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導きの灯り〜阿門甲斐吽〜  作者: 阿門 甲斐吽


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【第30話】龍の咆哮


 (しま)中央(ちゅうおう)にそびえるドス(ぐろ)鳥居(とりい)()こう(がわ)から、世界(せかい)そのものを()()まんとする破滅的(はめつてき)気配(けはい)津波(つなみ)のように()()せた。


 (たちばな)翔平(しょうへい)柏木(かしわぎ)(みなと)意識(いしき)(うしな)い、神楽坂(かぐらざか)弘恵(ひろえ)もまた神楽鈴(かぐらすず)()()としてその()(くず)()ちている。


 (だれ)もが(うご)けない絶望的(ぜつぼうてき)状況(じょうきょう)(なか)阿門(あもん)甲斐吽(かいうん)はたった一人(ひとり)巨大(きょだい)怨念(おんねん)化身(けしん)(まえ)()(ふさ)がっていた。


 しかし、その肉体(にくたい)精神(せいしん)にかかる負荷(ふか)は、もはや人間(にんげん)限界(げんかい)(とお)()えていた。


「ぐっ……!」


 甲斐吽(かいうん)喉元(のどもと)から(あつ)いものがこみ()げ、(くろ)岩肌(いわはだ)鮮烈(せんれつ)(あか)()()()る。


 連続(れんぞく)する(はげ)しい攻防(こうぼう)と、(しま)全体(ぜんたい)(おお)重圧的(じゅうあつてき)呪的(じゅてき)エネルギーが、(かれ)内臓(ないぞう)内側(うちがわ)から()()くように(むしば)んでいた。


 全身(ぜんしん)血管(けっかん)()()がり、愛用(あいよう)仕込(しこ)(づえ)(にぎ)両手(りょうて)(てのひら)からはとめどなく()(なが)()ちている。


 それだけではない。


 人間(にんげん)(あらが)うことのできない巨大(きょだい)異変(いへん)は、この(しま)だけでなく、鹿児島(かごしま)大地(だいち)そのものを根底(こんてい)から(くる)わせ(はじ)めていた。


 ゴゴゴゴ……ッ! と、足元(あしもと)(くろ)岩盤(がんばん)がすさまじい(いきお)いで上下左右(じょうげさゆう)(はげ)しく()(うご)き、()っていることすら困難(こんなん)なほどの強烈(きょうれつ)地震(じしん)発生(はっせい)した。


 (わん)(はさ)んでそびえ()桜島(さくらじま)山頂(さんちょう)からも、突如(とつじょ)として赤々(あかあか)とした不気味(ぶきみ)なマグマの閃光(せんこう)夜空(よぞら)()がし、ドス(ぐろ)噴煙(ふんえん)膨大(ぼうだい)火山灰(かざんばい)(てん)()くように()()がっている。


 大正(たいしょう)大噴火(だいふんか)再来(さいらい)(おも)わせる(すさ)まじい天変地異(てんぺんちい)前触(まえぶ)れが、世界(せかい)()わりのない混沌(こんとん)へと()きずり()もうとしていた。


「これほどの……地脈(ちみゃく)(みだ)れと大地(だいち)悲鳴(ひめい)か……!」


 甲斐吽(かいうん)(ひざ)をつきかけながらも、気力(きりょく)()(しぼ)って仕込(しこ)(づえ)先端(せんたん)地面(じめん)()()し、どうにか()みとどまった。


 (そら)(おお)(くろ)(くも)(はげ)しい稲妻(いなづま)(ともな)ってうねり、(しま)全体(ぜんたい)がまるで()(もの)のように(ふる)えている。


 深海(しんかい)元凶(げんきょう)地表(ちひょう)結界(けっかい)完全(かんぜん)崩壊(ほうかい)しかけ、このままでは鹿児島(かごしま)一帯(いったい)文字通(もじどお)りマグマと怨念(おんねん)(そこ)へと(しず)みかねない。


 視界(しかい)(ゆが)み、意識(いしき)(とお)のいていく(なか)甲斐吽(かいうん)決死(けっし)覚悟(かくご)阿門家(あもんけ)(つた)わる秘術(ひじゅつ)(いん)(むす)んだ。


「――(あらわ)れよ、霧島(きりしま)()べる大霊脈(だいれいみゃく)守護者(しゅごしゃ)(あお)(りゅう)よ……!」


 甲斐吽(かいうん)(さけ)びと(とも)に、(しま)(かこ)(くろ)海面(かいめん)(はげ)しく()れ、悠久(ゆうきゅう)(とき)()きる巨大(きょだい)(あお)(りゅう)(かげ)(てん)()(いきお)いで顕現(けんげん)した。


