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50話 校長先生からの呼び出し


 昼休み、普段であれば星良の手作り弁当に舌鼓を打つところだが、この日、俺たちが向かった場所は応接室だった。4限目の授業が終わると同時、杉原先生から応接室へと呼び出されていた。


 ただ気になった点は、俺たちが呼び出されるより早く、双葉が慌て気味でクラスを出て行っていた。

 

 この期に及んで何かするのではないかと、彼女の行動に疑念は抱きつつも、俺たちは呼び出しに応じて応接室へとやって来た。


 「「失礼します」」


 俺たちが部屋に入ると、待ってくれていたのは呼び出した杉原先生だけでなく、校長先生の姿もあった。


 「悪いな二人とも。昼食もまだだろうに」


 「いえ、どうか気にしないでください」


 申し訳なさそうに言ってくれる先生にそう返す。

 ここに呼び出された理由は言うまでもなく、今朝の俺の相談事だ。むしろこちらこそ、自分たちの為に時間を割いてくれた先生たちに感謝だ。


 俺たちが空いている椅子に座ると、最初に口を開いたのは校長先生だった。


 「さて、お二人に来てもらった理由はもう察しがついていると思います。三日月双葉さん、並びに2年のサッカー部員の暴力行為についてです。詳しい事情は既に杉原先生から伺っています」


 今朝の一限目は杉原先生が言った通り、俺たちのクラスをはじめ、複数のクラスが自習だった。その空いた時間、先生方は俺の問題について話し合いの場を開いてくれていたそうだ。

 その話を聞き、胸がとても温かくなった。自分には味方となってくれる人がこんなにもいる幸福を噛みしめ、俺の顔からはすっかり緊張が解けていた。


 「2年生の中島君をはじめ、昨日の昼間に君に暴行を働いた生徒についてですが、彼等は今朝の1限目に個々に呼び出し、詳細な話を聞かせてもらいました。事情を聴いたそれぞれに担任曰く、君に行った暴行容疑について全て認めているようです」


 同じクラスの双葉は自習の際に呼び出しを受けてはいなかったが、どうやら2年の先輩達は朝の内から個別に事情聴取をされていたらしい。

 星良が手に入れてくれたボイレコの音声もあるので、言い逃れできないと思い彼等は素直に非を認めたそうだ。まぁ、星良から聞いた話ではあの南条さんって若頭から脅されたらしいし、証拠がなくとも認めていた気もするが……。


 「サッカー部の面々は全員が三日月双葉さんからの指示である事も認めました。彼女に言われ、君に嫌がらせ行為を働いたと」

 

 「そう…ですか……」


 もう答えは分かりきっているが、こうして教師が口に出してしまうと重みが違った。

 幼稚園の頃から一緒だった幼馴染からのいじめ行為の教唆、しかも本来無関係の人間を巻き込んで、ここまで事態を大事にしてしまった。


 自分と多くの思い出を作って来た相手がドンドンと堕ちていく。

 その事実はやはり胸が重く、自然と俺は自分の手を強く握り爪が食い込む。


 そんな俺の手を、隣に座る星良が何も言わずそっと握ってくれた。

 彼女のさりげないその気遣いが、俺の心を軽くしてくれる。


 「ありがとう。でも大丈夫、ちゃんと現実は受け止める」


 俺がそう言うと安心したのか、彼女は小さく頷いてくれた。


 校長先生がひとしきり話し終えると、入れ替わるように杉原先生が口を開く。


 「さて、三日月については今日の放課後に呼び出す予定だ。手間をかけるが当事者である二人にも話し合いには参加してもらう事になるが……」


 「それはもちろんです」


 「私も当然構いません」


 「それとな、校長先生とも既に話し合った事なんだが、この問題は学校内の生徒と教師だけで終わらせる訳にはいかない。つまり、被害者である大道と、加害者である三日月の親御さんにも報告する必要がある。無論、お前にリンチを働こうとしたサッカー部のご両親もな」


 学校側の出したこの結論は、本当に後味の悪い気分を俺に与えた。


 双葉のご両親はとても優しく、まるで息子の様に接してくれた。

 あの優しいご両親に双葉の真実を告げる、愛娘の隠された本性を教えて絶望を間違いなく与えるだろう。

 そしてこのことは俺の家族にも言える事だった。特に母さんは双葉を実の娘の様に可愛がっていたのだ。そんな娘が裏で息子を苦しめていたとしたら、一体どんな顔をするのだろうか?


 だが俺はここでもう躊躇ったりはしない。

 何よりこの件で苦しんでいるのは俺だけではない。隣に居る星良も俺が理由で苦しむ羽目になる。それだけは許しておけなかった。


 ここで変な甘さを見せても誰のためにもならないのだ。

 俺の為にも、双葉の為にも、そしてそれぞれの家族の為にもここで終止符を打たなければいけない。


 今の歪んだ双葉を止めるために、俺はこの手で彼女の悪行に引導を渡す覚悟を固めた。


 そしてこの日の放課後、遂に決着の時が訪れる事となった。




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― 新着の感想 ―
既に実行犯達は聴取を受けていたか こうなると昼休みの双葉サイドの話も気になってしまう
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