第二の人生でもやらかしました
気が付いたら念願のランキングにのっていました。
本当にありがとうございました。
それからダニエラは色々と調べ、手回ししてくれた。
改めて知ったウチのメイドさんのハイスペックさ。
結果、カールのいじめっ子連中の名前も顔も素性も各家での立ち位置も調べ上げてくれたよ。
お前は諜報員か。それとも腕利きのエージェントか。
その情報を元に念入りに作戦を練り、満を持したある日。
オレは担当教師に魔法の授業の見学をしたいと申し出た。
教師は良い顔をしなかったが、片眼鏡を渡して〝魔力制御〟の魔具だと言うと、何とか許した。
一応調べてはいたが、モノクルには〝術式誤認〟の魔法をかけている。
それに引っかかった教師は〝魔力制御〟の魔法がかかっていると、オレの魔法を読み取った。
この程度の魔法で騙されるとはたかが知れてるな。
兄貴や叔父貴なら一発で見抜くぞ。
……いや。比較対象が悪かった。
兄貴は押しも押されぬ〝魔法の貴公子〟・〝魔術の申し子〟だし、叔父貴も小・中・高と様々な武勇伝、伝説を残した人だ。
それに、わざわざモノクルを見せることも無かったんだが、これには他の理由もある。
後に実行する『計画』の為に、ダニエラに変装魔法をかけて生徒に紛れさせていた。
そこでこの場で一番魔法に造詣があり、魔力のあるはずの教師にもオレの魔法を見破れないと確かめる為に、わざわざモノクル見せた。
これでダニエラの正体が見破られることは無い事がわかった。
さて。今日の魔法の授業はざわめいていた。
理由は二つ。
一つ目は何かの〝特例〟(実際は差別だと思うが)からこれまで参加していなかったオレが見学をしていること。
もう一つは魔力が無い(と思われている)せいで魔法が使えず、授業に出席しなくなったカールが参加していること。
興味半分な連中がほとんどだが、カールを遠目で見て嘲笑う嫌味なガキどもも見受けられる。
…こら。喧嘩しがいがあるな
同じ土俵に上がる気も無いが、無理やり引き摺り上げさせてもらうぜ。
魔法の授業と言っても、ハ〇ポタみたく呪文を習って練習するとかじゃない。
この段階(小学校入学時)じゃそこまでいけないんだ。
じゃあ、こいつらは何をしているかというと、自分の属性の象徴を具現化出来るようになるべく魔力の放出と、思う通りの魔法を引き出せるようイメージトレーニングをしている。
だからマッチ程度の火でも出せれば優秀な方だ。
………つくづくオレがカールに求めたレベルは高すぎたらしい。
バッベルに聞いたが、意外と魔力を放出するってのは難しいらしい。
よしんば放出出来ても、自分の思う通りに魔法として形にするのは余程の努力と辛抱強い指導が必要なそうだ。
だったらカールが自分の属性を出して見せるだけで良かったかな、と思い直しかけたが、それはオレの喧嘩の流儀が許さない。
『もう二度と舐めた真似させない。
喧嘩の作法はそういうもんだ』
ってのがオレの根底にあってな。
授業では出席確認の時に、その生徒の熟練度の確認と、それを受けての指導方法を検討する為に属性を具現化する。
そして教師はカールの番になると、さっさと名簿に×付けやがった。
…よし。やっぱりやっちまおう
そう決めてオレは教師に異議を申し立てた。
教師は「何もわかってないくせに」みたいな馬鹿にしたような顔をしたが、こう進言させてまで止めるのは面倒と思ってか、カールにやってみせるよう言った。
カールはオレを見やり、オレは黙って頷いてやった。
ここにいる連中に目に物見せてやれ。
オレの励ましを受けてかカールはコクリと頷き、口元を引き締める。
「……では。このように」
カールは右手にハンドボール大の水の球を作り出した。
この時点で教師は目を剥き、周囲もどよめく。
驚くのはまだ早い。
続いてカールは左手につむじ風を閉じ込めた同じ大きさの球を作り出す。
イメージとしてはNA〇UTOの螺〇丸みたいな感じだ。
そして両手を合わせ、霧を起こす。
これで何が起ころうとはっきりと視認できない。
『計画』の下地は出来た。
オレとダニエラは目を合わせ、次の行動の準備をする。
二つの魔法を組み合わせて違う効果を生み出す。
これは高等部の内容だ。
だからこそ呆気に取られるばかりの周囲が邪魔なんで、蹴散らす為に水を撒き散らす。
濡れないように生徒は逃げ惑い、そのどさくさに紛れてオレとダニエラはいじめっ子をカールの周辺3メートル地点に放り投げ、追いやる。
ダニエラは首根っこ引っ掴んで放り投げたが、オレは蹴飛ばしてやった。
いじめっ子全員をカールの周りに集めると、他の生徒に万一でも危害が及ばないように、女生徒諸君の為に服が汚れないよう、ついでに仕切りの為にオレらを取り囲むように結界を張る。
この時点でダニエラは撤退だ。
GOサインを出すと、カールは水の弾を大きくし、周囲に撃ち込む。
精密なコントロールでいじめっ子どもには掠りもしないが、自分の近くの地面が抉られていくのを見て怯え切り、小便を漏らして泣き喚く。
いじめっ子以外の連中も〝落ちこぼれ〟、もっと言うと〝出来損ない〟と思っていたカールの強大な魔力と自分達と段違いの魔法に度肝を抜かれ、止められることも無い。
教師がやっと我に返った時には止めようも無い程カールの魔法は展開されていた。
やれやれ
肩を竦めるが、教師に無理やり止められて幕引きってのも味気ない。
そう思い、オレは当初の予定通り、地を蹴ってカールの懐に潜り込む。
魔法無しでも10メートル位の跳躍はお手の物だ。
この辺りは前世の修練と、今世の祖父さんとの修練のおかげだな。
足元に着地し、立ち上がるとカールにニカリと歯を見せて笑いかける。
「ちったぁ気は済んだか?」
「うん」
「じゃあ、幕引きとしようや」
そしてオレ達の奇妙な協力関係も。
カールを面倒がって手離す気も見捨てる気も無い。
ただ、オレとカールじゃ、作るべき人間関係やその関係性の中身や方向性が違う。
カールは今までろくにそれらを作ってこれなかったんだから、尚更その構築に力を入れないといけない。
その中では誰かの取り巻きになる、とはいかないまでも仲間内で動いたりすることもあるだろう。
そうなると、オレは邪魔だ。
そこで手を引くことにした。
もうこれまで通り過がりのお節介としては過ぎた事をやったし、その役目も十全に果たした。
だからお前はこれから先、一人で踏ん張るんだ。
心配すんな。また何か困ったら助けてやるから。
それに、また茶でも飲もうや。




