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【第一部完結】加護ナシな無能令嬢は回帰したので弁が立つ 〜再会した愛しの従者が何故か前世よりも重い愛で囲ってきます〜  作者: 黒糖あずき
第一部

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32 救世主は発明家。

「映像があればレティは嬉しい?」


 自分に向けられるルキウスの視線はいつにも増して真剣だった。


「えっと……」


 ルキウスの問いかけに瞬発的に答える。

 そう答えなければいけない気がした。


「そうね。うれしい、と思う」


 答えたはいいが、『えいぞう』とはなんだろうか?


「分かった。レティ、僕があげた()() 。少し貸していただいてもいいですか?」


 ルキウスが指差したのは、レティシアの首元で白く輝く小さな立方体。実はコレ、彼がくれたペンダントだ。

 黒かったボディは見る影もなく真逆の色に染っているのには、歴とした訳がある。


「う、うん」


 レティシアはルキウスと交した肌身離さずという約束を守るため、強行突破の案として白粉を立方体にはたいた。

 主の突拍子もない行動に悲鳴をあげながらも白粉が簡単には取れないように工夫するのに尽力してくれたリアとミアには、帰ったら何か労りの品を用意しなければならないだろう。


「真っ白だね」

「あ、その、ごめんね、ルキウス。さすがにこのよそおいには、黒は――」


 侍女二人には苦労をかけてしまうことになったが、白い宝石(?)に見事化けたそれは違和感なく服に馴染んだでいた。


「ちょっと、むずかしくて」

「謝らないで。つけてくれているだけで僕は嬉しいから、気にしないよ」


 首から下げていたそれをルキウスに渡しながら、白くした言い訳を探してしまう。


「最初から白で作れば良かったかな――でも、僕の色は外せないし」

「ルカ?」

「ん? ああ、いえ。なんでもないですよ」


 ボソリと落とされた言葉はレティシアの耳にははっきり届かず聞き返すも、のらりくらりと躱されてしまう。

 控えめに微笑んだルキウスがチェーンからペンダントトップを外し投げた。

 ペンダントトップはローテーブルから数センチ浮遊し、直上へ向かい展開した光と共に鈍い電子音を発生させた。

 次第に聞こえてくるのは記憶にまだ新しい女の叫喚。


『――――っぱりどうせ! 無能者なんでしょ!? あの女と同じなんでしょうよ! アル様には釣り合わない無能の女!』


 スノーノイズが治まったペンダントトップから現れたのは、レティシアの膝程の高さに縮小された人間だった。

 そのミニサイズの人間は明らかにレティシアとルイーズで、鮮明な映像は彼女の憤怒の表情まで事細かに映し出す。


「なんなんだっ!?」


 初めて目にする “えいぞう” というものに伯爵の悲鳴に近い声が部屋に響いた。


「このキューブの記憶を具現化したものだよ」


 ルキウスの言葉にいち早く反応し身を乗り出したのはどうやらこのペンダントの仕掛けに心当たりがあるそうな父だった。


「――まさか記録器か??」


 語学に精通していた父は祖父から爵位を引き継ぐ前、外交官の補佐――通訳者として、度々駆り出されていたはずだ。他国の者らとの対話で、この国に存在しない物や事の情報を得る機会がある事は想像に容易い。


「きろくき……」


 レティシアの呟きに対してルキウスは小さく頷くと説明を続ける。


「その場の瞬間を視覚化して残すために開発された海の向こうの国の機械だよ。それに音声も残せるように僕なりのアレンジを加えてみた。どう?」


 どうと言われても、どう反応すれば良いのか。

 繰り返しになるが、回帰前の若い彼はこんなではなかった。

 登場早々に我が家の精鋭たち(ローザ騎士団)を伸し、父に喧嘩を売り、十二歳とは思えぬ色気を振りまいたかと思えば、爆速の馬車に張り付いていたり、挙句今度は画期的発明を成し遂げているなんて……。

 言葉にすると、ルキウスの存在がいかに逸脱しているかが際立つようだ。


「えっと……すごい、わね」


 ここまで来ては「回帰前とは様子がおかしい気がするなぁ」では済まされない域だ。


「確かに、祝福に頼らず発展した国があると聞いたことがあるが――まさか、こんなタイミングでお目にかかるとはな?」


 関心したように自身の顎を撫でたリーヴァイが父に話を振る。


「帝国の代物だな。俺も目にしたのは初めてだ。これをお前が作ったというのか?」

「これ、ビデオキューブって言うんだ」


 父にのみ適用される徹底的なスルースキルで一貫してルキウスはレティシアに向かって話す。

 「このガキが……」と父の額には青筋がたっているがルキウスはどこ吹く風。


「はい、終わり」


 彼は打たれる場面(決定的な瞬間)が流れる直前に映像を停めてそれを回収すると、満面の笑みで私の手にそれを納める。

 ネックレス、改めアクセサリー型記録器――《ビデオキューブ》が戻ってきた。


「えっと、ありがとう」

「うん」

「でもなぜ、ネックレスにそんなきのうを?」


 ほんの一瞬、ほんの一瞬だった。

 じわりと彼の目に狂気が見えた気がした。


「お姫様の成長を見逃してしまっては勿体ないだろう?」


 この場合、もしかしなくても『お姫様』が指すのはレティシアの事だろう。

 ルキウスの話に一同の思考が停止した。


「あぁ、安心して。エチケットにはちゃんと配慮した作りになってるから」


 うんうんと頷くルキウスの表情は達成感に満ち溢れていた。


「大事な事だよね」


 最低限の配慮はされていたことに安堵するべきか、そんなことは当たり前だろうと突っ込むべきか。


(どう反応すればいいのよこれ!!!!!)


 レティシアは心の中で叫んだ。

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