< プロローグ >
元の世界で営業マンをしていた佐藤誠は、異世界に転移し、ロワール城で魔王ヒュンケルを名乗り、魔族や魔物たちと暮らしはじめる。
ハーロックを名乗る雅則がロワール城を訪ねて来たことで雅則、悠介、美緒の3人も転移してきて、ワリキュール王国で暮らし始めたことを知る。
異世界で暮らす人族は、生活を魔法に頼っていて、学校も病院もない。そして科学も発達していない中世代のような環境だった。そして人族以外に魔族や魔物などいろんな生き物が存在していた。
雅則たち3人はチーズやワインなど新しい食べ物、飲み物を生み出したり、SLや自動車、電気といったものを作り出し、人族の生活環境を変えていく。
近隣のスラーレン法国がマルケドーラ帝国に狙われ、ヒュンケルと雅則がマルケドーラ帝国を潰し、スラーレン法国を救う。
その後、ヒュンケルは雅則からスラーレン法国の国王に推され、玉座に座る。
しかし貴族たちが反旗を翻し、雅則が貴族街を壊滅させ、スラーレン法国の王族政権は崩壊する。
その後、ヒュンケルは国政は自分には無理と悟り、ロワール城に戻った。そして魔族のシズ・イプシロンたちと再び暮らしはじめる。
◇
ある日のロワール城。
ヒュンケルは興味を引くものを発見した。
シズが飲み物を運んできてヒュンケルが何かに目を通しているのを見て
「何をしているんですか?」
と聞いた。
「古書を見つけてね。ロワール城をつくった人族がしたためたものらしい。彼らはスラーレン一族たちに追い出されたが、古書は残されたようだ。彼らがここにたどり着くまでのことや、以前のことが書いてある」
そう答えた。
「ヒュンケル様はそれが読めるんですか?」
「不思議にな。例えばシズたちの会話も『言語翻訳魔法』で理解出来る。同じように文字も理解出来る『文書翻訳魔法』のようなものが働いているのだろう」
「それで、面白いものでも書いてありました?目が輝いていたようですけど」
「そうか? 確かに面白い。この世界のことが、また少しずつわかってきたような気分だ」
ヒュンケルはシズが持ってきてくれた飲み物を口にして
「この近辺やスラーレン法国に進攻してきたマルケドーラ帝国も、(大神官)ハスラーが居た国、アリオン神国方面は後回しに避けていた。ロワール城をつくった人族は、別の方面から移ってきたようだ。シズ、旅をしてこないか?」
「旅・・ですか?」
「ここの暮らしも悪くないが、この世界がどんな世界なのか、他にどんな国があり、どんな生き物が居るのか興味が湧いてきた」
「私も、今はここでヒュンケル様の世話をさせてもらってますが、移ってきた種族の話を聞くこともあります。ヒュンケル様と一緒なら、どこにでもお供しますよ」
「シズが居てくれれば、俺も安心だ」
佐藤誠は、魔王ヒュンケルとして、この異世界に来て10年近くなる。この先、また元の世界に戻れるか保証はない。また、戻れたとしても、それを喜べるかはわからない。元の世界で幸せに生きていたとは言いがたい。しがない営業マンになり、最後は引きこもりの生活を送っていた。
そして転移してきたいきさつに違いはあるにせよ、ハーロック(雅則)たちは、この世界での暮らしを楽しんでいる。誠もこの世界での生き方を模索しようと思い始めていた。
◇
旅立つ前にヒュンケルはシズを連れてワリキュール王国の雅則たちの館に転移した。雅則たちに挨拶をしてから旅立とうと思ったからだ。
だが館に居るのはカリナだけだった。
「また驚かせて申しわけない。今日もカリナだけか」
「はい。みんな仕事に出ています。ハーロックさんと悠介さんはアリオン神国方面に出ています」
「アリオン神国?」
「美緒さんになら電話で伝えることが出来ます」
カリナがスミスコーポレーション本社の美緒に電話した。
「電話までつくっていたとは・・」
「すぐ戻ってくるそうなので待っていてほしいそうです。飲み物、出しますね。私も喉を潤したくて(二階から)下りてきたんです。牛乳もあるけど・・ワインもありますよ」
「美緒さんがつくったというワイン?」
「はい。赤ワインと白ワインもあります」
しばらくして美緒が戻ってきた。
「ヒュンケル、お久しぶり」
「自動車で戻ってくると聞いたが、わからなかった。転移してきたのか?」
「自動車で戻ってきたのよ。カリナがエンジンの音が大きく聞こえないように改良を重ねてくれているのよ」
「それは素晴らしい」
するとカリナが褒められて照れていた。
「ハーロックたちはアリオン神国方面に出かけているとか」
「ええ、そうなの」
アリオン神国はスラーレン法国にやってきて王に取り入って権威を手にして代神官を名乗ったハスラーが、ハーロック(雅則)に敗れて戻っていった国だ。そのアリオン神国方面の騒動に関わった雅則と悠介が出かけて居るという。
「どのくらいで帰ってくるんだ?」
「わからないわ。無事帰ってくると思うけど」
「彼女を紹介する。シズ・イプシロン。俺に仕えてくれるデュラハンだ」
「話は聞いているわ」
「はじめまして。シズ・イプシロンです」
「スラーレン法国の国王をしていたときはスラーレン法国の歴史やロワール城との関係を調べたことがある。学生時代も社会科はあまり得意ではなかったが、古城や神社仏閣を見て回るのは好きだった。スラーレン法国やワリキュール王国を建国した人族たちも別の土地から移ってきた民族であることも知った。そこで他にも国があるだろうと興味が湧いてきて、それで、シズと二人で旅をしてこようと決めたんだ。ハーロックが居ないときに力になれないのは申し訳ないが」
「そうなの。私たちに気遣いは無用よ。急がないなら私がつくったワインを飲んでいかない? ヒュンケルもお酒が好きだと聞いているわ。大きなお風呂もあるし」
「なら、一晩、泊まっていこうかな」
ヒュンケルとシズは、館に泊まってそれから旅立つことにした。
そして翌朝。
「ハーロックが戻ったらよろしく伝えておいてくれ」
ヒュンケルとシズはロワール城に転移して戻った。




