38-球技大会④
少し遅れてすみませんでした!
「それでは2組と6組による決勝戦を始めます!」
球技大会2日目。僕たち2組は決勝トーナメントを勝ち進みいよいよ決勝戦を迎えようとしていました。僕という足でまといがいるのにここまで来れるなんて蓮也含めクラスメイトたちは凄いですね。
「ほら一成、ボーッとしてないで円陣組むぞ!」
「あ、はい!」
いけません。ちょっと感傷に浸ってしまいました。蓮也に呼ばれたのでチームメイトたちの輪の中に入ります。
「さぁ、泣いても笑ってもこれでラストだ。どうせなら笑って終わろうぜ……絶対勝つぞ!!!」
「「「「おお!!!」」」」
◇◆◇◆◇◆◇◆
さて、試合が始まってしばらく経ちましたが依然としてお互い得点なし。実力が拮抗しているため攻めて、攻められてという状態が続いています。
問題があるとすれば僕の相手がサッカー部だということですね。相手が攻めてくる時は基本的に僕のいる方から攻めてきます。おかげで僕も休む暇があまりなく、前半も終わっていないのに体力の残りが少ないです。
「また来ましたか……」
休む間もなくサッカー部の子にボールが渡りました。静江さんから教わったことの一つ、「距離を取ってマークする」のおかげでカットできませんが、これまでなんとか抜かれずに済んでいます。
ただそのおかげで走る時間が伸びて大変なんですけどね。でも弱音は吐けません。とりあえず前半なんとか走り抜きましょう。
結局この後、抜きにかかってきたサッカー部の子をなんとか凌ぐものの、ゴール前へ一気にパスを出されてしまいました。ですがなんとか味方が防いでくれ、そのタイミングで前半が終了。ハーフタイムが始まりました。
「大丈夫?」
「弥恵、水筒ありがとうございます。なんとか生きてますよ」
弥恵が持ってきてくれた水筒でカラカラに乾いた喉を潤します。あぁ……冷えたお茶が美味しいです……
「まぁ、試合が終わるまで誤魔化しながらやるので大丈夫ですよ」
「ん、頑張って」
◇◆◇◆◇◆◇◆
そう弥恵に言い残したもののもう体力は底をつきました。蓮也たちが攻撃してくれているので膝に手をつくもなんとか息を整えようと試みます。
そうしていたら観客席から何やら歓声が。慌てて顔を上げると蓮也たちが戻ってきています。完全に見てませんでしたが、どうやら蓮也が得点を決めたようです。
これで1対0。時間もおそらくそう多くありません。つまり次が相手の最後の攻撃になるかもしれないということです。絶対に1点欲しい相手がどこから攻めてくるか、そんなの素人の僕でも分かります。
「やっぱり来ましたか……」
最後の体力、いえ気力を振り絞りコートの端を駆け上がる相手について行きます。確かこんな時の対処法を静江さんが行ってましたね。
『相手がサイドをドリブルして攻めてくるとき、しっかりと一成くんがついていけてればたぶんどこかで1度立ち止まる。それでマークを外してから中にパスを出すはずさ』
正しく今はその状況です。つまりいつでも止まれるように、でも全力で置いてかれないようにします。
気がつけばコートの隅まであと少しです。そう思った次の瞬間、相手が急ブレーキをかけたので僕も止まります……が相手は直ぐに再加速しました。
(そっちですか!?)
想定外の事態に出だしが遅れた僕。相手は既に中に蹴り込むため準備をしています。これはまた足を引っ張りましたね……
「かずくん!」
そうでした。応援してくれる人がいるのに諦める訳に行きません。せめてもの足掻きでなんとか足をボールの前に投げ出します。
そんな悪あがきを勝利の女神は見てくれていたのでしょうか。サッカー部の子の蹴ったボールは僕の足の先に当たって方向を変え、そのままコートの外へ。そして鳴る笛の音。
この瞬間僕たち、2組は球技大会男子サッカー3年の部の優勝が決まりました。
球技大会編は次でラストです!




