作中で意図的に作中人物を誘導=読者を誘導
ついでに連続投稿です。
さて、これがトリックありきたり問題を後から何とかする最後の手。
作中で意図的に作中人物を誘導=読者を誘導 です。
非常に大雑把に言ってしまえば、これは叙述トリックの一種になります。
つまり、読者を騙すわけです。どういう風に騙すかというと、別のトリックを使ったように思わせるんですね。誘導させるんです。
で、以前書いたと思うんですが、叙述トリックを作中の人物が仕掛けるのは変です。当然ですが。(読者のことなんて知らないわけだから)
かといって、じゃあ作者が仕掛ければいいかというと、どうですかねえ。それができるんなら苦労しないというか、それをするならプロット時点から無茶苦茶精密に組んでないと難しいと思います。トリックをありきたりにしない、という付け焼き刃でしていいことではないんじゃないでしょうか。少なくとも作者はできません、実力的に。
じゃあどうするのかというと、「作中人物(主に視点人物)を騙すために犯人が仕掛けた」トリックとするということです。そうなれば、作中人物が騙される=読者も騙されることになりますので。
とにかく、そうやって読者を誤った方向に誘導することができれば、トリックがバレる危険は減りますし、少なくとも話が終わるまでの間にありきたりだと思われることはないんじゃないですかね。
さて、この手が優先順位が最下位なのは、いくつかの理由によるものです。
①連続して使えない
この手はパターン化しやすいと思います。こちらからヒントを出す(もちろん間違ったヒント)形になるので目立ちやすいというか。を読者が「あー、こうやってこっちを騙そうとしてるのね、はいはいいつものパターン」と思ってしまったら終わりなので、ミステリを数書くのならこれは数話ごとにしか使えません。前回の否定するやつとかは、ある意味当たり前なので(作中の誰かが「こうやったんじゃないか」と推理してそれが否定されるのなんて、むしろほぼ必須要素なくらいですよね)目立たないんで連続使用できるけど、この手はなあ、と思います。
②間違った誘導先に工夫が必要
誘導したのはいいけど、そっちの方向で犯行が可能だったら元も子もないですよね。だから、誘導した方向では絶対に犯行は不可能でなければいけません。
ところが、ぶっちぎりで不可能だと、そもそも誘導されてくれる可能性が低くなります。だって明らかに無理なんだから。
なので、無理なように見えてよく考えたら抜け道がありそうだけどやっぱり無理だった。
みたいな、うまい誘導先を考えなくてはいけません。結構ハードル高いですよねえ。
③できれば、それが間違っているはっきりとした理由が欲しい
うまくいけば読者のほぼ全員がそちらに誘導されるということは、解決編でその誘導が間違っている理由が一言で提示できた方がいいです。すぱっと「こうこうこうだから、そっちの方向は違う」となって「なるほどーそりゃそっか」と読者に思ってもらわないとなかなか難しい。
しらみつぶしに考えたら、やっぱりそっちじゃあ無理かあ、だと爽快感がないですし、なによりも抜けがあるかもしれないのが恐ろしいです。
以上から、これはそうそう多用していい手ではないんでしょうな。




