記憶ー小学六年生ー
…体育祭が近づいた5月中期、突然“それ”は訪れた。
いつものように、ご飯の支度をする時間に父親の姿は無かった。
いつもなら既に帰ってきているのに…
不安がよぎる。
………。
無言という重い空気が流れる空間。私はそこに居ることすら辛かった。
逃げよう。
部屋にこもり、ゲームを始める。
リリリ…!
ふいに鳴る電話。
母が電話に出る。
「もしもし…」
最初は冷静に対処していた母も段々顔色が悪くなっていく。
ついに、話が終わる頃には真っ青になり、涙を流していた。
流石に私も、電話が鳴った時から悪い予感はしていた。
…悪い予感は的中してしまったのだ。
“父親の死”
会ってまだ間もない。
優しい父親は呆気なく、天へいってしまった。
私は、コミュニケーションを取らなかった事を心底後悔していた。
最後に交わした言葉が、
「こんなに沢山の胡瓜どうするの?」
だなんてね…
我ながら馬鹿馬鹿しい。
あんなに優しくしてくれた父親に、ありがとうすら言えなかったなんて。
数日後、父親の葬式が行われた。
私は葬式の間、ずっとハンカチを濡らしていた。
葬式が終わる頃には、ハンカチが全面涙に濡れていた…
人間の死というものに、初めて直面した私にとって、これほど衝撃的な事は無い。
父親は生まれつき心臓が弱く、車の中で疲れて眠っている際に発作が起き、そのまま亡くなったらしい。
同じ仕事場の仲間が、死んでいる父親を見つけたのは、その三時間後くらいだった。
既に手遅れの状態で…。
しかし、父親の死に顔は安らかだった。
外傷も何も無く、まるで寝ているかのような…
あれ?何でこんな所に?
と今すぐ起きて言ってくれそうな…
体の冷たさ、心臓が停止している以外は、生きたままの状態だったのだ。




