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第二の人生でも焚き付けます

 …ブクマがついに悪魔の数字になっとる…

 あれからカールは泣きながらオレの特訓に喰らい付き、見事やり遂げた。


 ははは。余は満足じゃ



 カールが成長を遂げたのは魔法の腕前だけじゃない。


 気のせいか顔付きも精悍になり、かつてのいじめられっ子特有のオドオドした所や気の弱さも見られなくなった。


 主の成長にか、特訓をやり遂げてオレのしごきから解放される事にか、バッベルが涙を流して喜んだ。


 これは旦那様に報告しないと、って言ってるから、すればいいと思うよ。

 多分息子の先行きを不安に思ってたろうから。



 妹(前世)の説明によると、カールは一人息子だ。

 それも、父親は未だ数年前に亡くした妻を忘れられず、後妻を迎える気はないから、兄弟が増える予定も無い。


 ところが唯一の跡取りのカールには魔法の適性はあれど、魔力が微塵も無かった。


 そうなると親戚が新しく妻を迎えて別に子を作れとか、カールをどっかに養子に出せとか、口出ししてきた。

 しかし父親は妻の忘れ形見のカールを手離したくない。


 生きている間は自分が目を光らせていればいいが、自分に何かあったなら魔法を使えないカールの地位が危うくなる。


 そう気を揉み続けてきたことだろう。




 だからオレも最後にお節介を焼く。

 この弟分のこれからを盤石なものとする為に。


 カールに特訓の終了を告げてから、喜びを分かち合う主従を止めて、こう言った。


「カール。喧嘩するぞ」


 主従は揃って目をパチクリさせ、ダニエラはそっとため息を吐いた。


 心配しなくてもむやみにけしかけるつもりはないし、ちゃんと意味があっての事だ。


 その辺りを説明する。


「いいか。お前は次期当主だ。


ってことは、これから先どうしようもないしがらみに囚われて自由に身動き出来ない。どんな理不尽に遭っても、異議を申し立てられない事もあるだろう。


 だがな。これは受け入れなくていい理不尽だ。舐められちゃいけないことだ。


 だったらその喧嘩、買ってやれ」


 人生経験も前世と合わせて二十四年しかなく、世間の荒波にろくに揉まれた事の無いオレが語るには、酷く空虚で実が無い話だ。


 だが、この事に関して退くな、無かったことにするな、ってのは紛れも無い本心だ。


 カールは今ならかつてのいじめっ子どもを見返すだけの技量がある。才能がある。


 それでもそいつらにカールを痛めつけて泣かしてやったという昏い、嗜虐的な『思い出』がある限り、カールは軽く見られるだろう。


 そして、その度にカールは傷つけられた心の傷が疼くだろう。


 だったらそれを丸ごと叩きのめしてやれ。


 鮮やかに。鮮烈に。完膚無きに。


 蝶のように舞い、蜂のように刺す!!


 ……おっといかん。熱くなった。



 コホコホと空咳をすると気を取り直す。そうすると、ここでやっとカールが口を開いた。


「……でも……やられたから仕返しをすると、僕まで彼らと同じになりそうで…」


 そらそうだ。

 いじめられたりすると、そいつらが憎い、というよりもそいつらの同類になりたくないって強く思うもんだ。


 それに、ただの仕返しや意趣返しをしたら、果てなき報復の連鎖が始まって切りが無いし、何より男が下がる。



 俯いて暗くなったカールにニヤリと歯を見せて笑う。


「心配すんな。そんな闇討ちみたいな程度の低いやり方はしねぇよ。


 喧嘩の作法、教えてやるよ」





「中々過激な理論でしたね」


 部屋に戻って早々そう言ったダニエラを振り返る。


 何時もの通りで、オレを窘めようとかいう雰囲気じゃない。

 だからいい機会だと、ダニエラにも伝えておく。


「…ダニエラも、何かあったらオレのことを気に掛けずに行動に移してもいいぞ?」


 学校(ここ)にはいけ好かない奴もいるだろうし、マーサ(仮)の事がある。

 どんな奴に何をされようとダニエラは平気の平左だろうが、いざと言う時は否を唱えてもいいと思う。


「私は誰かにそうと言われたからといって、行動に移しは致しませんよ。


 動くのは自分で決めます」


 ……かっけぇ……


 思わず口をポカンとして感嘆してしまった。

 そんなオレにダニエラは頭を下げ、非礼を詫びる。


「出過ぎた事を申しました」


「…いや…」


 とここで、ある事を思いついた。

 ダニエラは巻き込むまいと思ったが、気が変わった。


 ニヤリと歯を見せて笑い、ダニエラに「…悪だくみを思いついたようなお顔ですね」と呆れられる。


 ああそうだな。悪だくみだろう。何しろオレの計画にお前を巻き込むんだから。

 

 それでもお前はオレに付き従ってくれるんだろう?


「やってもいない事で責任取らされんなら、いっそのこと加担しないか?」




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