうぞというと三人入ってきた。一人は警察のかた。もう二人は…夏川さんとあの男であった。


「怪我人の部屋に押し掛けてすまない。昨日この二人が自首してきてね。その事実確認を行いたい。」


そうか…あのあとこいつらは自首したんだな…。夏川さんとあの男は、俺を見るなり顔を真っ青にして頭を下げた。


「この度は…申し訳ありませんでした!私たちの問題に巻き込んで…さらにはそんな怪我までさせてしまって…。」


この二人…しっかりと和解できたんだな。


「頭をあげてくれよ。いきなり来たらビックリするだろ。先に確認してくれよ。」


俺は、怒るでもなく、苦笑いでもなく笑顔で言う。警察官はただ事実確認を行いたいだけらしい。特に口を挟むことはなさそうだ。


「昨日の夜、君はその子のために公園に行き、そこで男と揉め事を起こしナイフで刺されてしまった。間違えないかな?」


詳しい事情をかいつまんで単刀直入に聞いてくる。俺は、はっきりと告げる。


「ええ。間違えないです。」


それを聞いた警察官は、事務的に続ける。


「傷害事件と殺人未遂で男の方は逮捕することにしよう。」


俺は、それを聞きなんだか悲しくなった。結局は、刺されても俺は、変わらないらしい。だから


「いや、俺そいつ起訴しませんよ。俺もそいつを殴りましたし、痛み分けってことでどうですか?」


俺は飄々と話す。それを聞いた二人は驚きなにかを言おうとしていたが俺は、構わず続ける。


「別にたいしたことありませんし、ただやられたのがナイフでやられたってだけで死んだわけでもないですし、大丈夫ですよ!」


「でもね…君。普通さされてなにも思わないなんて異常だよ?それにもしかしたら何かしらの後遺症がでるかもしれない。それでもいいのかい?」


どうやら警察の人は俺のことも考えているらしい。それでも俺はこの二人を起訴するつもりはなかった。だから、俺は、はっきり言う。


「起訴するつもりなんてさらさらないですよ。今回はお互いに勉強になったで終わりで大丈夫ですよ。もし後遺症が出てしまったら自業自得でかまいません。」


「…君のような人間が一番損をしそうだが、私は君の意思を尊重しよう。では私は署に帰らせてもらう。」


と、回れ右をして警察のかたは外へ帰っていった。その一部始終を見ていた二人は開いた口が塞がらないようだ。だからもうこれで終わりにしよう。


「しっかり…今度は守ってやれよ?約束だぜ?男の約束だ。」


と、俺は男の胸に拳を当てる。男はその場に崩れ落ち謝罪の言葉をずっとのべ、涙を流している。

夏川さんはというと…困惑している。


「…なんで、起訴しなかったの?」


「そりゃ、なんでと聞かれたら…うーん…わかんね。」


すっとぼけたように言ってみるが納得はしていないようだ。


「まぁとにかくもうお前の助けはこりごりだ。何かあれば頼ってくれるのは嬉しいがこんなんが毎回あったらたまらんからこれで最後にしろよ。」


と笑い飛ばしてみる。二人はもう一度深々と頭を下げ外へ出ていく。そのときに…夏川さんにボソリと聞こえないように呟いた。


「これで…最後だ。じゃあな。みどり…。幸せになってくれよ。」


ふと夏川さんがふりかえる。そういやこいつ地獄耳だったわ(笑)しっかり聞こえてたらしく。泣きながら


「ハル君も…幸せになってね?また…いつか会おうね。」


と最後には笑顔を見せてくれた。やっぱりあいつは笑顔が一番だな。こうして俺達は和解したのであった…。

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