 (りゅう)(うろこ)神々(こうごう)しく(かがや)き、その巨体(きょたい)から(はな)たれた圧倒的(あっとうてき)神気(しんき)が、周囲(しゅうい)瘴気(しょうき)一瞬(いっしゅん)にして()(かえ)す。


 しかし、怨念(おんねん)化身(けしん)もただでは()わらなかった。


 太古(たいこ)絶望(ぜつぼう)結晶化(けっしょうか)したその怪物(かいぶつ)は、(りゅう)出現(しゅつげん)激昂(げきこう)するかのようにさらにその体積(たいせき)倍以上(ばいいじょう)(ふく)()がらせ、無数(むすう)触手(しょくしゅ)(から)みつかせて反撃(はんげき)()た。


「ぐああっ……!」


 (りゅう)(ちから)をもってしても、蓄積(ちくせき)された(のろ)いの奔流(ほんりゅう)底知(そこし)れず、()()せる圧倒的(あっとうてき)質量(しつりょう)呪縛(じゅばく)(まえ)甲斐吽(かいうん)(すこ)しずつ()(もど)されていく。


 (りゅう)巨体(きょたい)怨念(おんねん)(どろ)(から)()られ、その神々(こうごう)しい(ひかり)次第(しだい)にかき()されていくほどの(すさ)まじい苦戦(くせん)だった。


 甲斐吽(かいうん)全身(ぜんしん)(ふか)(きず)()い、仕込(しこ)(づえ)()(うで)(しび)れて感覚(かんかく)(うしな)っていく。


(ここで()わるわけにはいかない……!)


 絶望的(ぜつぼうてき)泥沼(どろぬま)攻防(こうぼう)(なか)奇跡(きせき)はまさにその極限状態(きょくげんじょうたい)()きた。


 (とお)くで(たお)れていた弘恵(ひろえ)が、(かす)かに指先(ゆびさき)(うご)かして意識(いしき)()(もど)した。


 その(きよ)らかな(すず)()(ふたた)闇夜(やみよ)(ひび)き、さらに(すこ)(はな)れた場所(ばしょ)(みなと)翔平(しょうへい)(あら)(いき)()きながらゆっくりと(からだ)()こした。


 仲間(なかま)たちの(むね)(うち)宿(やど)(あつ)(ひかり)共鳴(きょうめい)し、四人(よにん)意識(いしき)空間(くうかん)()えて(ひと)つに(むす)びついた瞬間(しゅんかん)世界(せかい)()るがすほどの(まばゆ)奇跡(きせき)(ひかり)爆発的(ばくはつてき)(ひろ)がる。


「みんなの(ちから)が……(わたし)宿(やど)る……!」


 弘恵(ひろえ)(きよ)めの波動(はどう)(みなと)祖父(そふ)から()()いだ加護(かご)翔平(しょうへい)のまっすぐな闘志(とうし)、そして甲斐吽(かいうん)霊気(れいき)(りゅう)(ちから)完璧(かんぺき)(かさ)なり()った。


 四人(よにん)(たましい)(ひと)つに融和(ゆうわ)したその瞬間(しゅんかん)(あお)(りゅう)(まと)(ひかり)がまばゆい黄金色(こがねいろ)神輝(しんき)へと昇華(しょうか)し、怨念(おんねん)化身(けしん)完全(かんぜん)(つつ)()んだ。


()くぞ……これが(わたし)たちの(きずな)(ちから)だ! 龍脈一閃(りゅうみゃくいっせん)――!」


 甲斐吽(かいうん)渾身(こんしん)(ちから)()めて()()ろした太刀筋(たちすじ)は、四人(よにん)(ちから)(たば)ねた不滅(ふめつ)(ひかり)(やいば)となり、怨念(おんねん)(かく)根本(こんぽん)から両断(りょうだん)した。


 断末魔(だんまつま)(さけ)びと(とも)化身(けしん)霧散(むさん)し、鹿児島(かごしま)()るがしていた天変地異(てんぺんちい)急速(きゅうそく)(しず)まり、夜空(よぞら)には本来(ほんらい)(うつく)しい星々(ほしぼし)(おだ)やかな(ひかり)()(もど)していったのだった。






(だい)30()(かん)






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