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加護ナシな無能令嬢は回帰したので弁が立つ 〜再会した愛しの従者が何故か前世よりも重い愛で囲ってきます〜  作者: 黒糖あずき
第一部

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34 片脚謀反者。

 我が家へ戻ってから、はや二週間あまり。

 イベントラッシュで既に気力の限界を越えていたレティシアは熱を出し、この二週間を寝て過ごした。

 そして今日は、回復を果たしたそのまた一週間後にあたる日。やっとロニー医師から許可が降りたレティシアは部屋を飛び出した。


「どういうことか、せつめいをもとめます!」


 のらりくらりと逃げるので、父を捕まえるのに一週間もかかった。

 行儀が悪いことこの上ないのは重々承知だが、レティシアは両手を力一杯机へ叩き付けて対面に座る両親へ前のめりに啖呵を切った。


「頬を膨らますレティシアも可愛いな」


 父がデレデレとそんなことを言う。


「私はしんけんに聞いているのです!」


 話を逸らすためか、本気で思って言っているのか――いや、両方だな?

 母も呑気に「そうねぇ」じゃあない。


「お父さま、お母さま。私のしゅくふくについての、あのお話はいったいどういうことですか?? だいしんかんさまは、 “しゅくふくのぎ” にどうせきしていらしたのに、しきてんで『ぜんちのしき』だなんて――いつわりのしゅくふくを、せんこくしてしまうなんて、おかしいです!」

「たしかに、大神官はお前に祝福はないと判断したよ」


 ぜぇぜぇ息を切らせた大神官様が父に殺気を飛ばされていたあの日の情景が頭に浮かび、ひとつの仮説が頭によぎる。


「でしたら……もしや、だいしんかんさまをおどしたりっ」

「まさか!」

「プリマヴェールの名をつかって……」

「爵位を盾に脅すなんてこと、今回はしていないぞ!」


 『今回は』とは何か。『今回もした』の間違いだろう。

 なんせ、父は大神官に向かって脅迫紛いのことをした前科がある。

 というか、『今回()』でもダメなのだが。


「まぁでも、お爺様がお前の予知夢について大神官様に話したのは本当だ。もちろんあくまで憶測として、レティシアの夢が未来予知(そういう能力)であっても不思議では無い、と進言してみたんだが」


 つまりは遠回しに、祝福無しの結果は間違いかもね? と、女神の使徒に言い放った訳だ。

 それを人は脅したと言うんじゃないだろうか……。と父と祖父の行動にレティシアは頭を抱えた。


「最終的には大神官自ら協力を申し出てくれた。土壇場だったが、助かったよ」


 祖父は任せておけと言っていたが、まさか大神官を丸め込むなんて予想外だった。

 だが、何故大神官は祖父たちの話を鵜呑みにしたのか。


「コレもその場にいたから、説得力は十分だっただろうな」


 父がコレと視線で示した先はルキウスだった。

 なるほど。

 合点がいった。


「こいつを見た途端、膝から崩れ落ちていたよ」


 ルキウスを見た大神官により、中央神殿の祈りの間は一時的に封鎖する事態になったとか。


『女神からの神託を正しく受け取れなかったのかもしれないッ』


 大神官がショックで寝込んでしまったかもしれないと考えると、なんかもういたたまれない。


「……このことにかんして、へいかはごぞんじなのですか?」


 どうか予想が外れてくれと祈りながら、胸騒ぎを払拭するために敢えて聞く。


「もちろんだよ。大神官と話し合った後、《前知の識》をお前が得た事は、報告してある」


 違う。

 そうじゃない。

 それは報告する内容が違っている。


「つまり、私がむのうしゃだと、ほうこくしていないのですね?」

「レティ、それでは語弊がある。お前は無能者じゃない。予知夢を見たんだろう? まだ祝福がないとはいいけれないじゃないか。だから、報告を遅らせた。ただそれだけの事だ」


 これは世紀の大犯罪じゃなかろうか。


「おくらせたって……。せけんには、私のしゅくふくが《ぜんちのしき》だとこうひょうしてしまったのでしょう!?」


 バレたら行先は破滅――プリマヴェール侯爵家存命の危機だ。

 それを回避するために奮闘しているはずなのに、まさか苦し紛れに放った言葉が死への直行便だったとは。


「はんきゃくざい……」

「お、難しい言葉を知っているな? 流石だ」

(だああああああっ!)


 緊張感の無さにレティシアはもうどうしていいか分からなくなった。

 片脚を既に謀反へ突っ込んでいるからこうも開き直れるのだろうか。


「まぁ大丈夫だよ。聡明なお前が何を心配しているかは父様もわかっているが、王は国の要であるプリマヴェール侯爵家を手放すことはないと言い切れるよ。いや、出来ないが正しいかな」


 自分はその手放された未来を知っているから、こうして心配を! と、そう言うわけにもいかず、脳内で頭を抱える。

 たしかに、プリマヴェール侯爵家を切ったのは、現国王マキシリミアンではなく次期国王チャールズだから今は心配する必要は無いのかもしれない。


(大丈夫)


 いや、本当に大丈夫……なのだろうか。


「なっとくはしていないですが、分かりました」


 バレた場合は、父と祖父(あと大神官)がどうにか交渉するのだろうとレティシアは言葉を飲み込み、あの日の父の発言で一番気になっていたことを訊いた。


「つぎが、ほんだいなのですが」

「うん?」

「ルキウスのことです」


 今回、両親を捕まえたのはこれが目的だ。

 レティシアの言葉に目を見開いた父が音を立てて席を立った


「貴方、座って」

「いや、だが、その、エストレラ……とりあえず君が話を――」

「座りなさい」

「ハイ……」


 しかし、母は有無を言わさぬ笑みで逃げ腰の父は逃げ場を失った。

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