1-9.結末
「ローラが人質になって、バジルがケルンに逆らえない状態にある。ローラが無事と知ればケルンの言いなりになることはない。ローラと宮殿に戻ろう」
ヒュンケルはシズ、セレナ、ローラと宮殿に転移した。
宮殿では。
バジルがシャーロットに
「兄上たちの処刑が明日に決まった。街の広場に刑場の準備が行われている」
と告げていた。
「セレナだけでも刑をまぬがれたのはよかった。しかし・・ローラはどうなる」
「ケルトンは私が従っている限り、ローラの命を奪わないだろう」
「・・そうか」
シャーロットが覚悟を決めているところに、ヒュンケルたちが現れた。ローラも一緒だ。
「ヒュンケル・・」
「ローラは無事、取り戻した」
「感謝する」
バジルも
「ローラなのか・・」
と目を疑った。
「お父様・・」
ローラは父のバジルに駆け寄った。
「ヒュンケルさまたちが助けてくれました」
「ヒュンケルどの、感謝する」
「セレナはローラを探すために城を出たんだ。セレナの手柄だ」
「ありがとう。セレナ」
「ローラが戻れば、ケルンの言いなりになることはないな。ついでにケルンも始末してやってもいい。あとは国王が采配を振って納めてくれ」
「承知した」
ヒュンケルとシズはトリエルタウンに転移した。そしてケルンが居住する館の前に行った。
「さて・・堂々と正面から入って挨拶するか」
ヒュンケルとシズは館の中に入っていった。邪魔する者たちを倒しながら奥に進んだ。
「何者だ」
「お前がケルンか。俺は魔王ヒュンケル」
「魔王?・・ローラを奪ったのはおまえか」
「返してもらっただけだ。おまえのおかげで迷惑しているのは国王たちだけではない。よって始末にきた」
「魔術師のセバフも倒されたようだから、その力は認めてやろう。俺も魔術師、易々とやられるつもりはない」
ケルンは自分の前に魔方陣を出し
「マジックバースト」
攻撃魔法をヒュンケルとシズに放った。
しかしケルンの攻撃魔法はヒュンケルのマジックバリヤー(魔法障壁)で防がれた。
「ふ、は、は。俺の敵う相手ではないようだな。国王側にお前のような者が居るとは思わなかった」
ケルンは自分の力の弱さを悟った。
「国王についているわけではない。俺は旅をしている冒険者だ。たまたまこの国に来て、村の惨状を見て関わったのがきっかけだった」
「そうか。・・自警団が勝手な振る舞いをはじめたことは俺も知って驚いた。いずれにしても、俺が撒いた種だ。責任転嫁をするつもりはない。出来れば楽に死なせてくれ。俺を倒してくれたら真相を話してやる」
「真相?」
「この国の騒動のからくりだ」
「俺は敵意を持たない者を殺めたことはない。確かにここには、お前を倒すつもりで来たのだが・・」
「やさしい魔王だ。では、こちらからいくぞ」
ケルンが剣を抜いてヒュンケルに向かってきた。反射的にヒュンケルは大剣で応戦、隙だらけケルンのわき腹を切り裂いた。
「わざと切られたのか」
「出来れば、この国を救ってくれ。この騒動の計画はバジルが考えたもの。ローラはバジルに頼まれて託っていただけだ。バジルが国王になるために、俺にローラを奪われたようにみせかけた・・そして、俺に命じられて国王の処刑をする手はずだった」
「そうだったのか」
「最後に会えてよかった」
ケルンは息絶えた。
「倒す相手はバジルだった」
◇
ヒュンケルとシズは宮殿に転移した。
玉座の間に、シャーロットとドリスが倒れていて、傍にバジルが立っていた。
「遅かったか」
ヒュンケルはシャーロットとドリスが息絶えているのを確認した。
バジルが
「明日の処刑の前に、二人は自ら自害した」
とヒュンケルに言った。
「お前が殺したんじゃないのか?」
「何を言う」
「ケルンが真相を話してくれた。お前の計画をな」
「知ってしまったのか」
「セレナはどうした」
「セレナは蘇生魔法が使えることもあって、ローラと私の館に行かせた」
「その間に国王暗殺を・・俺が殺めるべき者は、ケルンではなく、お前だった」
「待て。きみは他所者。旅をしているとか言ってなかったか?」
「本来なら国の政には関わりたくないが、・・お前は別だ」
「頼む。命だけは・・」
「ライトニング」
ヒュンケルはバジルを気絶させた。
クラウスが村から戻ってきた。
「これは・・」
「説明する。セレナはバジルの館に居る。案内してくれ」
ヒュンケルはクラウスにバジルの館に案内させると、セレナに事情を話した。
「叔父様が父と母を?」
ヒュンケルが宮殿に連れて戻ると、セレナがシャーロットとドリスを蘇生させた。
それからヒュンケルが真相をシャーロットとドリスにも話した。
「後のことは国王に任せます。もし、この国がよくならなかったら、制裁に来ますよ」
ヒュンケルはそうシャーロットに言ってワイナ村に転移して戻った。
サラやルウにも事情を話し
「明日から、また旅に出ます。ときどき転移して戻ってきて、みんなが平和に暮らせているか確認してあげるから」
と言った。
「そのときを楽しみに待っています」
ヒュンケルとシズは、再び旅に出た。
その先にはアリオン神国があったが、知る由もなかった。




